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迷宮六人の勇者 -Cherry blossoms six hits-  作者: 夜乃 凛
第五章 魔王城
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Cherry blossoms six hits

 今いる部屋から、魔王の部屋へと歩き出す。

通路を進み、曲がり角を曲がる。

魔王が先の部屋に、前と同じように、いた。

既に刀を抜いて立っている。パーティーが来るのをわかっていたかのように。


 威圧感。それでも前にみんな進んでいく。あと少しで、部屋の入り口。

先頭はティナ。一番後ろがキョウコ。

キョウコは、入り口の反対側に位置取ることになっていた。挟み撃ちにするためだ。


「仕掛けるわ。みんな、いい?」


 ティナが槍を取った。ティナに怯えは見えない。

 皆が頷いた。準備万全だ。

 皆が頷いたのを確認し、ティナが部屋へと踏み出す。


 魔王に接近。

 クラインはもうロッドで線を描きながら、左側へ走り出していた。

 クレアはクラインと並走するように動き、マルシェがクラインの後ろを走っている。

 キョウコとアーサーは、まだ入り口付近で待機している。

 魔王も接近してきた。目標はティナ。

 ティナは槍で、距離を詰められないように立ち回る。

倒そうとする必要はない。とにかく、距離を詰められたら終わりだ。時間を稼ぐのだ。

 しかし、魔王が部屋を走る三人の姿に気づいてしまった。

 魔王は目標を変えた。魔王の直感だった。ティナを無視して、三人に向けて走り出した。


「私を無視するとは」


 ティナが短い槍を手に取った。


「いい度胸ね!」


 槍を投げる。ティナを無視しようとした魔王を貫いた。

 魔王が少しふらついた。回復魔法を即座に自分にかける魔王。

 敵意を向けた目をティナに向ける。ティナを危険と判断したのか、再びティナに向かってきた。


「そうだ、来い!」


 ティナは長槍を構える。

 クラインは円を描き続けている。あと、四分の三。

 キョウコが隙を突いて、右側から、部屋の反対側へと移動を試みた。

 魔王はキョウコに向かってこなかった。

危険とは判断されなかったようだ。

 魔王は刀で攻めを試みつつも、魔弾の構えを見せた。

今度は絶対に避けなければならない。ティナが集中。

しかし、魔弾はティナ目がけては撃ってこなかった。

部屋を走る三人めがけて発射したのだ。

クレアがクラインを守る。防いだが、盾が一撃で壊れた。

 ティナは少し焦った。魔王は両方まとめて処理するつもりだ。

息を整えるティナ。クレアなら、防いでくれるはずだ。

ティナのクレアへの厚い信頼があった。


 キョウコが部屋の反対側まで、あと少し。

クラインももうすぐ、部屋の反対側までたどり着く。

ティナはよく持ちこたえている。魔弾を使う分、魔王は刀を片手でしか持てない。

そして、ティナに対して魔弾を撃ってこない。そのことが、ティナの負担を軽減させていた。

 部屋の反対側から、クラインが走り続ける。あと半分。

魔王の後ろ側であるが、魔王は一瞬後ろを振り返り、クラインに魔弾を放つ。

クレアが再び盾で防ぐ。二枚目の盾。盾は、これで最後。

二枚目の盾も、今の攻撃で割れてしまった。

もう防ぐ盾はない。しかし、クレアは自分がやるべきことをわかっていた。

陣の完成まで、あと半分を切っている。

クレアは自分の身を盾にして、魔弾を防ぐつもりだった。全ては勝利のため。

クラインを守るのだ。中央はティナが持ちこたえてくれる。


 キョウコは部屋の反対側に陣取った。入り口付近にいるアーサーと、目で合図。

もうすぐ、陣が四分の三。あと少しで、完成する。

魔王はティナの槍の鋭さに苛立ちつつも、魔弾をクライン達に放ってきた。

クレアが直接体で受け止めた。衝動で吹き飛ばされるクレア。

 マルシェとクラインの二人だけが走り続けている。

マルシェは、すぐにでもクレアを回復しにいってやりたかった。

しかし、今やるべきことは決まっている、とマルシェは思った。

陣の完成まであと少し。

やるべきことは、次に魔弾が飛んで来たら、クラインを庇って吹き飛ばされることだ。

クレアの事を本当に想うなら、クレアの覚悟の守りを無駄にしてはいけない。

 部屋の入り口まで、クラインがあと少しで届く。完成する。

アーサーとキョウコは集中していた。陣が完成した瞬間飛び込む。

魔王が魔弾の構えを再び取った。

必ずクラインを守って見せると、マルシェが覚悟。

魔弾が飛んでくる。その、一瞬手前で、陣が完成した。


 抗魔結界の陣。魔弾が飛んできたが、魔弾は空中で消滅した。

結界が魔法を無力化したのだ。ティナが勝った。持ちこたえた。

キョウコがすかさず練気の構えに移る。

アーサーはティナと連携して、攻撃に移った。

ティナの槍と魔王の刀。その攻防の一瞬を狙っていた。

魔王は再び魔弾を放とうとするが、何も起こらない。

それに対する反応は速かった。魔法を諦め、刀を両手持ちに切り替えた。

ティナは少し引いた。両手の刀の力がいかほどか。

ティナがちらりとキョウコを見ると、魔王の後方で練気をしている。

一発で仕留めてくれるはずだ。

ここは、攻める姿勢ではなく、守る姿勢。今までのペースを崩さずに対応すべきだ。

 しかし、両手持ちの威力は、予想以上に大きかった。

槍の一瞬の隙を狙われ、槍の先端が切られてしまった。

予備の槍は、もう投げてしまっている。ティナが完全に無防備だ。


「ティナ、下がれ!」


 アーサーが魔王に高速で接近し、短剣を一発刺した。さらにすかさず蹴りを放つ。

 しかし魔王が倒れない。

刀を魔王が振る。アーサーが短剣で防ごうとするが、短剣が弾き飛ばされた。

 ティナとアーサーが無防備だ。

そして、後ろで、キョウコの練気が終わった。キョウコの気持ちは決まっていた。

練気で素早く飛び出した。

魔王は、後ろのキョウコに気配で反応した。刀を盾代わりに構える魔王。

どちらが勝つか。


 キョウコの踏み込み。

そして、上半身に練気を流す。

 初撃。上から一閃。

魔王はそれを刀で受けた。

刀同士が触れ合う。

物凄い力。魔王は受けるのが精一杯だった。

しかし、初撃を魔王は受けきった。

 だが、キョウコの攻撃は終わっていない。

一回転して、右からの薙ぎ。

初撃を弾かれた勢いで、威力は初撃よりさらに増している。

加えて、スピードが尋常ではない。魔王は刀を盾に出来なかった。

キョウコの二撃目が魔王に直撃。

それでも魔王は倒れない。

 左足で強く踏み込み、キョウコが斜めに回転。右斜め上から、切りつける。

魔王は刀で受けた。また刀の触れ合い。

 しかし、キョウコの気迫が、練気が、魔王の刀を折った。

もう魔王に防御する術はない。

 四撃目。左から強烈な薙ぎ。

致命傷を魔王は受けた。しかし、キョウコの攻撃はまだ二回残っていた。

 五撃目でキョウコは、魔王を刀で突き刺した。

 そして、最後の一撃。飛びあがり、突き刺した刀を真上に振りぬいた。

魔王は喋ることも出来ず、その場で、ステラのように灰になっていった。


 キョウコもその場に倒れ込んだ。

みんなと旅したこと、忘れない。

キョウコの意識が途絶えた。

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