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迷宮六人の勇者 -Cherry blossoms six hits-  作者: 夜乃 凛
第二章 黒色の怪鳥
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目覚める盾

 マルシェが一人で部屋に残っている。

クレアの様子をマルシェが見るが、まだ目覚める様子はない。


 目覚めたら、なんと声をかけてあげたらいいだろう。


 きっと、怪鳥との戦いで起きた事、みんなの無事を知りたがるはずだ。

まずはそれを説明して、とマルシェは考える。


 三層の事も頭をよぎった。

アーサーの過去。きっと、アーサーはずっと辛い思いをしてきたのだろう。

三層の守護者に、自分たちは勝てるだろうかと、マルシェは思った。


 クレアの方を再び見る。

アーサーの話に出てきた獣と戦ったら、また誰かが傷つく。


 未来を見るなら、戦うべきなのはわかっている。

でも、誰かが傷つくことになるのだ。死ぬかもしれない。

 マルシェは考え続けた。



 マルシェはしばらく、うとうとしていた。

いけないと思った。寝てしまっていたかもしれない。

マルシェも、かなり疲れているようだ。


 その時、クレアの方から声がした。


「あ、れ」


 マルシェが急いで椅子から立ち上がった。クレアが目を覚ましたのだ。


「クレア!」


 マルシェがクレアに近寄った。

 クレアはぼんやりとした目で、マルシェを見た。


「マルシェ、ここはどこですか?皆は、皆は無事なのですか」


「ティナの家だよ。敵は倒した。誰も怪我してない。無事だよ。クレア以外……」


「そうですか……よかった……」


 クレアは安堵した。


 マルシェは、怪鳥との戦いの様子を説明した。

 そして、クレアを担いで集落まで戻ってきたこと、皆は今は休憩していること。


「なるほど、状況はわかりました。起きれるでしょうか……」


 クレアが体を起こした。



「あんまり無理しちゃだめだよ」


 マルシェは心配で、止めた。


「少し体が重いですが、大丈夫です」


「よかった。ティナとキョウコが着替えさせてくれたから、しばらくは横になっていたほうがいいよ。

ずっと、クレアは目を覚まさなかったんだ」


 クレアは自分の服を見た。すると、慌てて毛布を体に被せた。


「どうしたの?」


 マルシェが不思議そうに尋ねた。


「あ、いや、その、肩が見えていたものですから」


 クレアは浮かない顔をしている。

「胸はマズいと思うけど、肩くらいならいんじゃないかな……

クレアが嫌だと思うなら、隠してもいいと思うけど。別に隠さなくてもいいと僕は思うよ」


「そうですね、でも……」


 クレアは浮かない顔のまま。


「でも?」


「私の肩、男性みたいでしょう?あまり、見られたくはありません」


 声を落とすクレア。

クレアは筋肉と体格を気にしているらしい。

マルシェはなんと言っていいのか、迷った。


 素直になること。いつ、死んでしまうかわからないことが、頭をよぎった。


「クレアの肩は、とっても綺麗だよ。肌も真っ白で、綺麗だ」


 マルシェは勇気を出して言った。


 クレアが意表を突かれたような表情になった。


「そ、、そんなことはありません」


 頬を染めるクレア。


「マルシェ、そういう事は好きな人以外には言ってはいけません。誤解されますよ」


 クレアが咎めた。


「好きな人になら、言ってもいいの?」


 マルシェは聞き返した。


「それは、その、場合によると思いますけど」


「クレアはとっても綺麗だよ」


 マルシェが再び口にした。マルシェの心臓がドクドクいっている。

言えるうちに、言っておかないと、とマルシェは思ったのだった。


「え、えっと」


 クレアは口ごもる。

 好きな人になら言ってもいい。その上で、マルシェは再び、綺麗だと言った。

 鈍いクレアでも、その意味を察することは出来た。

毛布を手にしたまま、押し黙ってしまう。


「マルシェ」


 クレアが口を開いた。


「私は目覚めたばかりなのですよ?不謹慎ではありませんか」


 クレアの言葉に、マルシェはハッとした。


「……そうだね、ごめん。あんな目にあったばかりなのに……」


 マルシェは立ち上がった。


「ティナを呼んでくるよ。ティナも隣の部屋で、ずっと待っているんだ」


「あ、いや、あなたを非難するつもりではないのです、違うんです、待って、マルシェ」


 マルシェは部屋のドアの方に向かっていった。


「待ってください」


 クレアがベッドの上から手を伸ばした。

 ドアが開き、バタンと閉まった。

 静寂。

 クレアは俯き、自問する。

 どうして、私はいつもこうなのだろう。

 咄嗟の事に、シールドを張ってしまう。

 マルシェは、きっと家にも帰らず、クレアが起きるのを待っていてくれたのだ。

 きっと、先ほどの発言は、勇気を出して言ってくれたに違いない。

 それなのに、不謹慎などと。

 クレアは自分を責めた。なんで私は。

 クレアは泣きそうだった。

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