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迷宮六人の勇者 -Cherry blossoms six hits-  作者: 夜乃 凛
第二章 黒色の怪鳥
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黒色の怪鳥と鉄壁の盾

 重苦しい沈黙。

アーサーだけが、平然とした表情で動いている。


 皆、アーサーになんと声をかけたら良いのかわからない。


「二層の守護者までは、普通に行くぞ。気を引き締め直してな」


 アーサーは淡々と告げた。



「なんて言ったらいいのか、わからないよ」


 キョウコが沈黙を破り、口を開いた。


「なにも言わなくていいんだ。ただ、迷宮は危険なところだと再認識してくれれば」


 アーサーがキョウコに答えた。


「言いたいこと、考えたいことはたくさんあるけど、今は目の前の守護者に集中するわ」


 ティナが言った。しかし、その声はやはりアーサーを心配してか、動揺していた。


「すまないな、このタイミングで動揺させるのは、マズかったかもしれない」


 アーサーが詫びる。


「守護者を倒して、ゆっくり後で考えましょう。アーサーの事も、迷宮の事も」


 クラインも冷静だった。心の中では悲しんでいたが。


「正直、浮かれていたところはあるよ。気を引き締め直すという意味では、

話してくれて助かったよ……アーサー、帰ったら、必ず話をするからね」


 キョウコも冷静さを取り戻しつつあるようだ。


「わかった。戻ったら話をしよう」


 アーサーは守護者の話を始める。


「二層の守護者は怪鳥だ。空も飛べるし、陸で動くことも出来る。ただし、耐久力はそんなに高くない。

攻撃を喰らわないように努めて、確実に攻撃を与えていけば倒せる。

最も、十年前と同じ状況なら、だが」


「私の盾で攻撃は防げますか?」


 クレアが質問した。大事な所だ。


「余裕だろう。怪鳥の攻撃は短絡的だし、クレアを頼ることになる。

クレアを軸にして、隙を見て攻撃を仕掛ける。まあ、いつもと同じだな」


 アーサーの受け答え。


「空中に飛んだら、雷撃の魔法で叩き落とせばいいのですか?」


 クラインは腕を組み、戦闘のシミュレーションをしているようだった。


「そうだな。出来るなら、頼む。落下してきたら、守護者は隙だらけだろう」


「だいたいわかったよ。そういう作戦ね、了解」


 キョウコが言った。そして続ける。


「アーサー、無理してない?辛かったら、辛いって言っていいんだよ」


 キョウコは本当に心配そうな顔をしている。


「大丈夫だ。どうした、お前らしくないぞ」


 アーサーは笑った。


「だって」


 泣きそうな顔になるが、涙をキョウコはこらえた。


「ごめん、なんでもない。そろそろ、行く?」


 キョウコは準備が出来たようだ。

他の皆も、準備はとっくに出来ていたようだ。


 唯一出来ていなかったのは、心の準備だけだった。

しかし皆、時間を置き、ある程度冷静さを取り戻しつつあった。


「ああ、行こう。大丈夫、勝てる相手だ」


 アーサーが歩き出した。


 クレアが先頭ではないのも珍しかった。

皆、アーサーについていく。


二層の守護者の元へ、部屋を出て歩み出した。



 アーサーを先頭に、通路を歩いていく。

通路は二層の特徴なのか青く、吸い込まれそうな壁達だ。


 少し、緊張した空気が漂っている。

曲がり角を、奇襲に注意しつつ慎重に曲がると、曲がった先の通路の向こう側に、

円形の部屋が見えた。


「あそこの部屋だ。いるな、守護者」


 アーサーが険しい顔つきで言った。守護者を目で捉えている。


 黒色の怪鳥が部屋に居座っている。

パーティーの方を向いており、それを察してクレアがすぐに前に出た。


「おそらくこちら側、通路の方には向かってこない」


 アーサーが隣のクレアに言った。


「空を飛べる部屋の方が有利と、わかっているということかしら」


 ティナが予想した。


「なるほど。しかし、もしかしたら、守護者は部屋から出られないのはでないでしょうか。

仮説ですが、まあ、判断材料が少なすぎますね」


 クラインがクレアの後ろから発言した。


「さっき作戦を立てたが、もう一つ付け加えておくことがある」


 アーサーがクレアを見た。


「クレアはクラインの死守を第一に考えてくれ。クラインが動けなければ、大分厳しい。


「わかりました」


 クレアが強く頷いた。


「じゃあ、行くか。準備はいいか、みんな」


「オッケー」


 キョウコ。


「いけるわ」


 ティナ。


「問題ありません」


 クライン。


「いつでも」


 マルシェ。


「いけます」


 クレア。


「よし、行こう。クレア、先陣を頼む」


 アーサーが合図を出した。


 クレアが合図と同時に、前に出る。

部屋の少し前まで歩き、足に力を入れる。


「行きます!」


 クレアが部屋に飛び込んだ。

怪鳥がすかさず反応して、首を伸ばし、クチバシで突いてくる。

意外と動きが速い。

 しかし、クレアの盾が突きを阻む。

 キョウコがすかさず、後ろから飛び出そうとする構え。

が、瞬間的にティナがキョウコの腕をつかんだ。


「え?」


 引っ張られたキョウコは動揺した。


「意外と動きが速い。射程も長い。キョウコの射程で飛び出すのは危険」


 ティナは槍の構えを取りながら、キョウコを制した。


「いい判断だ」


 アーサーが投げナイフを後ろから投げる。

的確な精度で、命中させている。


 怪鳥はクチバシで何度も突いてくるが、クレアは完璧にガードしている。


 そろそろ飛ぶ、と判断したクラインは雷撃を発するために集中した。

 予想通り、怪鳥が後ろにやや下がり、空に飛びあがった。


 しかし、予想を二つ、越えていたことがある。高度が高いこと。スピードが速いこと。

怪鳥はそのまま、パーティーが密集している所に、急降下してきた。


 クラインは焦った。魔法が間に合わない。

 全員は避けきれない。そう判断したクレアは、パーティーを守れるように位置取った。


「防ぎます!」


 クレアが鉄壁の盾を構える。

怪鳥の急降下からの蹴りを、盾で受けた。


 パーティーへのダメージは防いだ。

しかし、凄まじい衝撃がクレアを襲った。

クレアが吹き飛ばされ、地面に体を打ちつけた。


「クレア!」


 マルシェがすかさず回復に向かう。

 キョウコとティナ、そしてアーサーが、急降下の反動の隙を狙って、攻撃を仕掛ける。

 怪鳥はそれに対して、大きく翼を動かし、風を作った。

 キョウコとティナは、風に勢いを殺された。

アーサーは姿勢を低くして、風の影響を低下させていた。


 パーティーの攻撃は、アーサーの短剣が一撃入ったのみ。

 再び怪鳥が後ずさり、空へと飛翔する。

 クレアは倒れたまま。

もう攻撃を受けられる役はいない。


 しかし、今度は状況が違う。

クラインが中級の雷撃魔法を、怪鳥に向けて放った。

電撃が怪鳥に直撃し、怪鳥は痺れで高い所から落下してきた。

大きな音を立てて、横向きに怪鳥が倒れ込んだ。


 キョウコが迷わず切り込み、怪鳥の首を切断した。

そして、怪鳥はぴくりとも動かなくなった。

 ティナが念のため、何度が怪鳥を突いた。


「大丈夫だ、倒した」


 アーサーは怪鳥を見ながら言う。

 怪鳥を撃破したことが確認でき、皆がクレアの元に急いで集まった。


「マルシェ、クレアは無事なの!?」


 ティナが凄い勢いでマルシェに尋ねた。


「大丈夫、生きてるよ。気絶してるけど」


 マルシェが治癒の魔法を必死に使っている。


「すみません。一回目で落とせていれば……」


 クラインが悔やんでいる。


「お前のせいじゃない」


 アーサーは責めない。

 マルシェの治癒を、皆で見守った。

 そして、マルシェが、ふうと息をついた。


「これで大丈夫だよ。まだ気絶してるけど、起きたら体も自由に動くと思う」


「よかった」


 ティナは胸を押さえながら安堵した。


「マルシェ、ありがとう!」



 キョウコがマルシェに礼を言った。


「こんな時くらい、みんなの役に立ちたいよ。クレアに死なれるなんて、絶体に嫌だ」

 マルシェは治癒の疲労を見せつつも、真剣な言葉で語った。


 アーサーがクレアに近寄り、鎧を脱がせ始めた。


「な、な、なにしてんのアンタ!」


 キョウコが慌てて止める。


「撤退だ。こんな重装備じゃ、担いでやれないだろう。休ませてやらないと」


「ああ、そういうことね。そうだね、あんな衝撃じゃ、ショックも大きいよね」


 キョウコが撤退に同意した。

 皆も同意見のようだ。


  こうして、二層の守護者を撃破したパーティーは、来た道を引き返し始めた。

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