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連戦連勝

本日2回目の更新です。

……………………


 ──連戦連勝



 レヴィアの魔法が吹き荒れている中に久隆が突撃する。


 ゴブリン弓兵は矢を放とうと弓に矢を番えるが、彼らの放った矢は嵐によって明後日の方向に飛んでいく。その虚しさにも気づかず、ゴブリンたちは必死に矢を番えては放ち続ける。だが、その全てが無意味だ。


「レヴィア! 止めていいぞ!」


 久隆はそう叫び、魔法が止まったと同時にゴブリンの首を叩き切った。ゴブリンの頭が転がり、他のゴブリンたちがパニックを起こす。


 そして、戦場でのパニックは概ね死を招く。


 それは一方的な虐殺であった。


 弓しか装備しておらず、近接戦に対応する装備を持っていなかったゴブリンたちは久隆の手によって次々に屠られた。頭が叩き割られ、首を刎ね飛ばされ、腎臓を抉られ、ゴブリンたちは瞬く間に死に絶えた。


「ゴブリンの弓兵はどうにかなりそうだ。そのうち、オーガやオークが弓を持ち出さない限りは、だが……」


 あの馬鹿でかい棍棒やハルバードを振り回すオーガがその体型に似合った弓矢を使ってきたら、さすがのレヴィアの嵐でも対応不可能だろう。防刃チョッキでも防げるかどうか怪しい。やはり必要なのは防弾チョッキか? と久隆は思う。


 NIJ規格IIIの防弾チョッキなら7.62x51ミリNATO弾という大口径弾にも耐えられるが、問題は通販でそこまでの品を扱っているかだ。扱っているならば、購入する。恐らくは旧式のケブラー繊維と複合金属プレートによる重量のあるものだろうが、今の久隆ならばそれを装備していても大丈夫だという自信があった。


「さて、騒ぎを聞きつけてお客さんたちがやってきたぞ。フルフル! 付呪を頼む! ここで団体さんを仕留める! 相手は鎧オーガが混じっている!」


「わ、分かりましたー! やりますよ! 『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士に力を!』」


 久隆の身体能力が付呪によってブーストされる。


 しかし、どういう仕組みだろうかと久隆は内心で首を傾げる。


 久隆の四肢はパラアスリート用の人工筋肉を使用した義肢だ。琵琶湖で繁殖させてある遺伝子操作された海洋哺乳類のキメラから取り出され、加工された人工筋肉が使用されている。この手の人工筋肉技術は2020年代から急速に発展した。


 当然ながらそれは久隆の体の一部であって、久隆の体の一部ではない。あくまで義肢だ。脳に叩き込んだナノマシンがオペレーティングシステムとなって、人工筋肉は思うがままに制御されているが、いくら筋トレをしようと、何をしようと、人工筋肉が勝手に出力を上げるようなことはない。


 だが、フルフルの付呪は明らかに久隆の人工筋肉の出力を上げている。体が軽いのだ。反応速度も向上しているし、人工筋肉が繰り出す攻撃の威力も上がっている。


 これは一回は精密検査を受けた方がよさそうだと久隆は思った。人工筋肉が強引に出力を上げさせられているとすれば、劣化する速度も早くなるはずだ。放っておいて人工筋肉が断裂してから対応しようとしても遅い。


 そうこう考えている間に鎧オーガが7体と鎧オーク10体が突撃してくる。だが、幸いにもその戦力を纏めて相手にする必要はない。この階層のオーガとオークたちの武器は短剣であり、リーチは斧より僅かに長いくらいだ。


 先頭から1体ずつ確実に潰していく。


 オークを前衛に進んでくる魔物の群れを相手に久隆が身構える。


「レヴィア!」


「『降り注げ、氷の槍!』」


 突撃してくる魔物たちの頭上からものすごい勢いで氷の槍が降り注ぐ。


 それはオークを貫き、数体は仕留め、数体は鎧を破壊し、オーガたちは足を止めた。


 そして、そのまま久隆が戦闘に突入する。


 2列5体のオークたちは鎧を纏っている。フルフルの魔力を温存するためにオークには付呪を使わないことになっている。よって頭と首が攻撃の目標となる。


 短剣を握るオークの手を切り落とし、首を刎ねる。頭を潰す。頭を横に叩き割る。


 時に短剣を手首ごと切り落として奪い、他のオークの顔面に向けて投擲する。今の身体能力がブーストされた久隆の放つ投擲はオークの顔面に易々とナイフを突き立て、その命か戦闘能力のいずれかを奪った。


「流石なの! そのまま畳んでしまうの! 『吹き荒れろ、氷の嵐!』」


「ひえええっ! 人間の動きじゃない! で、でも、やらなくては! 『我が敵の守りを蝕み、錆びつかせよ!』」


 鎧オーガの顔面が氷によって削られ、さらにそこに防具劣化の付呪が行使される。


 しかし、鎧オーガは全部で7体。軽くいなせる数ではない。


 ただし、縦に大きければ、横にも大きい鎧オーガたちはまとまっては襲い掛かれない。波状攻撃だ。1体、1体を確実に潰し、1体を撃破して次の1体に移る瞬間に隙さえ生じさせなければ、何の問題もなく撃破できるはずだ。


 少なくとも久隆はそう確信している。


 まして、今の鎧オーガたちは顔面にレヴィアの魔法を受けて混乱している。畳みかけるなら今をおいて他ない。


 まずはオーガの腎臓に向けて一撃。これで1体目は撃破。


 続いて混乱から立ち直りつつあるオーガに向けて跳躍し、首を刎ね飛ばす。


 後ろに倒れていくオーガの死体を蹴って3体目のオーガの頭を横から叩く。


 横に吹っ飛んだオーガの脇腹を蹴って、壁に向けて飛び、その上で壁を蹴って斜め上からオーガに襲い掛かる。このトリッキーな動きでオーガは久隆を見失っており、気づいたときには首を刎ね飛ばされていた。


 5体目ともなると既に混乱から立ち直っており、確実に久隆を狙ってくる。久隆は身を翻してオーガの短刀による刺突を回避すると、カウンターに顔面に軍用ナイフを投げつけた。軍用ナイフの刃は深々とオーガに刺さり、オーガが倒れる。


 そろそろ終わりの6体目。だが、油断はできない。6体目のオーガはまだ消えていない味方のオーガの死体を踏みつけると短剣を振り回して、久隆を狙ってくる。だが、その訓練されているとは言い難い動きを軽くいなした久隆は斧でオーガの頭を叩き割った。


 ラスト1体。オーガは怒り狂っている。味方を6体も殺されたことはさぞ気に入らないようだ。そこで久隆は怒りに任せて短刀を確実に久隆に向けてくるオーガから下がり、地面に転がっていた金貨をオーガに投げつけた。


 先ほどの攻撃を見ていたオーガが身を守ろうと攻撃を止めた瞬間、久隆がオーガの眼前にいた。久隆はオーガの首に斧を突き立て、そのまま刎ね飛ばす。


 7体のオーガはこうして全滅した。


「片付いたな。他に敵の気配はしない」


「やったの! 久隆に任せておけばどうにかなるの!」


「おいおい。俺だけじゃ無理だぞ。レヴィアやフルフルの支援がなければ」


 フルフルの付呪の効果は絶大。レヴィアの魔法も威力を着実に向上させている。


 このふたりなくしては久隆はダンジョンを攻略するなど不可能だろう。


「さて、いよいよ9階層だ」


……………………

本日の更新はこれで終了です。


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新連載連載中です! 「人を殺さない帝国最強の暗殺者 ~転生暗殺者は誰も死なせず世直ししたい!~」 応援よろしくおねがいします!
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[一言] 心臓のつもりなのか腎臓えぐったり貫いたりしてます
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