猪突猛進の守護者
道を歩いていく六人。
休憩を終えてすっきりしたのか、動きも快調である。
弱い魔物達を、慣れ始めた動きで倒して、先に進んでいく。
アーサーが短剣、ティナが槍、キョウコが刀、クラインが魔法。
回復担当のマルシェはすることが無く、クレアは盾として皆の前に出ている。
石の通路を歩いていると、先頭のクレアが不意に立ち止まった。
「どうした?クレア」
クレアにぶつかりそうになったティナがクレアに問いかけた。
「この先が部屋になっているようですが、なにか、います」
全員が通路に横に並び、道の先を見ると、部屋らしきスペースに、イノシシらしき物体がいる。
大きな牙が口から覗いており、図体は大きい。
今までに出会ったことのない魔物だ。
「少し、大型のようですね。危険かもしれません。こちらには気づいていなそうですが」
クラインは様子を観察している。
「先手必勝?」
キョウコが刀を抜いた。
「クレアが盾になって、ティナとキョウコが左右から攻撃、俺とクラインが遠距離で援護、
マルシェは、もし吹き飛ばされたヤツがいたら、そいつのカバーといったところだな」
アーサーが簡単に作戦を提示した。
「賛成です。魔法での先制は、あのサイズにはしない方がいいでしょうね。
距離のある段階で発見されると厄介そうです」
クラインは準備万全のようだ。
「それでは、行きますよ?」
クレアが盾を構え、やや緊張した声色で言った。
全員が頷く。
その合図を見て、クレアが盾を構えつつ、走って飛び出した。
足音に気づいたイノシシがパーティの方を向く。
イノシシは後ろ脚を力強く踏み込むと、クレア目掛けて突進した。速い。
突撃の初撃を盾で受け止めるクレア。
衝撃でやや後方まで滑った。しかし態勢は崩れていない。
すかさず、ティナとキョウコが後ろから飛び出し、左右から仕掛けた。
キョウコの刀の連撃と、ティナの槍の高速の突き。
アーサーは投げナイフを丁寧に投げて、命中させていった。
クラインは魔法を唱える。
クラインの炎の弾がイノシシに当たり、イノシシは横向きに倒れた。
「倒した?」
後方にいたマルシェが近寄ってきた。
「うん、いけたいけた。意外と楽勝だったね」
キョウコは刀を仕舞った。
「先制されていたら、どうなっていたか、ちょっとわかりませんがね」
クラインは、倒したイノシシの方を見ながら言った。
「クレアは大丈夫?」
ティナがクレアを気遣った。
「ええ、大丈夫です。盾に少しダメージがあるかもしれませんが……」
クレアの返事。
ティナは安心したようだ。
「あの突撃だもんね。いや、クレア凄いわ」
「ありがとうございます。私は、まだまだですけど」
キョウコに褒められて、クレアは照れている。
「謙虚だねー!かわいいかわいい」
クレアをつつきながら喋るキョウコだったが、凄い視線を感じて手を止めた。
「ティナ、どしたの」
「別に何も」
「あ、自分以外がクレアとじゃれ合ってるから嫉妬してるんでしょ」
「別に何も」
ティナはぷい、と視線を逸らしてしまった。
「ティナもかわいいなー、もう、どっち選ぼうか迷っちゃうなー」
キョウコはにやにやしている。
「どっち選ぼうか、ってなんだよ……」
マルシェが呆れ気味に言った。
「盛り上がっているのはいいことですが、あれを見てください」
クラインが口を挟んで、指をさした。
皆がクラインの指す方向を見た。
階段がある。上に昇る階段のようだ。
「一層突破ということかな」
アーサーが淡々と言った。
「意外とあっさりね。じゃあ、さっきのイノシシが守護者?」
ティナが首を傾げた。
長老は、一層につき一体、守護者がいると言っていた。
「そうみたいだね。なんか、いける気がしてきた!いい調子じゃん」
キョウコが嬉しそうにはしゃいでいる。
「油断禁物ですよ、キョウコ」
クレアが注意するが、クレアもどことなく嬉しそうだった。