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迷宮六人の勇者 -Cherry blossoms six hits-  作者: 夜乃 凛
第二章 黒色の怪鳥
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迷宮の変化

 三層。

 四刀流の獣。アーサー達の全滅した、昔話。


 皆、少し戸惑っている。


「勝機が無いなら、絶対に行くべきじゃない」


 アーサーは真顔だ。


「勝てると思うか?」


 続ける。


「守護者に勝てるかどうかは、正直、難しい所だと思いますが」


 クラインがゆっくりと話す。



「三層に行ってみる価値はあると思います」


「勝機が薄いのに、行ってみる価値がある?クライン、お前にしてはちぐはぐな発言だな」


 アーサーは真意を測りかねている。


「何か考えがあるのね」

 

ティナがクラインの方を見た。


「はい。二層を通過して思ったことなのですが」


 クラインが自説を話し始めた。


「二層の守護者は怪鳥だった。アーサーの発言と一致します。しかし、

道の途中にあった、人形の部屋がありました。アーサーは言いましたね。昔は、こんな部屋無かったと」


「そうだが」


 アーサーは続きが気になる。


「怪鳥も、勝てる相手だと言いましたね。しかし、実際は苦戦した。

クレアが追い詰められた。怪鳥が、パワーアップしていたのでは?」


 クラインは話し続ける。


「その通りだが、何が言いたいんだ」


 アーサーは痺れを切らした。



「迷宮でも十年の時が経っている、ということです。つまり」


 一呼吸置いた。


「三層の守護者が、四刀流の獣とは限らない。もう、いないかもしれない。

そういう可能性は、ありませんか?」


 クラインの指摘だった。


「そうだよ!まだ、守護者が獣だって決まったわけじゃないじゃん。クライン、冴えてる!」


 キョウコの顔が少し明るくなった。


「もし、守護者が獣だったら、引き返して、考え直せばいい。ということですね」


 クレアも話に加わった。


「ええ。アーサーの昔話を聞いて、可能性の高い、もう一つの事もあります。

守護者は簡単には部屋から出られない、ということです」


 第二の話をクラインが始める。


「アーサーのお姉さんは、確かに時間を稼ぎました。しかし、獣は、追って来ようと思えば、

アーサーを追撃することも出来たはずです。パーティー全員に襲い掛かるほどの凶悪な魔物なのに、

それをしなかった。これに関しては、確実とは言えない仮説ですが。

三層の守護者の部屋の前まで行き、様子を見る。無理そうならば、引き返す。

この方向性では、ダメですか?」


 アーサーは、話を注意深く聞き、考え込んでいる。


「これに関しては、皆も想像がついていることだとは思いますが、

仮に集落で平和に暮らしていても、このままでは、やがて集落に魔物が満ちます。

そうなれば、先に待っているのは死です。何もかも奪われる。

それならば、僕たちは、出来る限りの事をしなければならない」


 クラインが言い切った。


 集落の崩壊。緊張感が辺りを包んだ。


「確かに、三層が昔のままだという確証はない。お前の言う通りだ」


 アーサーは認めた。


「本当に鋭いヤツだな、お前は」


 少し笑いながら、アーサーがクラインを賞賛した。


「ええ、僕、優秀ですし」


 クラインが何事もないかのように言う。


「クラインが言うと、嫌味が無いから凄いよね」


 マルシェが笑いながら言った。


「凄いよね。私が言ったらどうなるかな。私、優秀だから」


 キョウコは胸を張りながら言った。


「あえて、何も言わないでおくよ……」


 マルシェは引いている。


「何よそれ!」


 キョウコがマルシェをぐりぐりする。

 少し、部屋の緊張がほぐれた。


「引き返せるんだから、途中まで行ってみる価値はある。そうかもね。無理をしなければいい」


 ティナはクラインの話を注意深く聞き、同意した。


「うん、そうだよね。可能な限り、出来ることをやらないと」


 マルシェも同意した。

 他の皆も頷いている。


 アーサーは険しい顔をしていたが、溜息をつき、天井を見上げた。


「わかった。三層の様子を見に行こう。ただし、明日は休みだ。クレアがまだ万全じゃない。そしてもう一つ」


 アーサーが大事そうに告げる。

「絶対に無理をしないことだ。引き返すことが目的、というレベルで無理をしないことだ」


 話は決まった。

 一日休んだのち、三層へと向かう。

 皆のいる部屋は、最初の雰囲気より、大分活力がみなぎっていた。


「各自、やるべきことがあったら、明日、ゆっくりやっておいてくれ。明後日の朝、迷宮の入り口に集合だ」


 アーサーが、スケジュールを伝達する。


「じゃ、今日は解散かな?料理、美味しかったよ」


 キョウコが礼を言った。


「美味かったなら嬉しいよ。そうだな、今日は解散にしよう」


 アーサーが皆に告げた。


 料理を作ってくれたアーサーに、皆が礼を言い、解散することになった。

 翌日は休み。

 なんだか、不思議な気分の皆だった。

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