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隣の芝生は、眩しすぎる/目は、口程に訴える

作者: レーヴェ

「あなたは、何者ですか?」

「ごく普通の一般人です」

 これが彼女との初めての出会い。


 いつもの人が少ない電車の中、学校の登校中だというのに美少女とも言えるビジュアルの少女に話しかけられる。


 いきなり何を聞いたと思えば何者ですか?という変な質問、どう回答していいか冷静に考えた結果俺は、そう答えた。


 他にどう返答していいかは思いつかなかった。

 急に女性に話しかけられて戸惑ったといえば恥ずかしい限りである。


「私には、人に対してオーラのようなものが見えます」

「はぁ、そうですか。宗教は、お断りです」

「宗教勧誘じゃない!!」

 突然、大声を上げキレキレのツッコミをしてくる。


「ごほん、私は...」

 何か色々話しているような気がするが俺は、彼女見た目に正直戸惑いを隠せない。


 白い長い髪の毛、透き通った青い瞳、そして訳がありそうな眼帯を着けていた少女、一瞬外国人とも思えたが、流暢に日本語を話してる時点でハーフか日本に長く住んでいる子のどちらかだろう。


 それにしても、完全に美少女とも思えるその少女にいきなり声をかけられるなんて今日俺は死ぬのかな?


「聞いてますか?」

「いや、全く聞いてない」

「全く、清々しい返事ですね」

「急に話しかけられてびっくりしてると言うことだけは理解してくれ。じゃ、俺は、この辺で」

「ちょ、まっ」

 降りる駅に着いた途端、俺は、一つ断りを入れて足速に電車から降り、どこからか現れた人混みの中すらすらと歩いていく。



「ま、まってくだゃさい。はぁ、はぁ」

 どうやって追いかけて来たのか、彼女は、沢山の人混みの中、俺のブレザーを掴んで来た。


「どうして逃げるんですか!?」

「いや、今日死ぬかもしれませんので」

「え!?」

「冗談です」

「これ以上、揶揄うと本気で怒ります」

「もう十分怒ってる気がしま、イタイイタイ」

 彼女は、初対面だというのにいきなり脇腹をつねってくる。


「はぁ、一体俺に何を要求してるんだ?」

「そ、その地図をなくしてしまいまして...できれば、学校まで連れて行って欲しいのです」

 今の時代携帯というものがあるにも関わらず彼女は、少し恥じらいながら懇願してくる。

 このご時世に迷子になるとはある意味奇妙な少女である。

 よく見ると彼女の服装は学生服で尚且つ通っている高校の制服を着ているのだ。


「なるほど、要するに朝早くウキウキで学校に来たものの携帯を携帯せず、他に生徒もいないので頼ってきたというところ。そして何か話すきっかけを作るために訳のわからない話をしてきたというところだな」

「大体あってますが、オーラが見えるのは本当なんです!!」

「はいはい、そういう設定ね」

「設定じゃないです!!」

 これは、あれだ俗にいう厨二病というやつなのだろう。

 冷たい目で見るのもやめてやろう


「何ですか、その人を哀れんでいるような目は」

「いや、何でもないよ、気にしないでくれ。誰でも一度は経験するもんな、うん」

 変に慰めを入れて、俺は仕方なく、彼女の歩くペースに下げゆっくりと登校することになった。


「でだ、君は、どこの誰なんだ?」

「私は、月島 望(つきしま のぞみ)と申します。一応言っておきますがハーフですが育ちは日本です」

「これご丁寧にどうも」

「で、あなたは?」

「やっぱり流せないか、烏丸 司(からすま つかさ)だ」

 正直、俺はあまり自分の名前は紹介したくはなかった。

 変に目立つ美少女ならば、絶対変な目にあうことは必然だろう。


「オーラが見えるというのならば俺は一体何色になるんだ?」

「ないんです...あなたに対してオーラは、ないんですよ」

「あぁ、そうか。あのさ、普通って何が見えるの?」

「怒りっぽい人ならば赤、大らかな人なら緑、クールの人なら青っぽく見えます」

「その色の中から俺はないってことか、だから何者かどうか聞いたわけか」

「そうです」

 感情の色、カラーセラピーというものか、人の感情を表す表現でよく見受けられるものだな。

 それらが本当に見えるとして無色としたらまるで感情がない奴みたいだな。


「感情がないか...まぁ、俺が無色というのはある意味あっているかもしれないな」

「それはどういうことですか?」

「そのままの意味だ。ほら着いたぞ」

 私立星園高校、山の上に建てられた自然あふれる白い校舎が特徴的な学校である。

 山の上ということもあり、下に見える街の明かりはとても煌びやかな場所となっており、そして名前に星とつくように学校内の敷地である森にいくとそこからは絶景といえる星空が広がっている。

 自然の中の学校といっても過言ではなく、さまざま部活が夜遅くまで活動なんてこともよくある。

 欠点という欠点は山の上ということでなかなかきつい昇り坂があるということだ。


「この上に本当に校舎が!?」

「そうだが、これくらい慣れないと貧弱と言われ笑われるぞ」

 望は、おもむろに顔をひきつっていたが俺は関係なくその坂道を歩いていく。


「ちょ、待ってください」

「おぶってやろうか?」

「冗談でもやめてください」

 特に急ぐ用事もないので彼女のペースで歩いていくが、あまりにも遅い...


「なんであなたは平気なんですか」

「通っていたらその内いやでもなれる。少しいいことを教えてやろう。ここを上ったら振り返ってみろ、ここの学生でしか見られない絶景だぞ」

「それを聞いたら少し頑張る気がおきましたよ」

 ただの坂道だというのに望は、そうとう苦しそうにのぼっていく。

 余程のお嬢様だったのか、それともあまり外に出たことがないのか、髪や瞳の色でいじめられたという経験を持っていても可笑しくはないか...

 校門前、街の景色と涼しい風が先ほどの苦労が報われる。

 

「綺麗...」

「まぁ、そうだな」

 いつも見ている景色だが、俺は特になにも感じない。

 だが、となりいる彼女は違った、目を輝かせ全てが綺麗だと言い張りそうなそんな表情をしていた。

 どんな景色を見ても何も感じない、ある意味彼女がいったことは本当かもしれないな。

 生きながらに死んでいるそんな表現が俺にはお似合いなのだろう。


「さて、とりあえず職員室まで案内するよ」

「あ、ありがとうございます」

 すらすらと歩いて行き、靴を履き替えそのまま職員室までノンストップで歩いていく。


「それじゃ、俺はここで」

「はい、ありがとうございました」

 誰もいない教室に一番乗りし、自分の席に着く。


「やっと休める」

「本当にそう思っているのか?」

 訂正しよう俺に休みはないみたいだ...


来栖(くるす)先生、マジで言ってるんですか?」

「マジだ、突然の転校生のせいで色々と案の組み直しだ。生徒会副会長のお前の仕事だろうが」

 来栖冬華(とうか)、生徒会での一応顧問という立場になっているが、こういった報告だけでまともに顧問らしいことしてきたことない。


「だから29歳になっても結婚できないんだよ」

「何か言ったか?」

 思わず口を滑らした代償に司は、頬をつねられる。


「イタイイタイ」

「いいからさっさとやっとけよ」

「普通、生徒に丸投げするかよ」

「ここの学校に普通を問うなよ。ここは正直非常識の塊みたいな学校だからな」

 俺は、溜め息を吐き、そのままほぼ拉致ような形で生徒会室に缶詰め状態にされたのだった。


「一応授業があるんだが」

「お前には必要ないだろ。それじゃ、あとよろしく~」

 そのまま来栖は、自身の授業があるという説明だけを残し、早々に立ち去っていった。


「はぁ、仕方ないか...」

 

 全生徒約1000人以上、クラブ活動は豊富、授業レベルも非常に高く、本来の高校ではやらないであろう様々専門分化も学べるといった学校になっていた。

 そんな学校にある風紀員や生徒会といった役職はそれなりに重要な役割を与えられる。

 生徒会でいえば、部活の管理、この学校全ての金のやり繰りなど、ほとんどのイベントごとを管理しているが、なんとそんな生徒会には生徒会長とこの俺、副会長という2人だけの生徒会となっていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 不思議な人と出会った。

 (オーラが見えない)

 普段見えるものが見えず、彼に対して不思議な感じがしてならなかった。

 新しく通うはずの高校の男性制服、迷子という状況を解決するため仕方ないと思い私は、彼に話かけた。


「あなたは何者ですか?」

「ごく普通の一般人です」

 返事は意外なものだった。

 いや、普通の答えなのだろう。

 全く、掴みどころがない人、私は、そう思わずにいられなかった。

 初対面だというのに思わずツッコミを入れてしまったし...

 いや、これは仕方ない。

 迷子という羞恥心を捨て頼らないといけない状況これは仕方ないことである。

 そう、仕方ないのだ。


 オーラが見えるという本当の話をしたのに彼は信じず、何故か司からの視線が哀れむように感じた。

 

 一応学校まで案内してもらう流れになったけど、まさかこんな山奥にあるとは...


「この上に本当に校舎が!?」

「そうだが、これくらい慣れないと貧弱と言われ笑われるぞ」

 駅から出てほんの数分、山の中に作られた学校と聞いていたけど、こんな坂道の上にあるとは...


 だけど、校門前まで来て何故ここに来たか分かった気がした。

 沢山の自然、下には大きな街、先ほどの苦労が飛ぶほどの涼しい風がやってくる。

 とても綺麗で美しく、ずっと見ていたい気持ちでいっぱいだった。


「綺麗...」

「まぁ、そうだな」

 私は、何も考えずそう呟いてしまった。


「さて、とりあえず職員室まで案内するよ」

「あ、ありがとうございます」

 司の呼びかけで我に返る、それほどこの景色は美しいものだったのだ。


 職員室に連れていった後、司とは別れてしまった。

 違う、私はなんで別れてしまったと少し寂しいと感じるのだろう...

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「疲れた...」

「おっとめご苦労さん」

 授業に戻ってきたと思ったら既に4時間目が終了、お昼時だった。


「どこに行っていたんですか?」

「生徒会室、てか同じ二年で同じクラスかよ」

「何?この美少女と知り合いなのかよ司」

「こいつは、ま「あぁ、言わないでください!!」」

 輝夜は、無理やり口を塞いでくる。

 迷子ということが非常に恥ずかしかったのだろう。


「だそうだ、すまないな。達也(たつや)

「まぁ、そういうことなら仕方ないな」

 黒鉄 達也(くろがね たつや)、中高と同じクラスという理由で親しくなった人物、がたいは大きくサッカー部のエースとなるほどの運動神経を持ち主である。


「はぁ、昼だし、学食でも行くか。一緒に来るか?」

「は、はい」

 望と達也を連れ、学食へと向かっているいたら、突然上履きが飛んでくる。


「はぁ、めんどくさいなぁ。達也頼んだ」

「はいよ。ってやらなくていいかもな」

 達也が喧嘩を止めようとした瞬間に凄まじい風がおそってくる。


「はいはーい、喧嘩はそこまでにしてくださいね~」

 唐突に現れては喧嘩をしていた2人の腹に一撃をいれ気絶させた。


「無視だ無視、人が少ないから早いとこ買いにいこうか」

 そう言って移動しようとすると携帯の着信音が鳴り始めそこには「たまごサンドとカツサンド」とかかれたメールが送られてくる。


「なんて注文きたんだ?」

「たまごサンドとカツサンドだと、さっさと買っていこうか」

 望だけがなにが起こったか理解できずにいたが肩を叩いて正気に戻し、自分の欲しいものと注文の品を取ると生徒会特権で得た食堂の席に腰掛ける。


「全く生徒会様様だよな」

「お前も風紀員なんだからこの場所は使えるだろ」

「生徒会!?風紀員!?」

 望は、オーバーなリアクションを取ってくる。


「そうだそうだ、これを渡すのを忘れていたな」

 俺はポケットの中に入れたままの、生徒手帳を取り出した。


「これは?」

「君の生徒手帳だよ。これがないと学校にも入れなくなるから絶対に無くさないでくれよ。その生徒手帳には三万円ほど使えるクレジットカード機能もある。まぁ、校内で買えるものしか使えないんだけどね。これで君は正式にこの学校の生徒ということになった。歓迎するよ望さん」

「ありがとうございます」

「Welcome to 星園高校へ!!」

 急に、現れ望に飛びつく一人の女性


「で、騒ぎは解決したのか?乃愛(のあ)

「とりあえず、意識を奪っただけだよ。解決はまた後で司に一任するよ」

「お願いだから護衛をしてくれよ」

「そりゃ、もちろんだよ♪で、君は転校生ちゃんね」

「は、はい」

「歓迎するよ」

 初対面だというのに馴れ馴れしく、明るい女性朝日奈(あさひな)乃愛(のあ)、現在の生徒会長にて武という立場に置いて最強といっても過言ではない。


「金色...」

 望が誰にも聞こえないくらい小さな声で呟いた。


「なるほど、いい目を持っていることは確かのようだね。ねぇ、君生徒会に入らない?」

「いきなりですか!?」

「じゃないと、今の君にとって、面倒なことがおこるよ」

 脅しとは思えないほど、その場が緊迫とした状況となる。


「ほら、周りを見てみて。絶賛あなたを狙う人ばかりなのだからさ」

 望は、そう聞くと周りを見渡し、こちらをまるで得物を狙うかの如く睨みつけていた。


「な、なんでこんな状況に...」

「部費争奪戦だよ。人が入れば部費は増える。当たり前のことだろ」

「それだけの理由で...」

「この学校は普通じゃない。部いうなの会社が存在し、しかもそれらは商業としてちゃんと利益が出ている。給料もちゃんと存在しているし、そのためのクレジットカードだが、もちろん銀行に預けることも可能である。卒業後も子会社という存在の部から親会社へと働けるシステムとなっている。就職率98%以上の理由はそういったところだ」

「非常識すぎる...」

「この学校に常識を求めるな。疲れるだけぞ」

「初めて聞きました、そんな名言...」

「てなわけで、どうだい生徒会は?無理にとは、言わないけどね」

 望は、何故か俺の見てくる。


「こちらとしても人で不足だ。仕事をしてくれるならば、誰でもいい」

「そりゃ、2人しかいない生徒会だもんね」

「生徒会長がまともに勧誘しないからな」

「え~私のせいなの?」

「当たり前だ、さて、悪い話ではないと思うぞ」

「それは...」

「ちなみに、生徒会に入ればそれ相応の給料が発生する」

 そういうと、望は明らかに反応を示した。


「ち、ちなみどれほど...」

「そうだな、仕事次第だが、このくらいは毎年稼げる」

 そういうと、俺は紙に書いた数字を望に見せる。


「こ、これは本当ですか?」

「本当「やります!!」」

 望は、迷わず即答する。


「そ、そうか。それはよかった」

 あまりの食いつきに俺は、思わず驚く。


「それじゃ、改めて朝日奈(あさひな)乃愛(のあ)だ。よろしく種む」

「月島望です。こちらこそよろしくお願いします」

「なるほど、望ちゃんね。いい目を持っているね」

 乃愛のその発言で思わず驚く表情を見せる。


「いっておくが俺は、話してないぞ、乃愛の持っている感覚は異常だからな」

「えっへん」

「こいつは、直感で当てた。ただそれだけだ」

「直感...」

 超直感ともいえるべき力、女の勘ともいえるのか、彼女の直感は人とは、異常なほど当たる。

 実際に、一目見ただけで望の目に着目しているのだから凄いものだ。

 それからは、望自身の話と生徒会での簡単な説明をした。


「さてと、問題を解決するか...」

 昼飯を手早く済ませ、気を失わせた生徒に話を聞くために移動する。

 話を聞くと部費が盗まれたというトラブルが原因らしい。


「だから、こいつらテニス部が盗んだんだよ」

「俺たちは盗んでねぇ、陸上部の誰かが盗んだだけだろ!!」

 といったいざこざだった。

 事の発端何故、陸上部がテニス部を疑っているか聞くと陸上部の部室にテニスボールがあったからという理由だけらしい。

 

 各部室は、特殊なドアがあり、所属した部活にはそれぞれ名前や生徒手帳がないと入ることはできない仕組みとなっている。

 そして、それらのドアは、全てオートロックとなっている。

 これらは商業という立場がある学校なので防犯面に対して必要と判断し、全ての部活で取り付けられている。

 つまり、侵入ができないはずの陸上部に何故かテニスボールが、それだけでテニス部が犯人と決めつけたといったところである。

「それじゃ、少し部室を調べても構わないよな」と陸上部にきいたところ、少し動揺して了承してくれた。


「とりあえず、現場を見るか...」

「これって生徒会の仕事なんですか?」

「まぁ、仕事といえば仕事だな。あったあった」

 俺たちは陸上の部屋に入り周りを見渡す。

 汗の匂い、しかも部室は砂だらけだな。


「部屋に入るなよ」

「わ、わかりました」

 足跡、小さいな、そして変に消臭スプレーが使われているな。


「なぁ乃愛、変な匂いがしないか?」

「スプレーはラベンダー、うーん、匂いが混ざり過ぎてよくわからないかな」

「そうか、ならもう吸うな」

「汗臭いのを消すためにするならば不思議ではないか、だけどそれだけの理由ではないか...」

「望、後ろを見といてくれ」

「わかりました」

「そうだな、色は恐らく赤と黄色そんな人物が来たら言ってくれ。乃愛が押さえつける」

「わ、わかりました」

 とりあえず、写真を撮るか...

 一応奥に窓があり、サイドにはロッカー、窓の外にはテニスコート場があるが高いネットがあるためボールが入る方法としては打ち上げた時ぐらいしかない。

 そして、そんなボールは取りずらかったのだろう、何個かそのボールは転がっていた。

 

「ここから取っていてもおかしくはない」

 ならば、テニス部員だけが犯人とは限らないな。


 ここで俺は、さきほどの明らかに動揺していた陸上部を思い出す。

 部費というのは確かに重要な存在だが、その焦りかたは普通の人のそれじゃなかった。

 少なくともいきなり決めつけるような考えを持つのは少し変な点である。


「乃愛仕事だ。テニス部の()()()()()()を守ってくれ」

「了解だ」

 乃愛は、それだけを聞くと走りさっていった。


「何故そんなことを?」

「犯人は、テニス部のマネージャーだ。だけど、それは部費自体が目的ではないな」

「どういうこと?」

「部費の使い道に問題があったから盗んだことにして、生徒会に後を任せたのだろう。証拠としては、マネージャーの靴底だな。多分、土がついてるはずだよここのね。そして極めつけは臭いと陸上部の動揺、そしてここだな」

 無作為に積まれた服の底、そこには紙と袋に入れられた何かがあった。


「これは...」

「薬といえばすぐにわかるだろ」

 望の手が明らかに震え出す。


「さて、まとめるとしよう。薬を使っていたのは、陸上部だ。そしてテニスボールを取ろうとしたテニス部のマネージャーに見つかってしまったのだろう。見つけた原因はそうだな。マネージャーなのだからこの部屋が気になり片づけたとしたら辻褄が合うだろ」

「けど、どうやって侵入したんですか?」

「ボールだよ」

「ボール?」

「ドアの入り口にボールを置いてドアが閉じないようにしていたんだろう。その証拠にボールには少しあとがついてるし、あのべこべこなボールを使うこともなくドアストッパーとして使ったんだろう」

「けどそれじゃ、マネージャーが入れる理由がわかりませんよ」

「マネージャー同士やり取りしていたんだろうよ。まぁ、ここの陸上部のマネージャーは、あまり働いていなかったようだが、単純にテニス部のマネージャーが綺麗好きだったんだろうよ」

「な、なるほど」

 全て憶測ではあるが筋が通る。


「こちらにもやっぱり来たか...」

「え!?」

 望は、司の言葉に驚き眺めたいた方をみると確かに黄色いオーラが見えていた。


「後ろにいろ。わかったな」

「は、はい」

 望は、身を隠すように司の後ろにつく。


「何か見つかったかい?」

「あぁ、色々見つかったよ」

「そうか、やっぱり見つかってしまったか...」

「大人しく捕まるならば、俺は、何もしないんだけど、そうは言ってられないか」

 近づいてきた男性は、カッターを持ち出し刃をカチカチと出し入れしてくる。


「悪いが俺は、手加減ができない。死んでもいいなら迷わず向かってこい」

 そんな忠告も無視し、男は突撃してくる。


「俺が何者かとお前は聞いたな。これが答えだ」

 男は簡単に投げ飛ばされ、俺は、迷わず手足の骨を折った。


「俺は、政府の犬。色が見えないのは、これが理由なのだろう」

 人を殺す者(暗殺者)に心はいらない。


 陸上部の騒ぎは、これにて終了した。

 薬をやっていたのは計4人、3人は予想通りマネージャーのほうに行っていたらしく軽く組み伏せていたらしい。

 薬をやった理由としては、雨や流行っている病のせいでのストレス、家にいることが多くなった時に使用しており、依存したまま学校、部室内での使用をしたという流れだった。


「そんなの悲しすぎるよ。感情があるから人なんだ。泣いて、笑って、悔しくて、それを持っているから人なんだよ。それが分からないというならば、私が、私があなたに教える。世界は綺麗だって認めさせてあげるよ」

 始めてそんなことを言われた。

 孤独という存在の俺に対し手を差し伸べてきた。

 だけど、俺はその手を払い除ける。

 俺は、そちらには戻れない。

 その芝生は、俺には眩しいと思えるほど青いのだ。

 隣の芝生は青く見える、羨ましいと思えるがその感情は『偽物』なのだろう。

 何しろこんな平和の日常(学校生活)、俺は息苦しさを感じていたのだから...


「悪いな、俺にとっては、眩しすぎるんだよ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 今俺は非常にめんどくさいほどの資料に埋もれていた。

 陸上部が起こした事件がことの発端、薬を提供したのは内部か?それとも外部か?これらが教員内での会議で取り上げられ、そして生徒会が絶賛巻き込まれていた。


「それは警察の仕事だろ?」

「そうなんだが...」

「学校の名誉って所か?」

「まぁ、そういうことだ」

 陸上部を問い詰め聞いた情報、先輩から貰い、そこから部費を使い買い続けたといった所だった。

 その先輩は、どこにいるか聞いたら、既に連絡が取れない状況だった。


「はぁ、外部の線が濃いか」

「そうなの?」

「と、言われてもこれくらいしか手掛かりはない」

 ここから見つけるとなるとおとり捜査になるか


「だから、俺たちなのか...」

「そういうことだ」

 パソコンの電源を点け、数多い部室の部費に着目して調べていく。


「これ全部調べるの?」

「調べても分からないことが多そうだ。使用者や購入者がまだまともの判断をしていた場合、少量の値段で購入していることがあるかもしれないからな」

 表記が曖昧なものだけを調べていく。


「こういうのは、風紀員が向いていると思うんだけど、主に直接捜査で」

「できると思っているのか?」

「無理ですね」

「分かってるならいうな!!」

「イタイ」

 あたりが強い教師だな。


「さて、薬については薬に詳しい人に聞くか」

「まさか、売人の知り合い!?」

「いいや、化学部(薬品学部)に行くだけだ」

 俺が動くと望も同じように立ち上がり、生徒会室を出た。


 生徒手帳をかざし、化学部の扉を開ける。

 まるで、別世界ともいえるラボ施設、入った先で消毒液が散布され全身消毒されていく。


「ここが、化学部だ」

「これ、本当に学校なんですか!?」

「学校だよ、ほら行くぞ」

「は、はい」

 自動ドアの先、近未来的施設ともいえる空間が広がる。

 白い机に独特な消毒液や薬品の匂い、薬局屋などに入った匂いというのかそういった類の匂いが広がってくる。


「そういえば、乃愛さんは?」

「運動部での、助っ人に駆り出されてるよ。あいつほど、運動は出来るものはそういないからな」

「そういうものなんですか?」

「今なら百人組手とかやってるんじゃないか?」

「同級生とは、思えないくらいストイックな方ですね」

「俺もそこは同じ気持ちだよ」

 こんな、話をしていたらきっとあいつは今頃くしゃみでもしているのだろうか?


「ここだな」

「部長室?」

「入るぞ」

「ん」

 中から返事が聞こえ、ここも同じように生徒手帳を使い開けていく。


「さて、この度はなんの御用かな?副会長さん」

「購入履歴書、ここ一年のやつ全て、そうだな品物は『麻薬』だ」

「また物騒なものが出て来たね。いいよ、好きに知らべてくれたまえ」

「協力に感謝するよ。三島部長」

 三島 皐(みしま さつき)部長、化学部の薬品学部部長三年生、学生の身だというのに様々な論文を発表し受賞されている。

 

「麻薬!?この学校では、麻薬についての研究もしているんですか!?」

「今更驚くこともないだろ」

 ここ化学部は、様々な薬品に関しての実験をしている。

 普通の学校では入手はできない薬品、それこそ麻薬などの購入が許可されている特別施設である。

 それらの研究費もこの部自体の結果、実績から得られたものであり、他の研究者が喉から手が出るほどの施設が揃っているといっても過言ではない。

 知識の宝物庫、知的研究心が多いものしかここにはいないのだ。

 それだからこそ、崩れやすいのだ。


「ほら、飲み物を用意したから飲んでくれたまえ」

 そうして皐は、水であろう透明の液体を机の前に置いた。


「悪いが俺は、自分でエスプレッソを入れるとするよ」

「はいはい」

 皐はそう言うとニヤリとした笑顔を見せてきた。


「それでは頂きます」

 望は、特に何の考えもなしにその液体を飲んでいく。


「なんだか、不思議な味ですね。少し甘酸っぱいといったところでしょうか」

「うんうん、なるほどなるほど」

「これ何か入ってるんですか?」

「ガムシロップとH2SO4が入ってるよ」

「えいち2?えすおー4?」

「トイレなら出た所にあるぞ」

「流石、副会長さんそれだけで何か分かるんだね」

「当たり前だ。馬鹿でも分かる有名な()()()()()だ」

「え...、ち、ちなみに薬品の名前は...」

 望は、手を震わせながら飲んでいたコップを机の上に置く。


「硫酸だな。喋れている時点で問題はないだろ」

「ほ、本当ですか?胃が溶けたりしないんですよね!!」

 反応が面白いので俺は、あえてその問いを無視した。


「なんですかその反応!!」

「大丈夫だよ。ちゃんと薄めているんだからね。お口に直しにどうぞ」

「これは、大丈夫なんですよね」

「ただの塩酸だよ」

「アウトじゃないですか!!」

 ノリノリのツッコミで皐は、ゲラゲラと笑っていた。


「さてと、残念な知らせといい知らせどちらか聞きたいですか?」

「また、唐突だね。ならば、残念の方からお願いしようかね」

「この部に麻薬の売人がいる」

「ふむ、いい知らせは?」

「まだ、犯人はいる」

「それは、いい知らせとはいわない」

「そうなのか?」

「麻薬の研究をしているものは何人だ?」

「そんなの10人以上いるよ」

「この部屋に入れるのは?」

 俺は、そういうと先輩の顔は険しくなる。


「3人だけだ。今すぐ呼ぼうか?」

「いや、いいよ。恐らく今日も買うだろうからな」

「了解したよ」

「大丈夫なんですか?」

「問題ない。望、仕事だよ」

「何をみたらいいの?」

「前回と同じ者だ」

「わかりました」

 これで誰かは絞れるかな。


「見ただけでわかるのか?」

「何となくだがな」

 部長室を出て周りを見渡す、彼女には目があるように、俺にもそれなりに能力と言えるものがある。

 暗殺術を身に着け、その副産物で生まれた思考回路、犯罪思考

 

「俺は、探偵じゃないんだがな」

 帰る時に持ち出すのは難易度が高い、出入りするやつが多いほど怪しいと感じるが履歴が残らないような小細工をしていると考えていいか...


「三島部長少し、パソコンをお借りします」

「好きにしてどうぞ」

 小細工には小細工だな。


「あとは、待つだけだな」

「もう、いいんですか?」

「そっちも、見つけただろ」

「はい」

「それじゃ、ありがとうございました」

「もういいのか?」

「大丈夫です。()()()()()()()。邪魔してすまなかった」

「いやいや、何も問題はないよ」

 互いに笑顔で手を握り、そのまま部室を出て行く。



「お前は帰っていいぞ」

「そんなの駄目です。私も最後まで付き合いますよ。司さん」

「一応、夜遅くになるんだけど」

「だから、駄目だと?」

「手伝うなら親御さんに連絡ぐらいいれとけ」

「はい!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 夜の学校、圧倒的に不気味さを感じる。


「街の光が綺麗...」

「行くぞ」

「はい」

 暗闇の校舎のなか非常口の緑色が明るく光る。


「懐中電灯?」

「あれは、警備員だ。事前に連絡をいれてるから問題はない。それにしてもくっつきすぎ。歩きずらいんだけど」

 腕に当たる柔らかな感触と甘い匂いが漂ってくる。


「す、すみません」

「行くぞ」

 俺は、望の手を掴み暗闇の中の校舎を歩いていく。


「見えてるんですか?」

「夜目は効く、来たぞ」

 望にもその影は確認できたのか、静かに頷いた。


 俺たちが張り込んでいた場所は、化学部電気機関所

 夜になると学校内の電気は消される。

 電気が消されるということは、オートロックとなっている部室にも影響があり、生徒手帳をかざしたところで開けることはできないのだ。

 となると最初にいじるのは電気設備と必然的に決まる。


 扉を開け奥に入る人影、生徒手帳をかざしているが警備施設から盗んだマスターキーなのだろう。

 パソコンの履歴を確認した時に何も残っていないのはそれが理由だ。


 施設の電気を点け、犯人の姿を確認する。


「さて、副部長さん説明してくれるか?」

「一体なんのことだい?」

「証拠映像は撮っているし、過去の履歴も確認した。(しら)を切ることは出来ないと思うんだけど?」

「まぁ、そんな証拠は関係ない。ここで、殺したらいいだけの話だよ」

 拳銃をこちらに向け、普通の人間とは思えないほど興奮している。


「無駄な抵抗をするな、死ぬのが長引くだけだぞ」

「そうだな」

 手を上げ前にでた瞬間、何かが転がり落ちる。

 カンッという音とともに部室棟に煙が充満される。

 そのまましゃがみ込み、顎に一撃いれ気絶させた。


「さてと、尋問は後にしよう」

「それにしてもなんで分かったんですか?」

「麻薬の購入が少なかったからだ」

「それだけ?」

「麻薬の研究をしているならば、普通は買い足すことになる。何しろそれらの入手方法には育ったものを買うしかできないんだからな。履歴を調べた所、明らかに少なかったんだよ。理由としては、外部との取引でもしていたんだろう。種を売り育て、半分ほど分けて貰う。外部との取引も片づけないとな」

「でも、なんで副部長が使ってたことも知っていたんですか?」

「IQが高い者は薬を使用する確率が高いんだよ、知的好奇心に負けてな。他の者は青や緑が多かったんじゃないか?」

「けど、何も障害なく実験をやっているように見えましたけど」

「それは、これだな」

 俺は、副部長の机にある薬を持ち上げる。


「これは?」

「薬物を抑える薬物だ。悪循環を作りだして冷静を装っていたんだろうよ。多分だけど、陸上部の方にも渡していたんだろう」

「なるほど、でもそれじゃ陸上部の興奮した理由がでてきましたね」

「需要と供給、薬の使用率を増やしたせいで抑えることができなかったんだろうよ」

「まるで、探偵さんみたいです」

「やらされているのは探偵だよ」

 扉を開けて換気をしていく。

 そしてタイミングよくピロリンッと携帯に着信音がなった。 


「まぁ、これにて一見落着と言いたいが、ここからは俺の()()だ。こいつを警備員に突き出しとくれるか?」

「何をする気なの?さっきのメールが関係してるの?」

 望は、まるで何をするか分かっているのか手を掴み行かせないようにしてくる。


「君が知る必要がないことだ」

 それだけを告げて、離れようとするが望はまだ袖を掴んでくる。

 何も言わず、望は、目で訴えかけてくる。

 目は口程に物を言う、まるで『どこにも行かないで』と言われているかのように...


「悪いな」

 俺は、突き放すようにその手を振りほどき影に消えていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー

「そろそろ約束の時間だが、遅いな」

「まぁ、あいつのおかげでがっぽりと稼げたけどな、アハハ...」

 笑っていた男性の声が途中で途絶えた。


「おいどうした?笑い過ぎて顎でも外れたか?」

「そうかもしれないな」

 知らない声が振り返るがもう遅く、頭に銃口を突きつけ引き金を引く。

 ()()()()()()


「血がついたな。後で風呂に入らないと」


『   コードネーム 烏

    麻薬組織を発見した。

    全員殺せ。

    MAP.jpg

    人数.pdf       』

 簡潔なメール、やることは明確、暗殺だ。

 送られてきた地図と数多い麻薬売人リスト、政府が殺せと命令してきた以上否定する権利はない。


 一発撃つたびに人が倒れる。

 硝煙と血の匂いが漂ってくる。

 これが俺の日常なのだ。

 普通の日常に戻ることは、死を意味しているのだろう。

 目は口程に物を言う、彼女のその顔が思わず脳裏に過ってくる。


「ふっ、俺の手は汚れすぎたよ」

 返り血が滴り落ち、後は()()()に任せ、家へと帰ることとなった。


「とりあえず、シャワーでも浴びるか...」

 血を洗い流し、必死にスポンジで体を洗う。

 血の匂いが未だに漂い、石鹸の匂いが混ざっていく。


『ピンポーン!』

 夜に鳴り響くチャイムの音、既に外は暗いというのに一体誰かと思い、適度に拭き下着だけを身に着ける。


「挨拶が遅くなって申し訳ありません。電気が点いていたので、隣に引っ越した...って司さん!?」

「よ、よう」

 見知った顔、というか同級生というか知り合いというか望だった。

 これまた変な姿を見せてしまった。


「なんで裸なんですか!?」

「シャワーを浴びていたからな」

 そこに立っていたのは、望だった。

 上半身裸の状態で出てしまったせいか望は、手で顔を隠していたが指の隙間からチラリとこちらを見てくる。


「早く服を着て下さい!!」

 夜だというのに望のそんな声が響くのだった。

遅れてしまい申し訳ない。

少しスランプ気味というか、別の物を書きたい衝動に駆られてしまったのだ。

本当に申し訳ない。

短編にするつもりだったが既にこの続きを書いている途中なので再び短編として投稿していきたい所存であります。

よかったらコメント、評価の方よろしくお願いします。

他の作品に対してもやる気になりますので是非お願いします。


Twitter ID @Loewe0126

DMで好きなキャラなど言ってくれたら幸いです。


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