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91階層

……………………


 ──91階層



 久隆たちは91階層に続く階段の前に集まる。


「いよいよ91階層以降に挑む。準備はいいか?」


 久隆が確認を取る。


「大丈夫です」


「いつでも行けるの!」


 フルフルたちがそう告げて返す


「91階層以降は状況がまるで変わるそうだ。全員、しっかりと警戒しながら進まなければならない。全員、周辺の様子には細心の注意を払え」


 91階層では植物すらも敵に回る。周辺環境に注意を払うことが必要とされる。


「では、行くぞ。いざ」


 久隆は階段を降りていく。


 91階層に降りるなり、久隆は偵察を行う。


「リザードマン4体、リザードマンより体重が軽いものが3体」


「それが人狼ですね」


 久隆の索敵にマルコシアがそう助言する。


「人狼がどのようなものは拝見するとするか。だが、その前に偵察だ。危険な植物なども調査しておきたい」


 久隆はそう告げて無人地上車両(UGV)を展開する。


 久隆はイポスから預かった本を抱えて、調査を進める。


「これは危険のない植物だな。こっちは食人植物か。それからこっちは混乱草」


 91階層はトラップのように有害な植物が生息している。


「よし。次は重装リザードマンと人狼についてだ」


 久隆は無人地上車両(UGV)をさらに走らせる。


 無人地上車両(UGV)が送ってきた映像には長剣を構えた重装リザードマンが映し出されていた。数は4体。重装備ではあるが、やはり首はお留守だ。


 それから人狼を追う。


 無人地上車両(UGV)は人狼をカメラに収めた。


「こいつが人狼か」


 人狼はマルコシアの説明した通りの姿をしていた。オオカミの頭部、肥大した腕、鋭い爪の並ぶ手。それが素早く動き回っている。


「確認はできた。リザードマンは冷気に弱く、人狼は炎を恐れるという。役割分担をしよう。俺たちはまずは重装リザードマンを相手にする。重装リザードマンを相手にしているときに背後から人狼に襲われないようにマルコシアとフォルネウスは後方に警戒」


「了解」


 幸いにして人狼は炎を恐れるという。ならばその習性を利用しようと久隆は考えた。


 マルコシアの魔法も、フォルネウスの魔法剣も炎を発生させる。それで人狼は抑えられるはずだ。最悪のケースである重装リザードマンを相手にしている間に、背後から人狼に襲われるという事態は避けられるはずだ。


「レヴィア、フルフル、サクラ。俺たちは先に重装リザードマンを叩く。油断はするな。人狼が必ずしも背後から突っ込んでくるとは限らない」


「了解なの」


 レヴィアたちは頷く。


「では、始めよう」


 久隆たちは静かに重装リザードマンに迫る。


「目標視認」


 久隆たちは重装リザードマンを捉えた。


「では、やるぞ。3カウント」


 3──2──1──。


「今だ」


「『我が敵の守りを蝕み、錆びつかせよ!』」


「『降り注げ、氷の槍!』」


 フルフルとレヴィアの第一撃が重装リザードマンに叩き込まれる。


 だが、流石は重装リザードマンというべきか。攻撃を受けつつも死んだものはいない。彼らは雄叫びを上げて、久隆たちに突撃してくる。


 それと同時に素早い足音が後方から迫る。


「マルコシア、フォルネウス! 警戒しろ! 来るぞ!」


「了解!」


 久隆はそう警告し、目の前の重装リザードマンの相手をする。


 重装リザードマンを斧で首を刎ね、頭を叩き潰し、もう一度首を刎ねて殲滅する。


 久隆の攻撃は素早いものだったが、人狼の方も素早かった。


 もう彼らは久隆たちの背後に出現し、マルコシアとフォルネウスが炎で牽制している。人狼は炎で近寄れず、唸り声を響かせている。


「フォルネウス。接近戦はできそうか?」


「人狼相手にですか? ええ。やってみせましょう」


「上等だ」


 久隆はフォルネウスの返事を聞くと斧を構えた。


「『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士に力を!』」


 その背後でフルフルが久隆たちに付呪をかける。


「気を付けてください。人狼は接近戦最強格です」


「分かった。助かる、フルフル」


 久隆たちは斧と短剣を構える。


「いくぞ、フォルネウス」


「はい!」


 そして、久隆たちが斬り込む。


 久隆たちは人狼の鋭い爪に用心し、確実に相手の命を奪える位置を狙う。すなわち、首と頭部と心臓。


 だが、人狼はそのことに気づいていた。


 人狼は鋭い軍用ナイフが並んだような手でフォルネウスの攻撃を弾いた。


 久隆の方も人狼は攻撃を弾こうとした。だが、そうはいかなかった。


 フルフルの付呪が込められ、十数トンの巨体を動かすアーマードスーツの人工筋肉に匹敵する筋力を有する久隆の一撃は、人狼の爪を弾き飛ばし、その首を刎ね飛ばした。


 人狼たちは狼狽え、一瞬の隙が生まれた。


 もうその隙を逃すフォルネウスではない。


 フォルネウスは隙を突いて、人狼の心臓に短剣を突き立てる。


 2体の人狼が撃破され、残り1体となる。


 残された人狼は狂ったように爪を振り回し、そのまま久隆めがけて突撃してくる。


「畜生」


 こうも相手が素早いとフルフルの付呪を受けていても反射神経が追いつかない。


 久隆は慎重に踏み込み、人狼の爪を弾くように斧を振るう。


 人狼の片腕の爪は弾き飛ばされたが、もう一方が久隆を襲おうとする。


 久隆は寸でのところで、ケリを叩き込み、攻撃を阻止する。


「終わりだ」


 そして、久隆は斧を人狼の頭に突き立てた。


 人狼は力を失い、金貨と宝石を残して消えた。


「寿命が縮まるな……」


 久隆は額に浮かんだ汗を拭う。


「久隆! やったのね!」


「かなり際どかったがな」


「そうなの。人狼はとても危険なの。けど……モンスターハウスがあるのよね?」


「あるな」


「ど、どうするの?」


 レヴィアが混乱した様子でそう尋ねる。


「フルフル。負荷になると思うが相手の速度低下の付呪も頼めるか?」


「分かりました。しかし、リザードマンが混じっているのが面倒ですね……」


 フルフルが頷きつつもそう告げる。


「ああ。面倒だ。防御のリザードマン。速度の人狼。両方混ぜているのにダンジョンの悪意というものを感じるな」


 フルフルはリザードマンの防御を崩さなければならず、かつ人狼の速度も低下させなければならない。ついで、人狼に押し負けないようにするために久隆たちに付呪をかけるのも忘れてはならない。


 やることが多すぎて、フルフルの魔力が誰もが心配になっていた。


「頼むぞ、フルフル」


「分かりました。可能な限り、援護します」


 久隆とフルフルはそう言葉を交わした。


……………………

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