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真紅夜綺譚  作者: 珀武真由
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第四話 獲物 後悔しても時間は過ぎる

 おはようございます。

こんばんは。

こんにちは。

2021・11月19日改稿です。

まだ至らないところもありますがよろしくお願いします。12月8日改


 

 何事もなく、普通の朝を迎えるはずの学園が何だか慌ただしい。その原因は、この場所には似つかわしくない車が何台も止まっているからである。

 止まっているその車は、赤色灯が回っており白と黒が特徴の、皆が知っている警察車両であった。


 警官達が右往左往行き交いしている。事故現場には黄色のテープが張り巡らされており、考察する者達で溢れていた。

 テープが張られた現場は、昨日男性職員と女生徒がいた場所だ。

 至る所で生徒に質問する者と、聞き込みする者、怪しい人物を探す者とに分かれ警戒しながら其所彼処(そこかしこ)に警官が散らばっていた。


 「やだ。恐いね」

 「殺人だって」

 「血のない死体ってホントかな?」

 「不気味~」


 教室の子達が、聞きかじった話しを各々交換し合っている。

 会話に、耳を立てる真夜(マヤ)が顔を隠し席に着いていた。

 暗く沈み、話しかけずらいその姿に、恐々と声をかける波瑠がいる。


「昨日はごめんね。私、先に帰っちゃたのかな? どうして帰ったのか覚えてないのよ~! 気が付くと自分の部屋で寝てたの。ごめん、大丈夫だった?一人にさせてない?」


 ほぼ半泣きで、手を取り話すその姿は外の出来事など眼中にないようである。


「フフ。大丈夫ですよ。波瑠の家の前で、別れたのですが覚えてないかしら? 記憶にないほど学内を振り回したせいですわ。こちらこそ、ごめんなさい」


 真夜は、嘘を交えながら昨日のことを波瑠に話した。本当は、気を失った波瑠をそのまま眠らし、ラファと一緒に家まで送り届けたのだ。

 波瑠が知るよしもない。

 波瑠は真夜を勝手に置き残し、帰ったと勘違いしている。波瑠がただひたすら謝っていた。


(やっぱりこの子は可愛い子だ)


 真夜は腕を伸ばし、波瑠の頭を撫でている。波瑠は、真夜の言葉と頭を撫でられたことに余裕が出来たのか、外の出来事に細々と耳を傾け始めた。

 

「そうそう、外の騒ぎは何?」


 不思議そうに尋ねる波瑠がいる。

 後ろにいる子が波瑠の耳に手を当て、小声でひそひそと話しかける。


「知らないの? 女の子がね、遺体で見つかったの。しかも、内の生徒。見つかった遺体は血がないらしいよ。恐いよね」

「おうぅ、何とそんな恐いことが。そうか、それで、うな垂れていたんだね。真夜? もしかして、恐い?」


 波瑠が尋ねながら真夜を抱きしめていた。どうやら波瑠の中では、真夜が学内で起きた出来事が恐く顔を隠しているものと勘違いしているらしい。波瑠の腕に抱かれると、真夜の中で悔しさが込み上げてきた。


(あの時、あの子は完全な食糧だったとは。私としたことが・・・・・)


 私の、心の内を知らずに気遣い、抱きしめてくれている波瑠の手を力強く握った。

 そして、私の悔いても、悔やみきれない心の中の葛藤が始まっていた。


 「過ちを犯した」 その時間をどれだけ繰り返し、どれだけの犠牲を見届けてきたことだろう。失態の手痛さは、心底気持ちが悪く、反省しても尽きない苦しさに幾度、胸を押し潰されたことか。

 

 後悔する真夜を、ジャスミンの花の薫りが鼻に突き真夜を憤慨させる。


(またあの男は!人の気分を害すのが余程好きと覗えますわ。何をしに来たのかしら。  

 今の私は、あなたを見ると何をするか分からないというのに────)


 男性職員に対する、自分の怒りを必死に押さえていると、波瑠の口からその男の行動を告げられ、更に自分を憤りさせることとなった。

 

「あれ? 外に視えるのイケメン教師じゃあ、あれれ? あれあんなところで。あわわわ」


 真夜(マヤ)の席は窓の近くにあり、いつでも外が覗え、景色を見るのが楽しみなのだが今回ばかりは違う。

 外を覗くと忌まわしい男性職員が女生徒と話し頰に、首筋にと、キスを軽く交わしている。


(白昼堂々と(わたくし)の前で。明らかに挑発ですか。許しませんわ)


 警官達がうろつく中、一歩間違うと猥褻行為罪で捕まる行為だというのに………

 おくびにもせず、わざと真夜に見せびらかす男性職員がいる。苛立ちを感じ、今にも襲いかかりたい気持ちだったが、今出て行く訳には行かない。


「ラファ!お願いします」

「承知しました。真夜」


 真夜が小声で、ラファにお願いすると真夜の影から姿を現し颯爽と飛び出して行く。ラファは黒いマントを纏い………

 ラファの動きと合わすように、閃光が窓を激しく揺らした。爪で引き掻いた金切り音が教室に鳴り響き抜けていく。

 音を捉えた、何人かの生徒は嫌な顔をして耳を塞いだが、誰一人、影から身体を出すラファの姿に気付いた者はいない。


 真夜の瞳は紅く、冷たい。職員に冷ややかな眼差しを向けていた。


 真夜は波瑠が気になり、ふと見ると手で目を伏せているが………

 外が気になるのだろうか。照れながら伏せている手の指のすき間からは、イチャつく二人の光景を垣間見ては恥ずかしがっている。

 真夜が辺りを見るとクラスの半数以上の者が見届けており、見た女生徒の反応は波瑠に近い行動を取っていた。

 顔を赤らめる者や軽蔑する者、色々な反応を示す者達が会話を賑わしている。


 外の光景は、この棟校舎の大半のクラスの生徒は目撃している。


(あらあら、可愛らしい光景ですこと)


 真夜はこの光景を、波瑠に見つからないように笑う。隣では慌てる波瑠がいた。

 

「わわっ! ダメ、見てはいけない!!真夜はダメだよ」

「あら? そうは言うもののあなたは()らすことなく見ていたですわ。私の気のせいかしら」


 慌てて真夜の目を隠す波瑠だが、彼女の一言を聞くと照れ出し、頭をぐりぐりと擦りつけ誤魔化している。

 波瑠の仕草に、真夜が小さく笑い甘んじ受け止めた。楽しげに(じゃれ)合う二人だが波瑠は突然目眩を起こし、真夜の肩に寄りかかった。波瑠は真夜の肩に顔を置き沈んでいる。

 先程の明るい動作とは逆に、波瑠はいきなり静まりかえり顔は青ざめていた。

 目眩の原因を真夜は理解しており、波瑠の身体を小さい肩で預かる。


 外を覗くと男性職員の姿は消え失せていた。されど、教室の中の興奮は止むことはなく、ひそひそと話しに盛り上がっている。その様子に真夜は少し呆れ、眉間に(しわ)を寄せながら外を見つめ直した。


(ラファ、貴方に任せます。煮るなり焼くなり切るなり、お好きになさいませ)



 学内の庭木が、ある動きに反応して枝を揺する。ラファが逃げる男性職員を追い駆けている動きに合わせた揺れだった。  

 職員の後ろに追いつくと、ラファの爪が脚を捕らえた。職員の足にラファの爪が刺さると、身体は地面へと崩れ落ちた。

 追い詰めた場所は、学園の裏にある花畑だった。


「あなた方の噂は耳にしています。『吸血鬼殺しの吸血鬼』もしくは『紅の吸血鬼』と呼ばれているそうですね」  

「・・・・・・」

「何でも同胞を、元の姿に戻すとか?」


 職員が吐く言葉に返事もせず、耳も貸さずのラファが対峙している。


「その子を離していただけますか」


 職員の片腕には、先程の女生徒が抱えられているが、女生徒の反応は無く、ぶら下がる布のように乱雑に扱われている。


「ふん、望みならくれてやる。もう用済みだからな」


 投げられる少女をラファが受け止めると、職員が爪を伸ばし襲いかかってきた。


「お前の武器も爪だろう? 両腕が塞がっていては何も出来まい」


 爪を向ける職員が、高らかと笑いながらラファに飛びかかるもそれは除けらる。

「ハッ」

 職員が気がつくと、いつの間にかラファの周囲に細かな紅い水滴が浮かんでいた。

 水滴が弾けると霧になり、周辺の色をジワジワと紅く塗り替えている。霧は、ラファの血液から造られたものであり、ラファの意思通り動く。


「? これはなんだ」


 驚いている男性職員に、霧が襲い包み込むと動きを鈍らした。まごまごしている職員にラファの紅い氷の矢が無数に放たれる。

 矢を受ける職員の身体には無数の穴が空き始めた。


「グゥウッ、身体が」


 ラファに傷を負わされた職員が爪を伸ばし、抗ったが実は反面していた。襲うと見せ掛け高く跳びはね逃げていったのだ。

 急ぎ後を追うラファだが、もう職員の姿はなく花畑が広がっているだけだった。

 職員が落とした血痕の部分は、枯れ葉剤を撒いたように、生えている花を枯れさせている。

 血痕を見るラファをあざ笑うかのように、花が揺れていた。ラファが溜息を深くついた。


(逃げられましたか)


 ラファは職員が逃げたであろう道を眺めた。


 腕に抱える女生徒を木陰に下ろし、自分の血を少し与え反応を診ている。青ざめていた顔色に少しずつ赤みがさし戻り女生徒の脈が安定していく。

「ほう」

 と、胸をなで下ろし安堵すると、ラファは女生徒を置き足早に去って行った。

 ラファが置いていった少女を、学内の講師が発見する。

 

 窓からやんわりとした風を受け、青ざめている者が一人。

 真夜にもたれ、背中を優しく撫でられている波瑠がいる。

 

「波瑠? 大丈夫ですか。今すぐに保健室へ行きましょう」

「大丈夫。なんだか知らないけど、いきなり花の匂いが。こうしていれば落ちつくから」


 真夜の頭に額を擦り、深呼吸をゆっくりとする波瑠がいる。


「うん、やはり真夜は良い匂いがする。本当に不思議なぐらいに気が和らぐ」

「そうですの? フフッ、こそばゆくてよ。波瑠、首に鼻息が当たってます。まるで子犬のようですわ」

「子犬? では私今から子犬だワン」

「波瑠! くすぐったいです。もう!心配してますのに、損をした気分ですわ」

 

 先程の様子と違い、いつもの波瑠が目の前にいる。安心する真夜が、嘆息と同時に小言を突いている。

 

「ごめん、帰りにカフェ奢るから許して」

「もう、仕方がないですわね」

 

 二人が、コントのようなやりとりをしている中、更に警察官達が慌ただしく動いていた。通路や外にいる生徒達を教室に入るよう促し何かにせいていた。

 全校アナウンスが突然流れると、生徒達のざわめきが大きくなり、不安へと膨らんでいく。


「先程、一人の生徒が倒れているのが発見されました。何者かに襲われたらしいですが意識はあります。まだ不審者が校内にいるかもしれません。今日の授業はお終いです。皆さん帰るように。繰り返します」

 

 アナウンスのあと、各々のクラスで説明があり、生徒達は帰るように指示を出され帰宅することを強要させられる。各々が急ぎ、指示に従い帰宅を始めた。

 帰らされる生徒に交じり、不満げに文句を垂れ、顔を膨らます女生徒が一人。勿論、波瑠である。

 

「ああ、せっかくのカフェが」

「仕方がないですわ。この状況下ですもの。でも明日、明後日お休みですわ。もし波瑠さえ宜しければ……」

「えっ、てことは」

「はい、落ち込む波瑠の為に。不謹慎ですがカフェへいきましょう」

 

 真夜の一言に、大袈裟に喜び真夜を抱きしめる波瑠がいる。

 笑いながら波瑠を抱き()めていると、真夜の目にふと校舎が映る。

 事件の痕跡の黄色のテープが、心に刺さり悲しむ真夜がいた。


 波瑠の家の前で別れ、真夜が小さく手を振り彼女を見送っている。

 家に入りかけた波瑠が真夜を心配し、声を掛けようとしたとき、後ろにラファの姿を目視した。ああ大丈夫と安心した波瑠は、大きく手を振ると家の中へと入っていった。

 家の扉がゆっくりと閉まっていく。


「ただいま」

 扉から漏れる波瑠の声を聞き、淋しそうに立つ真夜の手をラファが握る。

 ゆっくりと歩く二人を夕陽が包む。


「そうね。私の “ただいま” はあなたでしたわ」

 

 言葉を耳に入れ、照れるラファは明るく微笑み手を強く握る。


「お帰りなさい。真夜」

「フフ。ただいま」



      

 お疲れ様です。

改稿しました。

お読みいただきありがとうございます。

下記文は最初の後書き

ありがとうございます。

 少し闘ってみました。自分で暴れた方が簡単ですね。

このあと自分はタケノコと闘います。剥きます。アク取りします。切ります。超簡単なバトルですね。タケノコと玉ねぎをくれた父と妹に感謝です!

 ではまたお話ししましょう。

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