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真紅夜綺譚  作者: 珀武真由
4/71

第三話 職員 野良ネコは嫌いでしてよ?

 おはようございます。

まだまだ不慣れな点が多いです。でも書くのは楽しいですね。

 ではお付き合いください。

 改稿しました。*21:11月19日タイトル12月14日

また改稿したときはお願いします。至らなくてすみません。


    

「おはよう」

「おはよう」


 挨拶が飛び交う教室の中、波瑠が現れ、教壇に立ち机を叩き、注目を集める。

 大きな声を張り上げクラスの者達に伝えた。


「おはよう、みんな宿題のレポート。机に置いといてね。あとで職員室持って行くから。」

「はーい、分かった」

「やばっ。やってない。写し大丈夫かな」


 色々な返事が返ってくる。

 波瑠は一つ、自分の仕事を終え教壇から降りた。真夜の元へ急いで歩みよる。


「おはよう」

「フフ、おはようございます」


 レポートを眺める真夜を、波瑠はまじまじと観察し、頬を赤らめている。


「フフ、どうされましたの? 頬が赤い上に動悸が聞こてきますわ?」


 ペンを持ち、机に頬杖をし、流し目で波瑠を見る真夜は挑発的な口調で話す。

 確かに真夜の言う通りであった。

 波瑠は、真夜の一つ一つの動きに心臓を高らせ、見つめていた。

 真夜に視線を送るのは、波瑠だけではない。波瑠が真夜と仲が良いというだけで、遠巻きからもかなり注目を浴びていた。

 真夜の魅力には、皆が釘付けである。


「相変わらず綺麗」

「あら、波瑠も綺麗でしてよ。瑞々しいお肌が輝いて美味しそうですわ。フフ」


 真夜の本心だが、波瑠に正体がバレていれば洒落にならない冗談である。

 真夜の言葉に照れる波瑠だが、白い布に目が留まり驚いた。


「ナニをおっしゃっててて、お嬢様! その手の包帯は??」


 真夜の両手には包帯が、がっちりと巻かれ波瑠は目に入るなり、手首をそっと掴みマジマジと眺めている。


「どうしたの? 痛い。大丈夫、真夜」


 心配しながら、真夜の両方の手を、波瑠がそっと自分の両手で包み込み軽く握る。


「火傷を少々、お料理の際に油が飛んできましたの」


    この話は嘘である。


 本当は昨夜の咬み痕なのだが、その部分が青痣になったため、仕方なく包帯を巻いたのだ。

 本来すぐ治るの瘡だが、今回は特別な咬み瘡な故、思うように治らない。

 ちなみに真夜は料理をしない。


「何ということだ。私の白魚の手が……」


 そう言いながら真夜の手をまた、まじまじと眺めて痛そうな顔をしている。

 自分が負った傷ではないのに。


「クスッ。いつから(わたくし)のこの手はあなたのものに?」

「昨日からです!!」


 明るく言い放つ波瑠が、真夜を強く抱きしめ頰擦りをしている。

 髪をしきりに撫で、揉みくちゃにされる真夜の様子を見ていた隣の女子が波瑠を注意する。


「こおら、波瑠。その絡み方、あ・ぶ・な・い。ごめんね、こいつすぐ(じゃ)れ付くから気をつけてね」

「はい」


 明るい、クラスの居心地の良さを感じる真夜がいた。


「何かあった?」 

「いえなにもありませんわ。大丈夫です」


 心配そうに覗く波瑠の気を逸らすために違う話しを振ることにした。


「レポート、一緒に運びますわ。ついでに職員室の中を見知っておきたいのですが」

「んじゃ、お言葉に甘えて運んで貰おうかな。そのときに案内するね。ありがとう」


 真夜の申し出に波瑠が無邪気に笑っている。

  

 クラスの皆が提出したレポートを手に取り、教室を出る二人の姿があった。波瑠は歩く度にレポートを持つ真夜の手を気にしている。


「気にしなくても大丈夫ですわ。きちんと前を見て歩いてくださいませ。でないと転びますわよ」

「だって気になるんだもん。本当の本当に大丈夫? お願いしたけど後悔してます~~~」

「これぐらいは─……」


 言いかけていた言葉を止め、真夜はすれ違う女生徒を目で追いかける。

 女生徒は昨夜の少女だった。

 すれ違う真夜に気にも止めず、隣にいる友達に楽しげに話し、通り過ぎて行く少女。


「よかったですわ」


 ぽそっと、小声で呟き、ほほ笑んでいると波瑠がその顔を覗き込んでいる。


「知り合いでもいた?」

「ええ、知人に似ている顔がありました。少し嬉しいですわ」

「世界に似た顔は三人居る。と言うからね」


 波瑠の言葉に耳を傾け真夜は小さく吹き出した。笑いは、安堵の笑いであった。


 職員室の道すがらも、波瑠は色々なことを真夜に教えたり話したりしている。

 外にある樹や花壇の話も止むことなく、何が植わっていて何があるなど、自分の知っていることを一生懸命に話している。


 真夜は波瑠を見て思う。


(この子はこの学校が本当に好きなんだ)


 話しをしていると二人は職員室に着いた。

 宿題を出した先生の机へと、足を急ぐ波瑠がいた。その後ろを付いて歩く真夜がある薫りに気づく。


(ジャスミン。昨夜と同じ───薫り。どこからかしら)


 余所見をしている真夜に波瑠が話しを振る。


「ありがとう、真夜。そしてこの先生が歴史の宿題を出したやな奴です。もう、ほんとやめてよね」


 レポートをその職員の机に置くと、大きく鼻息をつき、はっきりと波瑠は文句を突いた。


「おいおい、大事だぞ。なぁ、宿題は───ととと。ええと」


 職員が、真夜の顔を見て名を思い出そうと眉をしかめている。


「転入生の樹月真夜さん。綺麗でしょう」

「おお、そうだ、本当に噂通りの美女だな。確かに天使様か天女様。うん、美人だ。先生のお嫁さんにならないか。今募集中」


 さらっと真夜にプロポーズをしている。


「うおぉい、やめて。真夜は渡さない。そして何、セクハラ?パワハラ? どっちにしてもあげない!!!!」


 男性職員から真夜を隠すため、波瑠は強く真夜を抱きしめた。


「この場合はパワハラかしら。フフ、安心して下さいませ。一度見ただけでは(ナビ)きませんわよ」


 真夜も波瑠を抱き返す。


「フッフッフッ。プスゥ。フラれてる。ウラヤマか?センセ。いいだろう」


 波瑠は真夜を抱く自分を、職員に見せびらかす為、身体を揺らす。


「真夜は柔らかい上にいい匂いがする。微かな薔薇の匂い、香水ではなく自然に薫る。不思議なんだよぉ」


 真夜を、抱きしめながら鼻を動かす波瑠に戸惑うも、されるがままの真夜がいた。


(なんて聡い子かしら、隠していたのに嗅ぎ分けるなんて)


 波瑠に困っている真夜は鋭い視線を向けられる。波瑠から身体を離し、視線の方向を見ると人だかりが出来ていた。

 人集(ひとだか)りからジャスミンの薫りが仄かに漂う。

 よく見ると、ある職員を囲む女生徒の襟元のカラーは青色であった。


「どうした?真夜。どこを見てるの?」


 波瑠が真夜の目線に合わすと、女生徒に囲まれた、背の高い男性職員の後ろ姿が見える。

  

「ああ、先月赴任した先生だよ。確か一年生の何かを受け持つ為に来たんだけど、なんかモテに来たみたいで私は嫌だ」


 一言ぼやくと、また真夜を抱きしめ直している。波瑠の言葉に同調するかのように、歴史の職員が言葉を付け足す。


「まあ、ここからは視えんが顔は綺麗な美形だ。樹月と張り合えるんじゃないか」

「えええ、あんなのと比べないで! 真夜の方が、断然っ綺麗! 美形! 天使様。なんだから!!」

 

 波瑠がより強く、真夜を抱きしめるとその髪に顔を埋めている。


「おお、惚れてるのか、なんかアヤしいなお前達。付き合ってるのか? センセは百合も好きだぞ! 応援するぞ」

「うん! 付き合ってはいないが真夜は私の。応援してくれ。だが、残念!真夜には本命がいるのだ。私は二番目なのだ~~~」


「ええ、本当か。じゃ、俺は二番目って言いかけるぐらいに好みだったのに」 

「もう、あなた達いやですわ。人を何だと思っているのかしら?」


 珍しく文句を言う真夜に波瑠が驚き、顔を見るとまた強く抱きしめた。

 波瑠は本当に(ジャ)れるのが好きらしい。


 波瑠を抱きしめながら真夜の心中は穏やかではない。近くに【野良】がいるのだ。

 気が付くと、先程の人だかりは失せ背の高い職員の姿もそこにはなかった。

 そして……。

 ジャスミンの薫りもそこから消え失せ───見失う。背の高い職員を調べた方が良いのか考えている真夜がある視線に気付き顔を上げる。 

 が、視線の先にその姿がない。


(気のせい?いいえ、確かに視線を感じた)


 ある不安が過るが然程のことはないと捨て置いた自分を……真夜は後で後悔する。


 波瑠と共に職員室を離れ教室に戻り、今日の日程をこなした。

 

 学内の案内は終わり、あとは部活動や行事などのプレパレーションのみとなった。

 波瑠は真夜に部活動の案内を持ち掛ける。

 

 「今日は、部活もあるから。覗ければ覗いてみよう。ちなみに私は帰宅部だ」

「まあ、なのに(わたくし)には部活の案内を? 面白いですわ」


 真夜がコロコロと笑っている。


 波瑠は真夜を見て、少し間を置き考えると真夜の手を取り腰を屈める。


「では、お嬢様には私の行きつけのカフェを案内進ぜよう。その方がお気に召すかな。お嬢様は?」

「お願いしますわ」


 二人が、教会の近くの通路を歩いていると、ピアノの音と一緒に賛美歌が流れ響いている。


 耳を傾け、聞き入っている真夜の鼻先が、微かにジャスミンの薫りを捕らえた。


(まったく、人が気分良くしている時に台無しですわ。節操がなく、場所を弁えるということをしらないのかしら)


 真夜が、その薫りの先に目を見張ると、背の高い男性職員が女生徒と淫らな行為の最中だった。男性職員は職員室で見かけた男である。

 行為は端から見ると、猥褻な行為にしか見えないが、真夜の瞳にはっきりと映る。


 今まさに吸血の真っ只中─────。


 真夜の視線に気付き、男性職員は鋭く睨むと誇張するかのように、ジャスミンの薫りを噎び上がらせた。縄張りだから邪魔するなと言わんばかりに。


 いつもの真夜なら邪魔をするのだが、今は波瑠が隣におり、邪魔することもできない。止めることも出来ずに、手ごねいていると突然、波瑠がぽそっと呟く。


「あれ? 変なの。ジャスミンなんてどこにもないのに匂いが薫る?」


 それを聞く真夜が急いで職員を睨むが、その職員は真夜を見るとしたり顔で笑っている。


     吸血鬼は気まぐれだ。


 その場で獲物を食す時もあれば、自分の獲物を事前に意識で繫ぐ時がある。

 【これは獲物だ】と思う相手に口付けたり、咬み痕を付けたり、強烈な匂いを嗅がすことにより、相手の意識を支配する。

 そうしてから指定の場所へと相手を招き、吸血行為を行うのだ。職員は今回、薫りを誇張すると同時に波瑠にマーキングを施した。

 職員は波瑠が真夜の獲物だと勘違いをし、縄張りに入った見せしめに波瑠を狙ったのだ。


(うっかりでしたわ。もっと気を引き締めるべきでした。(わたくし)としたことが)


 匂いにくらみ、倒れていく波瑠を受け止めようと真夜は腕を伸ばした。そんな真夜の影からラファが現れ、代わりに受け止める。


「真夜、どうしました?あなたの鼓動が乱れているので馳せ参じましたが」


 黒いマントに身体を包み隠すラファは、波瑠を受け止めると同時にマントを脱ぎ、波瑠を包んだ。マントを脱ぎ捨てたラファの下は、金髪が目立つが普通に白いワシャツにジーンズとスニーカーである。胸元には、ロザリオが光る。


「ラファ、あの男が元凶でした。私としたことが、うっかりでしたわ」


 真夜は男性職員をチラッと窺う。

 波瑠は、ラファの腕の中でゆっくりと呼吸をし、眠っている。頬はピンク色に浮かせ、気分を高揚さしていることは一目で見て分かり、ラファいわくジャスミンの薫りによったとのことだった。


「完全に毒気に当てられてます。とにかく家に帰しましょう。真夜」

「そうですわね」


 ラファは、真夜の行動をいつもきちんと把握しており、男性職員を見逃すことは無かった。


「あちらですか」


 ラファがそう言うと男性職員を見つめた。


 職員が、ラファの視線に気付き振り返るが、見た先には、三人の姿はなかった。


「チッ」


 職員は舌打ちをするが、その顔には笑みが浮かんでいた。


 離れた場所で男の様子を覗う二人がいる。

 波瑠の表情は、落ち着いてはいるが、やはり心配で気が抜けない。真夜は、ラファの腕の中で気を失っている波瑠の額を撫で、前髪をかき分けている。


「大丈夫です。一晩寝れば明日には普通にしているでしょう。ただ、暗示が発動されるのか、それともそのまま捨て置くのか、出方が分からないので何とも言えませんが・・・・・・」

「そう、そうですか」


 手を止めずに波瑠の髪を撫で、落ち込む真夜がいた。その様子をラファが見つめ、少し哀しそうにほほ笑んでいる。

 三人を隠すように、陽が陰り、辺りの樹木がゆっくりと動いている。木の葉の影はまるで、波瑠を癒すかのように静かに揺れているが……

 安堵していた二人は波瑠を連れ帰ろうとするとさらに強烈な血の臭いが風に乗り二人に届けられた。


「────!」

「行ってはなりません。挑発です」


 飛び出す真夜の腕をラファは止めると波瑠を覗く。ラファと真夜の瞳は真紅に染まり、男のいる方向を睨んだ。


「あの男の処罰は今なさいますか? 一旦引きます?」

「……──」


 真夜は考えたあとに、波瑠を悲しげに見て項垂れた。


(今の……自暴自棄になりけている──自分が行けば……そうですわ。ラファの考え通り負けるだけですわ)


「引きます。波瑠が心配ですもの」


 ラファが立ち上がると地面に何かが落ちる音が届く。女生徒が地面に落ちる音を男はわざとラファ達に聞こえるように立てていた。

 男の表情は無情にも笑っている。


 男が少女を見下ろしているときには、ラファ達の影は学園内にはなかった。


 


 

 

 

 お疲れ様です。

すみません。本当は分けたかったのですが、なんか設定が変わっていて不安で……文字数多くなりました。

ごめんなさい。

読んでいただきありがとうございます。


 まだまだ、自分は勉強が必要です。こんな自分にお付き合いください。

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