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55階層威力偵察

……………………


 ──55階層威力偵察



 55階層に続く階段の前。


「久隆、久隆。どんな風に偵察するの?」


 威力偵察と聞いて、レヴィアが疑問に感じる。


「ちょっとだけ戦ってみるだけだ。さっと交戦して相手の出方を見てから、すぐに引き上げる。なるべくなら階段からあまり離れていない廊下がいい。そこでオークロードとオークシャーマンの動きを見て、今後の計画を立てる」


 今現在重装ミノタウロスとオークロード、オークシャーマンが一緒に存在する階層を攻略した経験はない。戦闘計画を立てようにも相手のことが分からないのだから、計画の立てようがないのである。


 ある程度、敵の動きと脅威を把握し、戦闘計画を立てれるようになってから本格的な攻略に挑む。今度来る時はウァレフォルの部隊も一緒だ。


「一応の作戦だ。重装ミノタウロスより先にオークロード、オークシャーマンを潰す。特にオークシャーマンは魔法を放たせずに潰す。重装オークもいるかもしれないが、それよりも重装ミノタウロスを優先」


「了解です」


 サクラたちが頷く。


「前線を支える俺とフォルネウスは区別なく、後方に迫る魔物を排除する。フルフル、戦闘が始まる直前に付呪を頼む。それから万が一オークシャーマンが魔法を放った場合も対応を頼みたい。できるか?」


「ええ。やれます」


 フルフルが頷く。


「ではいくぞ。55階層だ」


 久隆たちは慎重に階段を降りていく。


「重装ミノタウロス5体、オーク10体。オークの内、1体は他とは重量がやや重い。オーガほどではなく、オークよりも大きい」


「それがオークロードなのね」


「なるほど。これがオークロードの反応か」


 久隆はしっかりと今の感触を記録した。


「重装ミノタウロスは数が少ないが、オークの数が多い。やはり優先して倒すべきはオークロードからか」


 久隆はそう呟きながら、バックパックから無人地上車両(UGV)を取り出して、走行させる。狙いはオークロードの反応がした方向である。


「見えた。重装オーク8体、装備が異なるもの2体。体に入れ墨を入れて、杖を持っているのはオークシャーマンだろう。オークロードと思われるものは他のオークよりもデカい。オーガ未満だがそれなりのサイズだ。防御もしっかりとしている」


 久隆の放った無人地上車両(UGV)がオークたちの映像を送ってくる。


「とりあえず、正面から戦ったらどうなるかを試してみよう。いいか。これは偵察だ。不味いと思ったらすぐに逃げるぞ。逃げるタイミングの指示は出す。それに従ってくれ。では、始めようか」


 久隆はそう告げて無人地上車両(UGV)を回収する。


「叫べ! 連中をここに呼び寄せろ!」


「こっち来いなのー!」


 久隆たちの声に反応してダンジョン中の魔物たちが一斉に動き始める。


「来るぞ。フルフルは付呪の準備。レヴィアとマルコシアはいつでもぶっぱなてるようにしておけ。前線は俺とフォルネウスで支える」


「分かりました」


 魔物の足音が近づくのに、久隆たちが備える。


「来た! フルフル!」


「『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士に力を!』」


 重装オークの群れが突撃してくるのに対して、フルフルが付呪をかける。


「レヴィア、マルコシア! 叩き込め!」


 そして、次はレヴィアたちに命令が飛ぶ。


「任せろなの! 『吹き荒れろ、氷の嵐!』」


「いきます! 『爆散せよ、炎の花!』」


 氷の嵐が重装オークたちの剥き出しの顔面を襲って混乱に陥れ、結界に封じ込められた爆発が確実に重装オークを仕留める。


「素早さが上がっているな。オークロードの影響か?」


「そうでしょう」


「では、こちらから歓迎してやろう」


 久隆たちは迫りくる重装オークたちに向けて突撃した。


 重装オークの動きは早い。武器である長剣を盾にして久隆の攻撃を受け止める。だが、想定外だったのは久隆の斧の一撃で長剣が叩き折られてしまったことだ。


 斧を叩き折った勢いのまま久隆の斧が重装オークの頭に振り下ろされ、重装オークの頭が叩き割られる。


「フォルネウス! 行けるか!?」


「かなりきついです! 明らかにこれまでに交戦した重装オークとはことなります!」


 パワーとスピードの面で重装オークたちは強化されていた。


「オークロードがさっさと姿を見せてくれればいいんだが……」


 久隆がそう呟いたとき、他のオークよりも明らかに飾り付けられた鎧と兜を被ったオークが姿を見せた。オークロードだ。


「サクラ!」


「はい!」


 重装オークたちの合間を縫ってサクラのコンパウンドボウから放たれた矢がオークロードの顔面を貫く。それでもなお起きているオークロードに向けてサクラが次の攻撃を仕掛ける。2本目の矢はオークロードに致命傷を与えたようで、オークロードが虚しく倒れる。それと同時に重装オークたちの動きが鈍くなった。


「よし。いいぞ。このまま……」


 久隆は重装オークたちを切り倒していくと、次は全身を入れ墨で覆い、杖を持ったオークが飛び出してきた。オークシャーマンだ。


 サクラの攻撃は間に合わず、オークシャーマンは炎を放った。


「『そのものに魔法使いの加護を、その身を悪意ある魔の力から守りたまえ!』」


 生き残りの重装オークたちを巻き込んだ炎の嵐は途中で消えた。


友軍誤射(ブルー・オン・ブルー)か。笑えない知性だな」


 久隆は辛うじて生き残っている重装オークたちをなぎ倒していく。


 次の魔法攻撃が来ないまま、サクラが矢でオークシャーマンを仕留めた。


 今度は一撃。眼球から入った矢がオークシャーマンを絶命させる。


「重装ミノタウロスが来る。そろそろ引き上げだ」


「全部倒してしまえばいいの!」


「ウァレフォルの部隊とも合同で作戦を実行したい。そうはいかない」


 久隆はそう告げて重装ミノタウロスが戦場に突撃してくる前に54階層に引き上げた。


 重装ミノタウロスは暫しの間、久隆たちを追跡しようとしたが、彼らが階段を上り始めると動きを止めるのが分かった。


「分かった点がいくつか」


 54階層に戻った久隆が告げる。


「重装オークはオークロードの影響を受けている。あれが存在すると重装オークは重装ミノタウロスレベルの脅威になる。だが、オークロードを仕留めれば、ただの重装オークだ。油断はしてはならないが、今になって脅威になる相手ではない。対処法は確立されている。これがひとつ」


 久隆が続ける。


「オークシャーマンの魔法はゴブリンシャーマンよりも強力に見えた。だが、連射は効かないらしい。少なくとも2、3分は次の攻撃が来ない。フルフルの付呪で初撃を防げば、後はサクラがどうにかできるだろう。マルコシアでもいいが」


 久隆はそう告げて、全員を見渡した。


「今回はオークたちと戦っているときに重装ミノタウロスが乱入してこなかった。だが、もし、乱入された場合でも落ち着いて対処しろ。重装オークはオークロードが倒されていれば脅威ではない。早急に殲滅して重装ミノタウロスの相手をする。それだけだ」


「了解なのね」


 レヴィアがコクコクと頷いた。


「では、50階層に戻ろう。次はウァレフォルの部隊と合同で攻略を実行する」


……………………

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