とりあえず無罪
六人は道を引き返し、集落に戻っていった。
六人で歩く道は、安心感があった。
みんなで歩く道。
やはり、この六人が一番馴染むのだ。
あっという間に、集落についた。
「さて、帰ってきたね。これからどうするの?」
キョウコは首を傾げている。
「そうだな、次は、五層……魔王がいるんだろう。
今日と明日は、休もう。次で、俺たちの役目も終わりだろう。
明後日の朝、出発する。やり残したことがあったら、やっておいてくれ。
皆、それでいいか?」
アーサーは皆を見た。
「問題ありません。魔力をまた使ったので、寝て休みます」
クラインが賛成。
皆にも、異議は無いようだった。明後日の朝、出発。
「さて、あの長老、どうしてやろうかしら」
ティナは笑顔だったが、指の骨をボキボキと鳴らしている。
「ほどほどにしてやれよ……。助かったのは事実だからな」
アーサーは苦笑している。
「確かに助かったけどさ。でも、あんなにあっさり約束破るかなぁ」
マルシェは溜息をついた。
「私は、感謝しています。あの手紙を読むことが出来て、よかった」
クレアは手紙を思い出し、胸が熱くなった。
「私にも見せてよ、マルシェとティナからの愛のこもった手紙」
キョウコはにやにやしている。
「クレア、絶対見せないでね」
マルシェがガード。
「キョウコ、見たら命は無いわ」
ティナが睨む。怖い。
「お、この反応!ゲットすれば、二人の弱みを握れるな。急げ、クレアの家!」
キョウコが走り出した。
ティナとマルシェがダッシュで追いかける。
クレアは苦笑しながら、それを見送っていた。
「何をしているんだ、あいつらは」
アーサーが呆れている。
「追いかけっこじゃないですかね」
クラインが冷静に言った。まったく興味が無さそうだ。
「元気なもんだ」
「まあ、走れるくらいの余裕があるなら、何よりです。
では、僕は家に戻って寝ます」
クラインは少し頭を下げ、去っていった。
「私は、家に行って、みんなの様子を見てきます」
クレアがアーサーに告げた。
「ああ、またな」
「離せー!暴力だー!」
キョウコがわめいている。
ティナがキョウコを押さえつけているのだ。
「覚悟は出来ているのかしらね?」
ティナは笑顔だ。とても怖い。
「冗談!冗談だって!人の手紙を盗み見たりしないよ!」
キョウコが弁明する。嘘っぽい。
「大丈夫だよ!傷ついたら回復してあげるから!」
マルシェは両手を振っている。
「それって大ダメージ負うってことじゃん!やめてよ!」
キョウコはぶるぶる震えている。ティナが怖い。
「ほ、ほら、大体、ここ、クレアの家に向かう道じゃないでしょ」
キョウコは道を指さした。
確かにそうだ。クレアの家に向かう道ではない。
「師匠に会いに行こうとしたの。キョウコ様はそんなに悪い人間ではないのだ」
キョウコは目的があったのだ。しかし、どこか偉そうである。
「まあ、わかったわ。離してあげる」
ティナがキョウコを解放した。
「本当だからね。ちょっと、師匠の家に行ってくる。二人とも、またね」
解放されたキョウコは、別れの挨拶をして、去っていった。
ティナとマルシェが取り残された。
「マルシェ、手紙に何を書いたの?」
「ティナこそ、何を書いたんだよ」
「教えない」
即答。
「じゃあ、僕も教えない」
対抗。
「どちらかが譲らないと、中身はわからないわね」
ティナは可笑しくて笑った。
「うん、そうだね。じゃあ、そろそろ僕は家に戻るね。ティナもよく休んでね」
「ありがとう。また、明後日」




