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迷宮六人の勇者 -Cherry blossoms six hits-  作者: 夜乃 凛
第五章 魔王城
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勝利と避けられぬ代償

 魔王を、倒した。

クラインが抗魔結界の陣を解く。

 マルシェがすぐに、クレアの回復に向かう。

 ティナとアーサーは、キョウコに駆け寄った。


「キョウコ、凄いじゃない!なんなの、あの技」


 ティナは疲労しつつも、喜んでいる。

 しかし、キョウコから反応がない。

 キョウコは床に倒れ込んでいる。

 様子がおかしい。

 アーサーはキョウコに触れた。


「意識がない。おかしい、外傷はないぞ」


「さっきの、あの連続攻撃、普通の動きではなかった。

あれが、何か、関係しているのかもしれません。

魔王の最後の呪い、とかでなければ良いのですが」


 クラインも近づいてきて、考えている。

 キョウコは、何とか息をしているようだ。しかし、目覚めない。

 マルシェはクレアの回復にあたった。クレアは無事だ。


「クレア、僕たち勝ったんだよ」


「皆なら、必ず勝ってくれると信じていました」


 クレアは笑顔だ。

 アーサーがマルシェを呼ぶ声。何事かと思い、マルシェがアーサーの元へ向かう。


「マルシェ、キョウコが目覚めない。理由はわからないが……」


 マルシェはキョウコの様子を観察した。


「生命力も感じるし、呼吸もしてるよ。外傷はないし、多分大丈夫じゃないかな。

最後の連続攻撃で、何か、エネルギーを使ったのかもしれない」


 マルシェは考えている。仲間の危機だ。


「そうか……。戻って、ベッドで休ませてやろう。俺たちは、勝ったんだな」


 アーサーはキョウコを担いだ。キョウコの意識はない。

 皆で、撤退の準備を始める。

 来た道を引き返し始めた。

皆の間には、安堵と、乗り越えた、という気持ちが漂っていた。

これで、平和が戻ってくる。

しかし、一応魔物の消滅を確認したい気持ちもあった。


 帰り道には、魔物一匹見当たらなかった。

キョウコは、目覚めないままだ。アーサーはそれが不安で、どんどん不安は大きくなっていった。



 やがて、集落へとたどり着いた。


「長老に報告しにいかなければならないけど、まずはキョウコね。家で休ませましょう」


 ティナの提案に、皆、勿論賛成した。

 キョウコの家に向かう。すぐにたどり着いた。

 アーサーが家のドアを開け、ベッドにキョウコを横にならせた。まだ、目覚めない。

 皆、家の中に入っており、クラインが机の上に手紙が置いてあるのに気が付いた。

『みんなへ』と書かれている。

 クラインがそれを手に取り、さっと目を通した。

 驚いた顔で、黙り込んでしまうクライン。アーサーがそれに気が付いた。


「クライン、どうした?何を持ってる?」


「みなさん、これを……。キョウコの手紙です」


 クラインは、動揺していた。

 手紙の内容。



 みんなへ

この手紙が読まれているということは、私は死んでしまったか、

奥義を使ってしまったということだと思います。

私らしくないけど、もしものために手紙を書いておきます。

みんなと旅が出来て本当によかった。

とても、大事な日々でした。

みんなにお願いがあります。

私は、みんなに、心の傷を負わせてしまうかもしれません。

でも、悲しまないでください。最後のお願いです。

私は自分の意志で戦いました。

みんなが無事なら、それ以上に嬉しいことはありません。

奥義の事を、皆に話しても良かった。

でも、話したらみんなは必ず、使うなと言ってきたことでしょう。

だから、言わなかった。黙っていて、ごめんなさい。

勝手な私を許してください。



「奥義……?奥義って……?」


 マルシェは動揺していた。


「どういうことなんだ」


 アーサーはキョウコを見つめている。


「この、奥義について詳しく知らなくては……。キョウコはまだ生きてる。

キョウコは、師匠がいると言っていたわ。その人なら、何か知ってるかもしれない」


 ティナは焦りながら、精一杯頭を回転させている。


「その師匠の家を知っているか?」


 アーサーの問いに、誰も首を縦に振らない。


「長老の家に行こう。長老なら知っているはずだ」


 アーサーは一番に駆けだした。

皆もそれを追いかけて、キョウコの家を飛び出した。

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