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真紅夜綺譚  作者: 珀武真由
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第二話 咎人 震える二人の少女

 おはようございます。第二話を載せました。まだどきどきしております。多分このドキドキは止むことはないのでしょう。お恥ずかしいです。


 注意:少し性的表現に障る描写があります。

    


  

 月明かりの綺麗な夜、先程のマリア像が照らされている。ここは真夜と波瑠が放課後、訪れた教会である。


 マリアの前で重なり、抱き合う二つの影が、月の光りに照らされ荒い吐息に交じり口から見える白い突起物が、妖しく反射している。

 二人が着ているセーラー服は、学園の制服で、衿元のトップスは乱れていた。

 月明かりは、二人の首筋と鎖骨を綺麗に白く浮かす。

 二つの吐息は(うめ)きと、肌を吸い取り舐めるようなジュルチュルという音を礼拝堂に木霊(こだま)させていた。

 

「あら、本当に咎人がいましたわ。しかも、可愛い女の子二人ですって。」


 学園を出たはずの真夜とラファが、二人して礼拝堂の天井の梁に腰を掛けている。


 二人に帰る家は無く、気に入った場所を住み家としている。


 ある人物を探す為、場所を転々としている二人は、余程のことがない限り、一つ所には長居をしないからだ。


 今は、礼拝堂に居る。


 礼拝堂の天井の梁に、腰掛けるラファの膝を借り、枕として寝そべる真夜がいる。真夜は床を見下ろしている。

 二人の視線の先には、互いの首を噛み、舐め合う女生徒がいた。


 見る姿は、吸血鬼に視えてもおかしくはないと言うか吸血鬼そのものである。


 真夜の学年の服襟元は赤なのだが、その子達の色は……


「あら、色が青いわ。一学年下の子達ですわ」


 女生徒達も、天井に居る者の気配に気付き、ぼそぼそと聞こえている方へと目線を上げた

 見上げた先には、人影が黒く蠢いている。


 影は、真夜とラファである。


 天井の、梁しかないはずの所に人影があり、妖しく光るモノが四つもある。光る四つのモノは真夜とラファの瞳の数だ。

 思いもかけない光景に、女生徒は驚き(おのの)くが、すぐ冷静さを取り戻し、天井にいる者に問いかける。


「お前達は誰?」

「でっ、出て来なさいよ。そこにいる人」


 女生徒の言葉に応え、床にゆっくりと足を着ける真夜がいた。

 黒くランジェリーに似た薄い服を纏っているせいか、白い肌は妖艶に曝け出される。

 隣のラファに寄り掛かり、真夜は半目で二人を見た後、顔を赤らめる。


「様子を見るからに、互い同士で飢えを(しの)いでいる感じかしら。人に危害を喰わえてないなら良しですわ。ただ、や……ヤッ………」


 二人を見て、吐かれる言葉は少し途切れると恥ずかしそうに答えた。


「端から見てると、いやらしいですわ」


 二人を見るその、真夜の瞳は昼間とは違い冷たく、紅い硝子のように光を帯びている。


  ー真夜ー 

 彼女もまた吸血鬼である。


 訳あって、この地に立ち寄った彼女の前に、非力で矮小な吸血鬼が二人いる。

 成り立てで、互いを咬み合い、飢えを凌ぐ吸血鬼。消せば良いだけの話しなのだが、何か思うところでもあるのか二人を観察している。

 真夜を見て、互いに震え、手を取り、小刻みに寄り添う女生徒は、獅子に睨まれた小鹿のように震えていた。


「で、あなた達をこのような姿にした元凶はどこです?」


 真夜から語られる口調は、冷ややかで、二人はますます震え上がり、そしてスカートの下から水が流れていた。二人は怖さの余り、漏らしてしまったのである。


 それ程に、真夜の存在は二人にとって畏怖だったのだ。


「そんなつもりは・・・・・・」


 両腕を広げ、女生徒二人の顎に手を添えると静かな口調で言い洩らす。


 考えが定まったらしい。


「あなた達二人は、この姿になってまだ日が浅い。さぁ、咬まれた首をお出しなさい」


 震えながらも、二人は言われるままに首筋を差し出した。

 細く白い首筋には、小さい穴が二つ開いており、それを確認すると一人ずつ順にその穴の上に重なるようにそっと真夜が咬みつく。

 真夜が血を吸い終えると、少女達はは恍惚の笑みを溢した。


 少女の顔が満足に蕩けていると咬まれた穴からは、黒い血が止め()なく溢れている。

 暫くすると、二人は苦しみ項垂れ始めた。

 真夜は二人の眼前に手のひらを差し出す。


「さぁ、咬みつき、血をお吸いなさい」


 恐る恐る、真夜の見つめる二人の目には先程とは違い、優しくほほ笑む真夜がいた。

 安心したのか、言われるがままに力強く、飢えを満たすように咬みつく二人がいる。


 満足し終えると、二人は嘔吐(えず)き、血を吐き悶え出した。毒を与えられたみたいに鬼の形相で真夜を見つめる。


(可哀想に、“飢え”をずぅと我慢していたのですね。その苦しみは今、終わりますわ)


「大丈夫。あなた達に巣くう吸血の毒を吸い出しました。今吐いたのはその残りです」


 軽く二人を抱きしめると、背中を優しく叩きほほ笑んでいる。優しく、されたことに安心したのか、二人は身体を真夜に預け眠り始めた。


「目が覚めれば、もう血に飢えを感じることはないでしょう」


 真夜は、すやすやと眠る二人を見つめ暗示をかける。


「絶対元凶に、絶対、近づかないことですわ。何もしなければそのまま人に。そのまま、戻れますわ」


 優しい暗示、を聞きながら瞼が閉じ眠りに落ちて行く少女達。真夜は見届けると、少し力を入れて二人を抱きしめた。


 吸血鬼の彼女だが、吸血鬼らしからぬ所がある。それは吸血鬼化した人間を戻せる能力があることだ。


「ごめんなさい。こんな姿になるまで咬まれたなんて。さぞ苦しかったでしょう」


 真夜が見届けた後、ラファが女生徒二人を預かり、首筋に手を当て何かを調べている。


「この子達二人を、このような姿にした元凶は我々の探している人物、『破壊者』とはまた別の者のようです」

「そう、ですか。違いますか」


 仕事をやり終えた真夜が青ざめ倒れていく。

 横で見ていたラファが抱きかかえると、真夜の顔は蒼白く、息もか細くなっていた。


「お疲れさま。真夜、私の………」


 一言、ラファは真夜を労うと真夜の顔を首近くまで抱き上げ自分の首筋を差し出す。

 真夜は、ラファの首筋が目に入ると唇を近づけ静かに咬み喉を動かしている。習慣付けられている日常の一部のように………。


「ありがとう。大丈夫ですわ」


 吸い終えると、ラファに身体を預け少し休み力強く話す。


「二人を帰さないとですわ。帰す前に覚えておきましょう。咬み痕から薫る匂いを、牙の感覚を。標的は、違えど元凶には変わらないのですから」


 真夜とラファの鼻腔は微かにジャスミンの薫りを捕らえた。

 

 真夜達、吸血鬼(ヴァンプ)には個体を示す匂い、薫りがある。普段はあまりしないが吸血の行為、なにかしらを主張するときにそれは放たれる。咬まれた吸血鬼(ヴァンプ)は、咬まれた主体(あるじ)と同じ個体の薫りを持つ。

 

 今回の吸血鬼はジャスミンの薫りが漂う相手だ。それを追って元凶を探し出す。


(確かに吸血鬼に取って人間は餌かもしれないが別に必要以上に食す必要もない。生きる分だけを、分けて貰えば良いだけのことですわ)


 吸血鬼(ヴァンプ)にも吸血を行う経緯が三つある。


 『前』同属を欲っし吸血鬼化さす。

 『中』助けたい者に命を与える。

 『後』(もてあそ)び飢えを満たし極限ま 

    で吸う。


 前、中、後の三者があり、最後だと『野良の吸血鬼』が仕上がってしまう。


 今回は、後者の吸血鬼が発端であり元凶だ。


 真夜達は、無闇に出来上がっていく野良の粛清をしている。時には消したり、時には救い上げたりと─────。


(私は人間が好きだ。野良を増やすことは人界との均衡を崩すことになる。それだけは避けたい)


 二人は、無闇に野良を増やす輩を粛清する。

 

 そして、あともう一つ……─────。

 今回の吸血鬼は、真夜達が探し続けている人物ではなかったらしい。


 真夜達が探す吸血鬼は『破壊者』と呼ばれ、同族達にも恐れられている。その名の如く、全てを奪い、壊し自分の好き放題を繰り返す残虐非道極まりない悪鬼の吸血鬼だ。


 この街に『破壊者』がいると噂を聞き寄ったのだが外れだったらしい。


(だが、別の用事が出来た)


 今回の、吸血鬼を片付けてからでも別に支障はないし、もしかするとここに、私がいることを嗅ぎつけて向こうから現れるかも知れない。


 (わたくし)が探している『破壊者』は、私の大事なモノを持ち歩いているのだから。

  

       

 お読みいただきありがとうございます。

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