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迷宮六人の勇者 -Cherry blossoms six hits-  作者: 夜乃 凛
第三章 悪鬼の突剣
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二つの選択肢

 そして、パーティーの休日は終わった。

一日を休みに費やした者もいれば、集落を周った者もいた。


 朝、六人が広場に集合した。

 クレアは鎧を着ており、いつもの格好だ。装備が補填してある。


「クレア、行けるのか?無理そうなら、正直に言え。重要なことだ」


 アーサーは状態を尋ねた。当然だろう。

はい、いけます。昨日一日休んで、体も元通りです」


 クレアは元気に答えた。


「よかったね」


 キョウコがクレアの方を見ながら言った。

ティナも笑顔で頷いている。


「ええ、本当に」


「そういえばさ」


 キョウコがふいに切り出した。


「私、必殺技を覚えたよ。重要なことだから、今言っておくね」


「必殺技?」


 アーサーは怪訝そうな表情を見せた。必殺とは。

「師匠に教えてもらったんだ。えっとね」


 キョウコが練気の説明を、皆にする。

とにかく、凄いスピードなんだよ!と力説。


「なるほど。それは頼もしいですね。使った後、しばらく動けないというのが、少々気がかりですが。

今、披露した方がいいのでは?」


 クラインは思案しながら提案した。


「おっけー!じゃあ、えっと……」


 キョウコが足踏みした。

練気を始める。キョウコの足元が黄色くなっているようだ。


「この、黄色い色、見える?」


「見える!」


 マルシェは驚いている。


「それで、もっと集中して……」


 キョウコは、左足を軸にして、右足を後ろに伸ばした。

 そして駆けた。

 広場の、迷宮の入り口まで高速で移動。

 そのまま刀を振りぬき、空中を揺らした。

 キョウコを除いた五人が、唖然としている。

キョウコはその場にへたり込んでしまった。


「見えた!?」


 キョウコが座ったまま、皆に呼び掛けた。

皆で、キョウコの元へ駆け寄る。


「ああ、見えた。これは確かに、凄いな……」


 アーサーは驚いたままだ。


「でしょー」


「これは、連打が出来ないものの、守護者との戦いで、とても活躍しそうですね」


 クレアは嬉しそうだ。新たな技に喜んでいる。


「キョウコが休む間に、私からも言っておくべきことがあるわ」


 ティナが切り出した。


「大聖堂のレイン大神官から、魔法の道具を頂いたわ。ティアルの涙という液体よ。

一つしかないけど、これを口に含ませれば、どんな傷でも、病でも、たちまち治るらしい」


 ティナは帯から、小瓶を取り出した。


「それは、重要だ。重要すぎる」


 アーサーが大きく反応した。

そうなのだ。この道具はとても強い。

皆も、この道具がいかに大事か、理解したようだ。

「問題は、誰が持つか」


 ティナが話す。


「少なくとも、前衛ではないわよね。攻撃を受けて、破損でもしたら、洒落にならない」


 ティナの意見。


「そうですね。このティアルの涙、おそらくはマルシェに使うことになるでしょう。

マルシェは回復が出来る。マルシェがいれば、ティアルの涙が無くても、仲間は起こせる。

マルシェが動けなくなった時、起こすために使う」


 クラインは頷いている。


「となると、持つのは、リーダーのアーサーでしょうか?」


 クレアも考えながら発言している。


「いや」


 アーサーは異議を唱えた。


「クライン、じゃないだろうか」


「どうしてクラインなの?」


 キョウコは座ったまま、首を傾げている。


「俺は中距離で戦っている。そして、クラインは後衛」


 アーサーの意見。


「クラインは判断力に優れている。冷静なやつだ。

もしかしたら、マルシェ以外にティアルの涙を使わなければならない場合も、あるかもしれない。

そうした時に、一番後ろにいるクラインなら、確実に使うタイミングを見極められるだろう」


「そうだね、アーサーもだけど、クラインは頭が良いよ。絶対に頼れる」


 マルシェはアーサーの意見に同意した。頷いている。

 賛成、と皆の意見がまとまった。


「わかりました。丁重に扱います。ティナ、頂けますか」


 クラインは了承して、ティナの方を向いた。


「クライン、頼んだわよ」


 ティナがクラインにティアルの涙を渡した。

 受け取ったクラインは、身に着けていた青色の首飾りに、ティアルの涙の、小瓶を取り付けた。


「確かに受け取りました。責任をもって、使います」


 クラインは頼もしい声で言った。

 そして、キョウコが反動から解放され、立ち上がっていた。


「キョウコも立ち上がったところで、行くか。三層へ」


 アーサーの合図。


「あくまで様子見だ。決して無理はするなよ」


 皆が頷いた。油断は見られない。

 六人は、三層へと歩き出した。

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