表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真紅夜綺譚  作者: 珀武真由
8/71

第七話 訪問 一度に押し寄せられても困ります

 おはようございます。気温の変化が激しいですね。お体に気をつけましょう。

今回は誰が増えるでしょう?

さてまたお付き合い下さい。

 ※改稿21/12月2日

改稿した日も寒かったです。

  


 二人が、ぴたりと肩を寄せ合い柩を眺めている。困惑しているその空気を払拭するかのように、真夜が背伸びをした。


「もう、お風呂を頂きますわ。ゆっくりと」

「あっ、はい。では用意をしてきます」


 ラファが急ぎ用意をし始めた。

 真夜が柩を凝視している。


「本当に何をお考えなのかしら」


 すぐにでも文句を言いに行きたいのだが、ロイズの居場所を知らない。二人は風呂を終え寝ることにした。

 久々の布団に(くる)まれ、心地良く眠る二人がそこにいた。


 ぐっすりと、眠っていた真夜が起きると隣で寝ていたラファの姿が見当たらない。

 どうやら買い物に出掛けたらしい。


 ラファを待つ間、真夜は家の周囲を探索することにした。

 一人、楽しそうにうろついている。

 庭先から、覗く光景の中には学園が近くそびえており、真夜のお気に入りの教会も見える。


「あら、近いのね。便利ですわ」


 門の外に出ると、真向かいに幼稚園があり、子供達が楽しげに園の庭先の遊具で戯れていた。


「まぁ、可愛らしいこと」


 園児を見たあと、ぽつぽつと歩き出す真夜がいる。といきなりスカートの裾を引っ張る感触がした。


「んん?」


 スカートの先を見ると、一人の色黒の男の子が裾を引っ張り真夜を見ている。


「坊やは、あの園の子?」


 言いながら屈み、子どもの頭を撫でている。

 男の子は真夜にニパッと笑顔を向け、手招きをしたあと走り出した。


「あっ、待って」

 

 男の子の走る足は速く、中々追いつけない。真夜も身体能力は優れている上に足には自身がある。

 ある意味“怪物”なので人間に劣ることはない。その真夜が追いつけないのだ。


(あの子、変ですわ。(わたくし)が追いつけない。しかもどこに向かうのかしら……)



 走る足で追いつけない真夜が足に力を入れると飛び跳ねた。

 

(ごめんなさい。頭を蹴り上げたら謝りますわ)


「やっ」

 勢いのあるジャンプ力で地面から浮く身体は男の子の頭上高く飛ぶ。

 男の子の前に着地しようとしたが、なぜかその男の子が着地点に入ってきた。


「わわっ、なっなんでです?」

 

 避けようとするも、なぜか男の子も真夜に吸いこまれるように同じ場所に必ず来る。


(はあぁ、絶対踏みます。ごめんなさい)


 そう思い、観念し瞳を閉じた真夜は力強い腕に抱き留められ、真夜を抱いたままそれは地面に降り立った。

  

「 ? 」

 不思議に思い、瞳を開けるとラファの顔が近くにあった。


「何をしているのです。真夜」

「あら、ラファ」

「狼の仔と追いかけっこですか? まあ狼は狼でも人狼(ワーウルフ)ですが……」

「え?」

 

 ラファの腕には、真夜を受け止めている左と茶色の狼を抱きしめている右がある。

 その右の狼は小さく、尾をブンブンと振り回し息を荒くしながら舌をペロッとだしている。

 真夜が瞳を閉じた時に狼に変化したらしい。まったく見に覚えのない小さな人狼だった。


 それに気づけなかった自分にも不思議がる。が、そこは頭の隅に置き今は、目の前の不思議を考えることにした。


「? どこの人狼()かしら」


 ラファが、腕の中で悩む真夜の足を地面に降ろすと、そっと頭を撫でている。


「ラファ?」

「何もなくてよかった。飛び跳ねている最中に瞳を閉じるのは危険ですよ」

「……ごめんなさい」


 謝る真夜の瞳をじっと覗くラファが、ちび狼を真夜の細い腕に託すと、地面に置いた買い出し袋を拾いあげていた。

 

「フフ、可愛い」


 ちび狼を持ち上げる真夜が、姿を愛でているといきなり男の子に変化して真夜を見下ろす。もちろん裸である。包み隠さず丸裸の子を、眉一つ動かしもせず腕に抱き締め直す。


「あらあら、この子はいったいですわ」

「あっ、そうそう。ロイ──が、伯爵の姿があそこに。昨日出来なかった話しをしに来たようです」

「あら、それはそれは。これで胸の内もスカッとしますわ」


 ロイズに会い、文句を垂れる気満々の真夜の瞳には、近づいてくるロイズの姿をあった。


「いやぁ、速いなラファ君は。やっ、真夜、こんにちは。ゆっくりと眠れたかい?」

「お蔭様で! 夢見は最高でしたわ!」

「ハハハ、それはそれは、よっかた」 

「ラファ、伯爵を(はた)いても宜しくて? 文句の一つでは終わらなそうですわ」

「………」

「おお、それはご遠慮こうむる ? 何か不機嫌そうだが」


 それを聞いた二人が顔を見合わせていると本当に不思議そうな顔をするロイズがいた。


「じいじ、じいじ」

「じいじ?」


 真夜の腕の中にいる男の子が、ロイズを見て嬉しそうに小さい腕を小刻みに動かしていた。

 ロイズの足元には女の子がしがみ付き、もじもじとし真夜を見ている。ラファは屈み、女の子の前に座り瞳を覗きこむ。


「この子は虎ですか。小さいながらも主張は大きいですね」

「は、はじめまして。あろま(アロマ)です」

「ラファです。よろしく」

 

 アロマは着ているワンピースの両端を軽く持ちあげお辞儀をしている。その姿につられラファも軽くお辞儀をしていた。

 

「伯爵! この人狼()は伯爵のですか?  

 ほんと次から次へと困りますわ」

「ややや、今から説明をさせておくれ。でもその前に少し引っ掛かります。何か怒っているような?」

「じいじ、マヤおこるのあたりまえ」

「うん。まや(マヤ)様からうっすらと主様をかんじる」


 女の子が、真夜の前に立つとラファにした挨拶と同じようにしているが気になる言葉をその小さい口からこぼれ落とす。


「はじめまして、まや(マヤ)様。あろま(アロマ)です。今日より、我が主様共々お世話になります」

「初めましてですわ。主様!? 何のことですの」


 真夜の腕にいる男の子は、愉快そうにはしゃぎながらロイズを指さす。


「マヤ、おこるぅ。じいじ、こまる。キャハ」


 真夜の不機嫌に思いあたるロイズがいきなり指を鳴らす。


「まさか?!!そういうことですか。急ぎ帰りましょう」


 ロイズがいきなり帰宅を急かし始めた。

 ラファは、ロイズを見ながら真夜の腕の中にいる裸の男の子に自分の服を羽織らせると男の子はそれに喜び声を荒げている。


「キャハ。これ、ガバガバ! おおきい。やさしい。マヤにラファ、もったいない」

「あら、ラファはあげませんわよ。(わたくし)のですもの」

「キャハハ」


 目の前のやり取りをラファが楽しそうにほくそ笑むと、足元にはしがみつく女の子がいた。小さい身体を持ち上げると嬉しそうに笑っている。


「ほほう、そうしているとまるで家族です。いい絵ですな」

「もう、伯爵ったら。誤魔化しているおつもりなのね? そのような茶化しは効きませんわ。ね、ラファ」

「そうです。きちんと説明していただかないと困ります」

「いや、そういうつもりはない。本心だよ」

 

 それを聞き、真夜は少し照れた。


 ロイズと共に家に着くと、早々にリビングのイエス像の足下に在るモノを見せる。


「あいたた。すまぬ、やはりこちらが先に届いていたのか」

 

 柩を見るロイズが、頭を軽くかきむしると同時に顔のしわを増やし困っていた。


「闇烏め!先に着いたなら連絡の一つでも寄越せばいいものを、そうしたら先に説明出来たものを!」

「まあ、運搬に闇烏をお使いに───ですの? あの者達は仕事は速いですが無愛想過ぎて(わたくし)はいやですわ。あと使い魔の烏はおしゃべり過ぎます」

「確かに、使い魔の烏はおしゃべりです。でも闇烏は違う。無口な運送屋です。一緒にすると可哀相ですよ」

「そう? フフフ」


 そう言いながら真夜は柩をやさしく撫でていた。傍らでは、女の子がお祈りをしている。

 姿を見た真夜は、頭をやさしく撫で微笑むと女の子も照れながらほほ笑み返した。

 柩を(くま)無く見るロイズを視ながら、床に足を崩し座る真夜がいる。

 真夜の膝に女の子が軽く手を添えてきた。

 

「あら、どうしましたの? 何か食べます」


 首をぶんぶん振ると、真夜の手を引っ張りあげその前でお辞儀をしている。

 姿は子どもなのに、雰囲気は子どもを感じさせない。

 

「ご挨拶をあらためてさせていただきます。私はあろま(アロマ)です。そこのひつぎは我が主、そしてあそこにいるのはるい(ルイ)です」


 そして口笛を吹くと急ぎ男の子が駆けつけるなり横に座る。


「さあっ、ルイあいさつを」

「ルイです。よろしく。マヤきれい、すき」

「まっ、ありがとうですわ」


 お世辞でも褒められるのはやはり嬉しい。

 真夜のその姿に、少し安心したアロマがいきなり険しい顔つきになり、そして小さい身体を少し大きく、見た目は十二、三の子供へと変化さす。変化した姿に真夜は驚きもたじろぎもせず静かに眺めていた。

 アロマは一礼をしたあと跪いた。

 直後に、ポツリと小声で自分自身の姿に文句を言う。


(あるじ)様が近くにいてもこれが限界。あと思考もほぼ幼いまま。嘆かわしい。」


 下を向き、苦悩するがその気持ちを落ちつかせ真夜に顔を向ける。


「真夜様、突然の訪問申し訳ございません。ですが我々は貴方方を頼らざるを得ないのです。ご助力願えませんか」


 そうお願いするアロマの瞳は金環食の輪をくっきりと浮かし不思議な青い色を輝やかす。


「それは跡目争いにですか? それともまた別のことですか?」

「両方にです。ですがこれは真夜様にとってもいい機会だと思います」

「どうしてです?」

「それは、我が主様をあのような箱に閉じこもる原因を作ったのが、真夜様の“探し者”! あの『破壊者』だから……です」

「!!!あの者に襲われたのですか」

「はい」


 それを聞くと真夜を取り巻く空気がピリリと冷たく注し、紅い瞳は憎悪の色を濃くする。

 足下の床がヒシヒシと凍り始め、吐く息を白くさせた。

 そこにいた者一同が寒さで震え始め身を縮める。


「真夜、ラベンダーです。気持ちはわかりますが落ち着いて下さい。皆が凍ってしまいます」


 ラファは、用意した紅茶を真夜に手渡し微笑む。そして皆にも飲み物を配り終えると真夜を見て問いかける。


「どうします? 真夜」

「どうするも何も、勿論お答えは────」


 床に座り、カップを口にしているとギギギィと木の擦れる嫌な音が耳につく。

 それに気をやりカップの手を下ろす真夜がいる。

 その音は、柩を中から無理に開けようとする者が立てた音であった。


     

 


 お疲れさまです。本当に恥ずかし難しです。自分ごとですが、最近キャラの言葉使いをする自分がいて日々焦ります。そうでなくても可笑し恥ずかし変な自分なのに・・・ハハハです。ではまたお話ししましょう。ここまでの話しは初回日です※改稿しました。

ブクマの登録、広告↓のポイント評価、感想お待ちしてます。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ