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迷宮六人の勇者 -Cherry blossoms six hits-  作者: 夜乃 凛
第五章 魔王城
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Last

 翌日が来た。

 早朝、パーティーが広場前に集まった。


 皆、挨拶をする。不思議な感覚だった。

 キョウコはアーサーの手をちらりと見た。

 アーサーは指輪を付けていた。あんな、安物の指輪でも、つけてくれている。キョウコは嬉しかった。


「もう後戻りできませんね。これで、最後なのですね」


 クレアは神妙だった。最後。


「転移石、無くなっちゃったからね。本当に、これで最後だ」


 マルシェも続く。彼は戦いの中で成長してきた。


「魔王が何か、切り札を持っているかもしれないが、持てる力を出し切って戦おう。

さあ、行こう。歩きながら話そう」


 アーサーが合図した。ずっとリーダーを務めてきたアーサー。


「意味のないような武術の稽古が、まさか役に立つ日が来るとは思ってなかったわ」


 ティナは歩きながら話した。


「クレアがよく私の特訓を手伝ってくれた。クレアの守りの捌きが上手くて、

悔しくて、一人で特訓したこともあったわ」


「私は、ティナが羨ましかったえす。槍、練習なので棒でしたが、振るう姿が、恰好良かった」


 クレアも昔を思い出しながら語った。


「二人とも特訓をしてたんだね。ウチも、武術が得意な家柄だったから、よく特訓したよ」


 キョウコも話に参加した。彼女も相当な訓練を積んでいる。


「クラインはなんか、自然に強くなったような感じだよね」

 

マルシェは笑っている。


「魔術書をゆっくりと一人で読む。至高の時間です」


 クラインは笑顔だ。


「彼女とか作ったらいいのに。うわ、でも、クラインの彼女って、大変そう」


 キョウコが苦笑。苦労するだろう。


「クラインは意外とユーモアがあるわよ。この前、寝てるクラインの様子を見に行ったら、

起こすな危険とか書いた紙が貼ってあったわ」


 ティナが思い出し笑いをしている。


「面白かったから、ほっぺたをつついてやった。やわらかかった。九十点」


 ティナが謎の点数をつけた。


「人が寝ている間に何をしているのです」


 クラインはやれやれ、と言った様子で苦笑した。

 皆が笑った。

 これで最後なのに、いつも通りの明るい会話だ。

 これで最後だからかもしれない。

 もう、旅が終わる。

 旅の終わりに何が待っているのか。それは、まだわからなかった。

 過去の戦いを思い出しながら、迷宮を進む。

 猪、怪鳥、ステラ、獣。

 すべて倒してきた。だから、今度もきっと倒せる。

 自分に言い聞かせるように、皆、信じている。


 そして、五層にたどり着いた。


「やっぱり、べたべたするね、この床」


 キョウコが足をトントンとして絨毯を踏んでいる。

 それを見たクラインが、ロッドで円を描き始めた。小さい円がすぐに出来上がった。


「キョウコ、この中で、練気を試してみてください」


「わかった」


 キョウコが円の中に入った。集中して、練気を試みる。


 出来た。この円の中でなら、出来る。


「この円の中なら、練気、出来るよ」


 キョウコは自信ありげに言った。奥義が使えるのだ。


「魔王の魔力の影響で、練気が阻害されていたということでyそうか。何にせよ、

抗魔結界の中でなら、練気が使えるのは大きい」


 クラインが考えながら発言。


「ああ。一発勝負だが、頼ることになるかもしれないな」


 アーサーも同意見だった。


 そして、歩いた。

不気味な絵の飾ってある、木製の部屋まで。

嫌な気配は歩くたび、近づいてくる。やはりいるのだ。魔王が。


「ここまで来たな。最後の戦いだ。俺は、言いたいことは皆にたくさんあるが、

それは帰ってから言うことにした。何故なら、全員生きて帰るからだ」


 アーサーは覚悟を決めた表情をしている。指輪に少し触った。


「私も同じ。皆、生きて帰るんだもの。今話さなくても、帰ってから話せるわ」


 ティナが微笑。

 他の皆も同じのようだ。

 キョウコだけが、一人、心境が違った。

 悟られまいと、語らない。

 最後の戦いが始まる。

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