怪物への対処法
本日2回目の更新です。
……………………
──怪物への対処法
「こっちも仕留めました!」
「じゃあ、残りは騒ぎを聞きつけてやってきたジャイアントオーガ2体だな」
久隆はジャイアントオーガの迫ってくる方向に向かう。
ジャイアントオーガを屠るのはさして難しいことではなかった。いつも通りに頭を狙い、魔法で混乱しているものを始末する。それだけだ。相変わらずの超重戦車であるジャイアントオーガはダンジョンに慣れてきた久隆たちにとって的でしかなかった。
「さて、ミノタウロスについてだ」
久隆は早速新しい魔物について話題を出した。
「奴らは確かに魔法に弱い。この際、魔法だけで倒すというのもありかもしれないが、魔力回復ポーションにも限りがある。ある程度は自分たちで片付けなければならない。そして、魔法に弱いと言ってもゴブリンたちのように広範囲魔法攻撃でくたばってくれるほどやわではない」
久隆は今回の戦闘でそう評価した。
「それから連中の筋力は確かに脅威だ。ダンジョンの壁を破壊するとは伊達ではない。真正面から受けるのは愚策だろう。敵の攻撃は可能な限り回避し、魔術攻撃でできる限り弱らせてから、刈り取るのがいいだろうな」
しかしながら、と久隆は告げる。
「限りある魔力と、体力の続く限り続けられる肉弾で言えば、肉弾戦をメインに据えたい。魔力回復ポーションも兵站の負荷になる。数階層潜るならばいいが、10階層潜るのに今の調子以上で魔法を使い続けるのは負担だろう?」
「そうなのね……。残念だけどその通りなの。魔力回復ポーションと食料と水を全部抱えて行ったら、負担なのね。それに今の調子だとレヴィアたちだけで魔力回復ポーションを独占するわけにはいかないの。もっといっぱい植物を育てないと」
「そうか。地上に戻ったら追加の物資に加えておこう。で、肉弾戦となるとある程度攻略手順が必要だ。腎臓への一撃では即死しなかった。腎臓の位置が違うのか、それともミノタウロスにとって腎臓は急所ではないのか。弱点を探らなければならない。頭部を潰すのと首を裂くのは確実だろうが、他に急所となるとな」
「久隆ならきっと弱点を見つけられるの!」
「無理を言うな。死体を解剖できればいいんだが、死んだら宝石と金貨になってしまう。魔物の解剖学ほど困ったものはないぞ」
そうなのだ。
魔物は死体を残さない。故に解剖ができない。
これまで魔族たちが魔物の弱点を狙えていなかったのは彼ら自身の解剖学の知識不足というのもあるが、魔物の解剖が行えなかったことにも原因がある。魔物は死ねば金貨と宝石を残して消え去ってしまうために、どうしようもないのだ。
せめて、少しでも解剖ができ、主要な血管が集まってる部位が分かれば対処のしようもあるだろうが、それは叶わぬ夢なのである。
今は人体と比較して、経験則的に弱点を探るしかない。
「人体の急所はいくつかあるが死に至るものはそう多くはない。主要な動脈。神経と動脈が集まる部位。そして、脳だ」
久隆はタブレット端末に人体の急所を記した図解を表示させる。
「腎臓も弱点のひとつのはずなんだが、腎臓への攻撃は空振りに終わった。そうなると、安易に人体と比較していいものかとなる。そもそも魔物は血を流さないしな」
魔物は血の一滴も流さない。それなのに血管の位置や臓器の位置が重要になるのか。
「一応、これから遭遇したら、一通りの弱点を試してみよう。この階層だけミノタウロスが出没するわけでもないだろうからな。傾向からして、これからミノタウロスが増えていくはずだ。その上位互換も出るだろう」
「厄介ですね……」
フルフルが渋い顔をする。
「フルフルがレヴィアたちの方に付呪をかけて、その魔法攻撃で撃破できればそれはそれでいいのだが、フルフルほどの付呪師はいないのだろう? それだと他の部隊がマニュアルを流用できない。これから40階層を目指すとして、40階層にダンジョンコアがなかったら、さらに潜ることになる。その場合、40階層から地上までの道のりを確保するのはアガレスの部隊だ。彼らもミノタウロスと戦えるようにしておかなければ」
アガレスの騎士と魔法使いたちが前線で戦う久隆たちの後方連絡線を確保する。そのためには再生するダンジョンにおいて、彼らもミノタウロスを倒せるようになっておかなければならないのだ。
久隆たちは既にゴブリンの隠密殺害についてや、重装オークについてのマニュアルをアガレスに渡している。それが活用されれば、30階層より上については安全だ。
問題はそれより下だ。
ミノタウロスの出没する30階層より下については、まだマニュアルができていない。久隆たち自身、手探りで戦っているような状態だ。
だが、マニュアルを作成できなければ、アガレスの部下たちに犠牲が出るし、後方連絡線は確保できなくなる。それは困るのだ。
「なにはともあれ、ミノタウロスの肉弾戦での攻略方法だ。それが確立できなかった場合、とにかく大量の魔力回復ポーションを作って、魔法でごり押しするしかない。だが、相手もオークやオーガと違って足が速い。用心しなければ魔法偏重では食われるぞ」
ミノタウロスの脚力はオークなどの比にならない。一瞬で距離が縮まる。魔法で戦うにせよ、逃げ続けるか、前衛が押さえなければ追いつかれて叩かれるだろう。
「ミノタウロス。もしかして、この30階層から40階層の間のモンスターハウスで大量に発生したりなんかはしませんよね……?」
フルフルがそう告げるのに沈黙が流れた。
「可能性としては否定できない。30階層までのゴブリンと重装オークも面倒だったが、ミノタウロスもなかなか面倒だ。用心するべきだろうな。そして、なるべく早く安全なミノタウロスの討伐方法を考えておくべきだ」
久隆はそう告げて全員を見渡した。
全員が無言で頷く。
「では、引き続きミノタウロスに警戒しながら攻略を進めるぞ。レヴィアたちは魔力に余裕を持たせておけ。フルフルも必要な場合以外の付呪はいい。魔力管理を徹底しながら、着実に40階層を目指して進もう」
「おー!」
レヴィアが気合を入れて、久隆たちは32階層に続く階段の前に立った。
果たしてこの先にもミノタウロスはいるのか。いたとして何体いるのか。
久隆たちは物音ひとつ立てず、密かに階段を降りた。
そして、久隆が素早く索敵を始める。
「ジャイアントオーガ3体、ミノタウロス7体、ゴブリン10体。またこれは面倒なことになってきたな。ミノタウロスの数が一気に増えたぞ」
厄介なミノタウロスは数を増し、久隆たちの前に立ちふさがろうとしていた。
「どうするの、久隆?」
「まずはゴブリン、それからミノタウロスだ。ジャイアントオーガを先に回すと、ミノタウロスの脚力からして挟撃される可能性が高い。ここは安全策を取ろう。ゴブリン、ミノタウロス、ジャイアントオーガの順で片付けていく」
久隆は果たしてこれでいけるだろうかと思いつつも、やらなければと思った。
……………………
本日の更新はこれで終了です。
では、面白いと思っていただけたらブクマ・評価・励ましの感想などお願いします!




