5 修行を終えて
女神が作り出した空間はそこそこ広く案外快適だった。少し大きい一軒家が空間の真ん中にあり、その中には食料が無限湧きする倉庫があったり、修行の疲れを癒せる広い風呂があり生活する上で困ることはまずなかった。
修行もずっと一人でスキルを使い何かを作ったりするだけでなく、女神の作った人形と戦っていたりした。また、修行の最中に『言霊』が『念動』に変わった。どうやらスキルはある程度使うとその進化版みたいのになるらしい。
『言霊』は声を発し何かに影響を与えるが、『念動』は心の中でイメージしたりするだけで何かを動かせたりするらしい。
「ふっ!」
いつものように人形と戦っていると、突然景色が変わった。
「?」
結構前に女神に召喚された時のような動揺はもう俺の中には無かった。周りを見渡すと右側の少し離れた所に女神が立っていた。
「一年間の修行お疲れさまでした」
女神にそう言われてやっと自分がもう一年間の修行を終えたことを理解した。
「もう一年経ったのか...」
「はい。それでは向こうの世界にお送りいたしますね」
「ああ」
女神が手を前に出すと俺の下に魔法陣ができた。
(戦闘に便利だから転移魔法の様な魔法もスキルで作ったけど、本当の転移魔法を使うときはこんな風に魔法陣をつかうのか?)
「それでは、少しでも我々が楽しめるように頑張ってくださいね」
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「あれは少し予想外でしたかね...」
神威がいなくなり、再び静寂が訪れた真っ白な空間で女神はポツリと呟いた。
「最初は成功して『良かったー』って気持ちだったけど...よくよく考えたらあれって結構やばいなー。私の用意した人形ってあの勇者君達一行が束になっても倒せなくね?そう考えると最大9体に勝ったあの子やばいんですけど...」
「まっ、いっかもう向こうの世界はほっとこー」