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迷宮六人の勇者 -Cherry blossoms six hits-  作者: 夜乃 凛
第五章 魔王城
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希望の涙

 五人とも、急いで長老の家にやってきた。

全速力で家に入る。

長老は、椅子に座っていた。


「おお、お前たちか。迷宮の方はどうだ?」


 長老は呑気に尋ねている。


「魔王は倒した。しかし、それよりも、キョウコの師匠の家の場所を教えてくれ」


 アーサーは急いでいる。おしゃべりをしている場合ではない。


「なに?魔王を倒した?それは、素晴らしいことではないか」


「だから、そんなことはどうでもいいからキョウコの師匠の家を教えてくれ」


 アーサーが苛立っている。

 ただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、長老が立ち上がり、近くの引き出しから地図を出した。


 地図に丸印をつける長老。


「ここだ。事情は後でちゃんと聞かせてもらうぞ」



 長老がアーサーに地図を手渡す。


「後でちゃんと話す」


 アーサーが地図を見ながら、家を飛び出していった。

皆も、後を追っている。




 キョウコの師匠の家まで、みんなでやってきた。

大きな門を叩く。しばらくすると、おばあさんが出てきた。


「何か御用で?」


 おばあさんは、突然の来客に驚いているようだ。


「キョウコの仲間です。キョウコの師匠に用事があって来ました」


 アーサーが説明した。


「キョウコの師匠は、今は家におりますが、病気故、あまり長時間のお話は」


 おばあさんは困惑している。


「短時間で構いません。話をさせてください」


「わかりました。案内しましょう」


 おばあさんは家の中に入っていった。皆を手招きする。

 木の廊下を歩いていく。

 やがて、師匠の部屋の前までたどり着いた。

 おばあさんが、ドアをノックした。


「キョウコのお仲間さんが、五人お見えになっています」


 説明するおばあさん。


 中にいた師匠は、なんとなく、悟ってしまった。

仲間が五人まとめてやってきた。キョウコは使ったのだ。奥義を。



「中に入るように」


 部屋の中から声。師匠のものだ。

 おばあさんが、ドアを開けた。

 アーサーを先頭に、皆が中に入る。


「失礼します。俺たちはキョウコの仲間です。お伺いしたい事があって来ました」


 アーサーが軽く頭を下げた。他の皆も。


「あの子は奥義を使ったのか?」


 師匠が先回りして言った。


「魔王に対して、凄まじい連続攻撃をしました。そして、目覚めません。

奥義とは、なんなのですか」


 アーサーにはまだ、奥義の秘密がわからない。


「練気のことは知っているのか?」


「はい、知っています」


「奥義とは、練気を上半身に流し込み、連続攻撃を切り出す秘伝の技。

そして、上半身に流れ込んだ練気は、脳へダメージを与える。使えば、即死するか、

二度と目覚めないかのどちらかだ。キョウコは、生きてはいるのだな……」


 師匠が悲しい顔つきで語った。

 皆が驚いている。そんな危険な技をキョウコが使ったこと。そして。


「二度と目覚めない?」


 アーサーは動揺している。


「なにか、目を覚まさせる方法はないのですか?」


 クラインも驚いている。


「残念だが、回復魔法の類でも、無理だ」


「なんで、話してくれなかったんだ……」


 マルシェは泣きそうである。


「生きて帰るって約束したのに!握手だってした!」


 マルシェが耐えきれず泣き出してしまった。

 アーサーは絶望した。

『私が死んじゃったら、悲しい?』

 あれは、不安などではなかったのだ。あの時から、奥義を使う気でいたのだ。

 アーサーは自分を責めた。気づいてやれなかった。そんな覚悟だったことに。

 皆、黙り込んでしまう。

 師匠も悲しげな顔で、皆を見つめている。

 そして、視線がティナの所で、ふと止まった。


「お前」


 師匠が身を乗り出した。


「その小瓶は何だ」


「これは、ティアルの涙です」


 ティナが答える。

 皆がハッとした。ティアルの涙。


「なんでそんな物をお前たちが持って、いや、そんなことはどうでもいい。

それをキョウコに飲ませてやりなさい。挨拶はいい、行け!手遅れになる前に!」


 師匠の言葉。

 五人は、言われた通り挨拶もせず、部屋を飛び出した。

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