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迷宮六人の勇者 -Cherry blossoms six hits-  作者: 夜乃 凛
第三章 悪鬼の突剣
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死の廊下

 クレアを先頭に、廊下を進むことにした。

 

 しかし、ある程度進んだところで、クラインが急に切り出した。


「ちょっと待ってもらえませんか」


「どうした?」


 アーサーが、クラインの言葉に、歩みを止めた。


「魔法陣を作らせてもらえませんか?このロッドで、陣を描くのです」


「それ、書くとどうなるの?」


 マルシェが当然の疑問を尋ねた。


「強力な呪文を、詠唱なしで発動させることが出来ます。

この廊下で、挟み撃ちに遭ったら、危険です」


 クラインが冷静に答えた。


「挟み撃ちって」


 キョウコが割って入る。


「ここに来るまで、魔物いなかったよ。挟み撃ちには、遭わないと思うよ。

先の方から、魔物が来る可能性は、あると思うけど」


「そうですね。陣を描く必要は、薄い気がします」


 クレアはキョウコに同意している。


「そうだよ。それより、早く先に進んだ方が、いい気がする」


 マルシェも正直である。廊下が不気味で、長居したくなかったのもある。


「同感だな。クライン、今日はやけに慎重だな」


 アーサーも、先に進んだ方がいいと思っているようだ。


「そう、ですね」


 クラインは皆の意見を聞き、陣を描くのを諦めようとした。

 ティナは考えた。ここは助けておくべきだと。鋭い声で発言する。


「待って。クラインも、急に閉じ込められて、焦っているのよ。

陣を描くことで、クラインの不安が解消されるなら、描かせてあげるべきじゃないかしら?」


「……そうだな。悪い。陣が完成するまで待つか」


 アーサーは決定した。クラインの心情を測ってのことだった。


「ありがとうございます」


 クラインは、安堵した。ティナに話しておいてよかった。


 クラインは陣を描き始める。

それが完成するまでの間、皆、ストレッチなどをして待っていた。


 やがて、陣が書き終わった。


「あと一つ、少し離れた所に描けば、陣の完成です」


 これは、クラインが嘘をついた。

一つ目の陣で、完成している。

二つ目を設置するための、口実。


「あと一つか。離れたところというのは、道の先か?」


 アーサーが動き始める。


「はい。進みましょう」


 皆で少し前進。しばらく歩いた所で、クラインが立ち止まった。

 廊下は依然として長く、不気味。


「このあたりがいいですね。すみません、時間を取らせて。急ぎますから」


 クラインが二つ目の陣を描き始めた。一つ目の陣とは、模様が違うようだ。


「魔法はよくわかんないなぁ」


 キョウコがぼやいている。



「僕も、回復魔法以外はさっぱりだ。クラインは凄いよ」


 マルシェが苦笑する。回復魔法だけでも、十分優秀なのだが。


「回復魔法が唱えられるだけでも、凄いことですよ」


 クレアはマルシェの実力を認めた。



 暫くの間、皆でクラインを待った。そして、陣が描き終わった。


「お待たせしました。ティナの言う通り、不安だったのかもしれません。少し、楽になりました」


 クラインは皆に頭を下げた。


「気持ちはわかるよ。じゃあ、先に行くのかな?」


 マルシェが、リーダーであるアーサーを見た。


「ああ、行こう」


 アーサーが強く頷く。この不気味な廊下を、抜けたいところだ。

 六人で、歩き始める。静まり返った廊下。

丁度、廊下の半分くらいまで、六人は到達した。


 その時だった。通路の奥、曲がり角から、何か飛び出した。廊下の向こう側に、影が見える。

今まで魔物と遭遇しなかったため、六人にピリッとした危機感が走った。

 六人の中で一番目の良い、アーサーだけが、その影の姿を捉えることが出来た。

 人間?長い、黒髪。

 アーサーには間違いなく見覚えがあった。

 マリー?

 アーサーは自分を疑った。マリーのはずがない。

 黒髪の人物。顔に生気は無いが、髪を優雅にさらりとかきあげた。

 アーサーには、その仕草は、見覚えのあるものだった。

 そして、マリーらしき影は、手に何か持っている。弓だ。

 黒髪の人物の右手が、背中の矢へと伸びる。

 アーサーは咄嗟に反応した。


「全員伏せろ!身を低くするんだ!」


 アーサーは指示を出しながら、身を低くした。

 突然の事に、皆、考える余裕は無かった。

 ティナとクラインがアーサーの言う通り、咄嗟に身を伏せた。

 しかし、残りの三人が、反応が遅れる。


「え?え?」


 キョウコが慌てている。


「床に伏せるんだ!指示だ!死ぬぞ!」


 アーサーの言葉はとても強かった。

 その剣幕につられて、クレア、マルシェ、キョウコも身を伏せた。

 次の瞬間、稲妻のような矢が放たれ、六人の頭上を通過した。

 乗り越えなければならない。死の廊下。

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