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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第四章

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96.年季の違い

本日発売!!

 セルスとベルゼド、二人の悪魔はにらみ合う。

 剣を構えてピクリともせず、ただ眼光で火花を散らす。

 彼らは師弟で、互いに互いの戦い方を知っている。

 故に二人は動かない。

 先に動けばカウンターを受けることは明白だからである。


「先生は本気で、あの者たちが魔王様に勝てると思っているのですか?」

「当たり前です。そうでなければここに来ていない」

「へぇ……ですが私の見立てでは、ご子息も勇者はまだ未成熟のようですが?」

「それはそうでしょう。皆、これから見違えるほどに成長する」


 二人は会話を交わす。

 会話の内容に意味はなく、ただ時間をかけ揺さぶっているに過ぎない。

 互いに隙がないから、口で動揺を誘おうという腹だ。

 しかしこれも効果は薄い。

 お互いにこの程度で揺れる程、弱い精神は持ち合わせていない。

 二人は呼吸を整える。

 力を入れるタイミングが、息を吸いきった直後。

 腹に力を入れ、片脚を軸にしてもう一方の脚で地面をけり出す。

 奇しくも動き出したタイミングは同じだった。

 前進して、剣を交える。

 刃と刃がぶつかり合う音が戦場に響く。


「読み合いでも先生には負けません」

「それはどうでしょうね?」


 ベルゼドは地面から違和感を感じ取る。

 瞬時に視線を下ろしてみると、地面がぬかるみ足が沈んでいった。


「これは――」

「読みが外れましたか?」


 バランスを崩した隙をついて、セルスが大きく剣を薙ぐ。

 ベルゼドはその攻撃を剣で受けるが、足がぬかるみ踏ん張りがきかず、後方に大きく飛ばされてしまう。


「ぐっ……」

「まだですよ」


 吹き飛ばされるベルゼドにセルスは追い打ちをかける。

 急接近しで背後に周り、そのままケリを入れて上空へと突き上げる。

 さらに追撃は続く。

 今度は上空に移動して、ベルゼドの腹に踵落としを食らわせる。


「ごあっ」


 唾を吐き出したベルゼドは、そのまま地面へと叩きつけられる。

 凄まじい衝撃によって地面は抉れ、土煙が立ち上る。

 上空で土煙を見下ろすセルスは言う。


「出てきなさい。これで終わりではないでしょう?」

「――ええ」


 土煙が渦を巻き、一瞬にして四方に散る。

 明瞭になったセルスの視界の先に、堂々と立つベルゼドの姿があった。

 傷を負っている様子はなく、彼は服に付いた土を払う。


「まったく、汚い戦い方をしますね」

「戦いに綺麗も汚いもありませんよ? 勝つために最善を尽くすこと……それ以上のことは必要ありません。そう教えたはずですよ?」

「ええ、私も同じですよ」


 ベルゼドはパチンと指を鳴らす。

 次の瞬間、上空にいるセルスは透明な壁に囲まれてしまう。


「これは多重結界ですか」

「その通りです。先ほど飛ばされた時に仕掛けておきました」

 

 捕らえられたセルスは結界に触れる。

 バチンと激しい音をたて弾かれ、触れた手がじりじりと焼け焦げている。


「先に行っておきますが転移による移動はできませんよ」

「なるほど、それで? 捕らえてどうするつもりです?」

「無論、このまま押し潰します」


 ベルゼドは再び指を鳴らす。

 すると結界は徐々に小さくなり始める。

 押し潰すというのは言葉通り、結界の壁で潰すという意味。

 そして結界の壁は魔法を反射する性質を持っていた。

 セルスは先ほど触れた時、その性質を理解している。


 二人は剣士でない。

 かといって魔術師でもない。

 二人にとって、どちらも手段に過ぎないのだ。

 相手を殺すための手段として、彼らは剣技を、魔法を身に着けた。

 故に剣士らしい戦いた方も、魔法使いらしい戦い方もしない。

 彼らは貪欲に、相手を殺す最善の方法を探す。

 使える手は何でも使うし、卑怯と罵られることを恐れない。


 セルスは迫りくる結界の壁を左右交互に見る。


「短時間で破壊可能な密度ではありませんね」

「もちろんです。薄い壁では先生を殺せません」

「確かに良い手だ」


 魔法による破壊、避難は不可能。

 物理的な手段で破壊しようにも、結界の強度から逆算して十秒以上かかってしまう。

 その前に押しつぶされるのは明白だった。

 しかしセリスは動じず、落ち着いた表情で賛辞を贈る。


「よく一瞬でこれだけの結界を生み出しましたね。ただ、仕掛けるポイントを見誤っていますよ」

「何を言って……まさか」

「そうです。よく目を凝らしなさい」


 ベルゼドは言われた通りに目を凝らす。

 すると徐々に、結界の中に閉じ込められていたセルスの姿が霞んでいく。

 半透明になって、消えてなくなる。

 

「わかりましたか?」

「……幻術」


 セルスは結界の外に立っていた。

 小さくなっていく結界を、安全な場所から彼は見送る。


「私が見ていたのは偽りの先生だった……ということですか」

「はい」

「一体いつ……いや」


 ベルゼドは気づく。

 いつからではなく、今現在も幻術は続いていることに。

 つまり、彼が見ているセルスもまた偽物。

 本物はすでに――


「後ろ!」

「よく気付きました。しかし一手遅い」


 背後に周っていたセルスの刃が、ベルゼドの胸を斬り裂く。

 

「ぐぁ……」

「これが年季の違いです」

 

 舞い上がる血しぶきが地面を濡らす。

 胸を抑えながら後ずさるベルゼドは、セルスを強く睨みつけた。


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