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アラクネクイーン戦

……………………


 ──アラクネクイーン戦



 準備は整った。


 久隆、レヴィア、フルフル、マルコシア、フォルネウス、サクラは万全の体制だ。


 他の魔族たちの準備も整っている。蜘蛛の巣除去スプレーを持ち、仲間たちを指定されたフロアから回収する準備を整えている。


 明かりの準備もサクラが発炎筒付きの矢を用意したことでばっちりだ。


「では、始めるとするか。ドローンの準備は完璧だ。サクラ、ドローンが展開したら、すぐに矢を叩き込んでくれ。そうしたら救出開始だ。1分も無駄にはできない。スムーズに頼むぞ。俺も万全を尽くす」


「了解です」


 サクラが頷き、50階層にゆっくりと降りていく。


「サクラ。今からドローンを放つ。自動操縦だ。目標が反応したら作戦開始」


『了解』


「カメラの映像が来た。飛行中のドローンは現在2機。網にかかり次第、知らせる」


 2機のドローンが50階層内を飛行している。


 2機のカメラに装着されたカメラは暗視装置など付いていない安物なので、内部の様子はよく見えない。ただ、暗闇の中にぼんやりとアラクネクイーンのシルエットが見えている。アラクネクイーンの張った糸は見えない。


 久隆は注意深くカメラの映像を見守る。


 1機、何かに引っかかったように飛行不能になった。


 カメラに映っていた黒いシルエットが大きく動く。


「サクラ。獲物が反応した。かかれ」


『了解』


 サクラが行動に移る。


 発炎筒が点火されるのが無事な方のドローンのカメラに映り、それが真っすぐ黒いシルエットを貫いた。そしてアラクネクイーンの醜い姿が映し出される。巨大な蜘蛛。それも女郎蜘蛛のように手足が長い。


「こいつがアラクネクイーンか。サクラ、離脱しろ。ドローンでの攪乱を続ける」


『了解』


 久隆はここで一気に3機のドローンを投入した。


「救出作業開始! 15分が限度だ! 急げ!」


「応っ!」


 アガレスの配下にある近衛騎士たちが一斉に50階層に突入する。


 彼らは蜘蛛の巣除去スプレーを糸にくるまれた味方にかけ、壁から引きはがす。蜘蛛の巣除去スプレーはアラクネクイーンの糸にも効果があったようで、味方が次々に運び出される。久隆は作業の様子を自動操縦ではなく自分で操縦し、カメラ暗視装置を付けたドローンで監視していた。


「よく反応する蜘蛛だ。風が吹いただけでも反応するな。それでいて、反応したことを次の刺激ですぐに忘れる。これは丁度いい攪乱工作だ」


 アラクネクイーンはその巨大な図体を右往左往させていた。


 その間にひとり、またひとりと魔族が救出されて行く。


「残り5分。後何人だ?」


「5人です」


「急げ。一フロアの魔族は全て救出しきったか?」


「できました。戦闘可能です」


「じゃあ、行くとするか」


 どう考えても5分で5人は救助できない。


 ここは仕方ないが、既にクリアになったフロアでアラクネクイーンと一戦交えるより他ないだろう。


「レヴィア、フルフル、マルコシア、フォルネウス、サクラ。いよいよ出番だ。救出のための時間を稼ぐ。この戦いは相手のフィールドで戦うことになる。我々は不利だ。だが、それでもやらなければならない。魔族全員が救出されるまで、俺たちで時間を稼ぐ」


「了解なの!」


 レヴィアたち全員が頷く。


「では、行くぞ。女王様とご対面だ」


 久隆たちは救出活動が行われている50階層に降りていく。


 ドローンの多くは既に捕獲され、糸でぐるぐる巻きにされている。残ったドローンをアラクネクイーンが追い回しているが、既に8機中7機がやられている。これでは時間稼ぎは不可能だ。やはり、久隆たちが戦うより他ない。


「フルフル。付呪を。重ね掛けでなくともいい。レヴィアたちにも頼む」


「了解。『賢きものよ、より多くの叡智を極め、力を得よ。賢者に力を』『このものに戦神の加護を。力を与えたまえ。戦士に力を』」


 フルフルが詠唱し、久隆たちに力がみなぎる。


「よし。まずはレヴィアとマルコシアが攪乱。サクラは発炎筒付きの矢で相手を照らし出すこと。それからはアラクネをとにかく狙って蜂の巣にしてやれ。俺とフォルネウスはアラクネの頭部を狙う。いいな?」


「了解」


「始めるぞ」


 久隆たちはアラクネクイーンが最後のドローンを捕らえたフロアに飛び込む。予定通り、魔族が既に救出されたフロアだ。


「レヴィア、マルコシア! 叩き込め!」


「了解なの! 『凍てつけ空気、全てを凍らせよ!』」


 レヴィアが放った魔法はこれまでのものとは異なっていた。


 フロア全体の温度が低下すると同時に、アラクネクイーンの体に霜が付き、凍てついていく。アラクネクイーンの動きが鈍り、足先は凍り付き始めている。


「結構魔力を消費するのね……!」


「よくやった。レヴィア。だが、無理はするな」


「任せろなの」


 続いてマルコシアが魔法を撃ち込む。


「『爆散せよ、炎の花!』」


 爆発がアラクネクイーンの体を揺さぶり、その巨体が揺れる。


「サクラ!」


「はい!」


 続いてサクラが発炎筒付きの矢をアラクネクイーンに叩き込む。


 黒いシルエットから具体的な姿が再び露になる。


「いいぞ。いくぞ、フォルネウス!」


「はい、久隆様!」


 久隆とフォルネウスはアラクネクイーンの頭を狙って突撃していく。


 アラクネクイーンはレヴィアとマルコシアの魔法を受けてもなおも俊敏だ。その巨体からは考えられない速度で移動し、久隆たちに向けて糸を吐いてくる。


 久隆たちはそれを躱しながら、確実にアラクネクイーンの頭部を狙う。


 だが、アラクネクイーンは実際の蜘蛛がそうであるように壁を這いまわって天井に回り込み、久隆たちを寄せ付けようとしない。


「マルコシア! 叩き落とせ!」


「分かりました! 『爆散せよ、炎の花!』」


 マルコシアの魔法で強制的にアラクネクイーンが地上に叩き落とされる。


「くたばれ」


 久隆はそう呟き、アラクネクイーンの頭部めがけて斧を振り下ろす。


 斧はアラクネクイーンの頭に食い込んだが、致命傷にはならなかった。続くフォルネウスの攻撃は糸によって牽制されて不発に終わった。


「あの野郎、随分と固いぞ」


「ええ。一筋縄ではいかなそうです」


 久隆の一撃で死ななかった魔物は珍しい。


「だが、このまま叩き続ければいずれはくたばる。それに救助作戦は今も進行中だ。全員が退避したら、派手にやるぞ」


「了解」


 5人の魔族が救助されたら知らせが届くことになっている。


 まだ救助作戦は進行中だ。


 とにかく今は時間を稼がなければ。


「『凍てつけ空気、全てを凍らせよ!』」


 再びレヴィアが魔法を炸裂させる。


 その冷たさを前にアラクネクイーンの動きがさらに低下し、体の各部位が凍り付いていく。フロア内は真冬のようになっている。


「『爆散せよ、炎の花!』」


 マルコシアも魔法を叩き込み続ける。


「どこが明確な弱点か分からないのは面倒ですね……」


 サクラは矢でアラクネクイーンを滅多刺しにしている。


 それでもアラクネクイーンは壁や天井を這いまわり、久隆たちを糸で狙って来る。


「救助完了! 救助完了です、久隆様!」


 階段の方から魔族の声がする。


「よし。諸君、これからが本番だ。派手にかましてやろう」


……………………

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