6 召喚成功?
ザワザワ
魔王城の召喚の間には多くの魔族が集まっていた。巨大な魔法陣の前には一人の少女が立っていて皆の注目が集まっていた。
「魔王様、最終調整が整いました」
「分かった」
魔王と呼ばれた少女は短く返事をした。今この世界では魔族と人族の戦争が起こっている。少し前に先代魔王が倒され魔族は敗北の危機に晒されたが、先代の一人娘である現魔王エレノアが奮闘し、なんとか立て直した。しかし、今から約1年前人族派に勇者一行が異世界から召喚され再び魔族派は窮地に立たされていた。そんな中、突如召喚の間に今までに見たことがないほど巨大な魔法陣が出現したのだ。エレノアはすぐにその魔法陣を調べさせ、召喚用の魔法陣であることを確認した。そして様々な準備を整え、今夜その魔法陣を使用し強力な戦力を得ようとしていたのだ。
「今から魔力を注ぐ」
エレノアは深呼吸をしてからそう言った。エレノアが両手を前に出し、魔法陣に魔力を込め始めようとしたその時、なぜか魔法陣が光りだした。
「え?」
エレノアがそう声を発したと同時に先代のころから魔王に尽くしていた魔王軍最強と言われている幹部アルベルトは周りに指示を出した。
「全員戦闘態勢!!魔王様お下がりください!」
召喚の間にいた魔族達は混乱し一気に召喚の間は騒がしくなった。
「来るぞ!!」
アルベルトがそう言った途端、魔法陣は光を増しとてつもない魔力が漏れ始めた。小さな稲妻や小爆発が起こり召喚の間の天上に大きな穴が開いた。エレノアが咄嗟に魔法を行使したおかげで負傷者は出なかった。
しかし魔法陣の反応は治まり消えてしまっていた。
「何が起きたの?」
瓦礫などが落ちてきてせいで白い煙が立ち込んでいて周りがよく見えなかった。
「っ!!」
エレノアとアルベルトがいち早く煙の中にいる何かを認識した。突如、召喚の間の壁が吹き飛び、風が煙を運んで行った。
「夜か...」
煙の中から現のは黒いロングコートでフードを被り何かの仮面をつけた男だった。