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迷宮六人の勇者 -Cherry blossoms six hits-  作者: 夜乃 凛
第四章 バックアタック
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『勝つ必要』

 レインの姿は見えなくなった。


「ねえ、ティアルの涙はわかるけど、転移石って何?」


 キョウコが説明を求めた。初めて聞く名前だった。

レインの話のせいか、神妙な面持ちだった。


「石に色がついているでしょう?赤い石を持った人間が念じれば、石を持った人間が、

瞬時に大聖堂まで戻ってこれる魔法の品、と言っていたわ」


 ティナが説明しながら、六つのペンダントを見せた。

一つには赤い石。残りの五つには、青い石がついていた。


「アイテムを利用したテレポートですか。それは、とても貴重ですね……。

よく、僕たちに授けてくれましたね。今度、お礼を言わねばなりません」


 クラインは興味深そうだ。


「無駄にはしない」


 ティナが言い切った。


「赤い石を持ってる人以外が念じても、意味が無いんだよね?」


 マルシェが重要な部分を尋ねた。


「そうでしょうね。この赤い石を誰が持つか……重要ね」


「俺は、マルシェが持つのがいいと思う」


 アーサーはすぐに提案した。


「なんで僕なの?」


「お前なら、仲間が傷を負ったとき、その傷が致命傷なのか、回復できるかどうかを、

判断できるはずだ。そして、後衛。一番安全な位置にいる。四層での頭の回転も、鋭かった」



「賛成です。異論ありません」


 クラインが頷いた。マルシェの力強さは、どんどんと上がっていっている。


「マルシェ、よろしくね。頼りにしてるから」


 キョウコはうんうんと頷いている。


「わかった。ちゃんと状況を判断して使うよ」


 マルシェは期待に添えるべく、強く頷いた。


「マルシェが起動の石を持つのね。わかったわ。では、ティアルの涙は?」


 ティナが赤いペンダントをマルシェに渡し、他の皆には青いペンダントを配っている。

皆、ペンダントを身に着けた。


「前回に引き続き、僕が持ちましょう」


「お願いするわ、クライン」


 ティアルの涙をクラインに渡す。


「これで、かなり状況が変わったな」


 アーサーは考えている。


「魔王といきなり五層で鉢合わせ、なんてことになる前に、作戦会議をしておきたい。

魔王と戦う時に、絶対に心がけないといけない事が出来た」


「それは、何?」


 キョウコが尋ねた。答えがわからない。


「絶対に死なない事、そして、勝とうと思わないことだ」


「……一つ目はわかります。でも、二つ目はよくわかりません。勝とうと思わなければ、

到底勝てる相手ではないのでは?」


 クレアは考えている。


「俺たちは、転移石という貴重な物を貰った。

これさえあれば、生きてさえいれば、一瞬で撤退することが出来るんだ。

多分、この石は一回くらいしか使えないんだろうが、勝とうとして、捨て身の攻撃を仕掛ける必要がなくなった。

慎重に戦って、魔王の戦術、武器、魔法、特性を知ることが出来れば、

撤退して二度目の戦いで、有利に戦える」


 アーサーは持論を展開した。


「なるほど。一回目は、情報収集を主に行う、ということですね」


 納得したクレア。


「ああ。もちろん、勝てるようなら、勝てるに越したことはないけどな。

クレアは起動石を持ったマルシェを守る。俺とティナ、キョウコが接近する役目だ。

クラインは遠距離から、状況に応じて魔法を使ってほしい。

勿論、これは現段階での作戦だ。五層を見て、変える可能性がある。

何か、変なところはあるか?」


 アーサーは皆に尋ねた。持論の確認。


「ないと思う。それでいこうよ」


 キョウコは少し考えていたが、納得している。


「転移石を温存しなければなりませんね。マルシェ、判断は慎重に。

作戦に異論はありません」


 クラインにも異論はなかった。少し、五層という場所が心配だったが。


「タイミングよく使うよ」


 マルシェは頼もしく答えた。

 他の皆にも、異論はなさそうだ。


「よし。じゃあ、出発しよう。皆、死ぬなよ」


 アーサーが出発の合図を出した。

 皆は頷き、歩き出した。

 平和のため、ここまで戦ってきた。

 最後の戦いが始まるのだ。

 負ければ、集落は魔物に襲われる。

 まだ見ぬ魔王、その存在を意識しながら、歩く。

 六人の中で、キョウコだけが、逃れられない死の気配を、無意識に感じていた。

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