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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第四章

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93.開戦

 目の前には魔物の大群。

 それを率いる幹部の眼光が鈍く光り、俺たちを威圧する。

 アレクシアとルリアナ、そして俺が目指すは大群の後方に構える城だ。

 あの城の中に、現魔王がいる。


「まずどう突破するか……」


 俺はぼそりと呟いて大群を改めて見る。

 幹部もいるし、簡単には通してくれないだろう。

 あまり消耗したくはないが、言霊で行動を制限してから一気に突破するべきか。

 そう考えていたことがユーレアスさんにはわかったらしい。


「待ちたまえよ」


 彼はポンと俺の肩を叩く。


「ユーレアスさん」

「こういう時は僕の出番だ」


 そう言って、俺たちにしか聞こえない声で囁く。


「僕が杖で叩いたら、耳と目を塞いで」


 彼はニヤリと笑みを浮かべ、持っていた杖をクルリと回転させる。

 そのまま杖の柄を地面にぶつけた。

 すると瞬間、まばゆい光と耳に響く高音が鳴る。

 ベルゼドも思わず耳と目を塞いだ。


「っ、これは――」

「今だよ!」


 続けて彼の魔法で、光の橋を生成した。

 橋は俺の手前の地面から、大群の奥へと伸びている。

 すかさず飛び乗り、そのまま一気に駆け抜けた。

 悪魔と魔物たちが光と音で足止めされているうちに。


「こっちは任せて! その代わり魔王は任せるよ!」

「うん! 行ってきます!」

「任せるのじゃ!」

「後で合流しましょう」


 そうして俺たちは別れた。

 片や魔王との決戦に向い、残った彼らは大群と雌雄を決する。

 互いに自分たちの役割を果たし、再び会う時は全てが終わった後になるだろう。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「……行ってしまったね」


 三人を見送ったユーレアスは、視線を隣に向ける。

 彼の隣にはレナが立っていた。

 レナはエイトたちが走り抜けた先をじっと見つめている。


「本当に良かったのかい?」

「何のこと?」

「エイト君たちの方に行っても良かったんだよ? 僕らは止めなかったし、彼も拒まなかったんじゃないかな?」


 僕らというのこの場に残った全員を指していた。

 セルスを含めて、レナがエイトに抱いている特別な感情を知っている。

 エイト自身も知っているし、端から見ても明らかだ。

 決戦の時。

 泣いても笑っても、この戦いで全てが決まる。

 だからこそ、大切な人の傍で戦いたいと思うのは、考えてみれば自然なことだ。


「ふっ」


 けれども彼女は笑う。

 強がりではなく、呆れた笑いを見せる。

 そんなこともわからないのかと言いたげに、ユーレアスの顔を見つめる。


「馬鹿ね。そんなことありえないわ」

「どうしてだい?」

「私の力は一対一より多勢相手のほうが向いているわ。それは私が一番わかっているし、エイトだってそう思っているはずよ。みんなだってそうでしょ?」

「それはまぁ……そうだね」


 レナの力と戦闘スタイルは、彼女の言う通り多勢に向いている。

 彼女一人いるだけで、数での不利が打ち消されるほどだ。

 だからこそ、彼女は残ることを選んだ。

 愛する人の背中を、信頼できる仲間たちに任せて。


「そうは言っても心配じゃないのかい?」

「くどいわね。心配なんてしてないわ。だって、彼が負けるはずないもの」


 レナは涼しい顔でそう断言した。

 彼女は知っているのだ。

 エイトが持つ強さを……その力が魔王なんかに劣らないことを。

 それだけではない。

 今の彼には勇者と魔王もついている。


「わかったらいい加減構えなさい」

「ふふっ、そうだね。どうやら迷いなんてなかったらしい」

「最初からそう言っているでしょ」


 二人とも臨戦態勢に入る。

 アスランとフレミアも同様に武器を構えた。

 魔物の群れに注意しつつ、中央に堂々と陣取る悪魔も警戒する。

 誰が最初に攻め込むべきかを、言葉ではなくアイコンタクトで探っていく。

 その最中に、セルスが口を開く。


「失礼ですが皆さん、ベルゼドの相手は私にお任せして頂けませんか?」


 セルスは鋭い眼光でベルゼドを睨み続けていた。

 四人とも視線は前に固定しながら、セルスから発せられる殺気と怒りを感じる。

 彼は続けて四人に言う。


「あれは私の弟子です。私が残してきた汚点でもある……どうかここは、私に自らの不始末を片付ける機会を頂きたい」

「そいつは構わねぇが……いけんのか?」

「無論です。アスラン殿」


 数秒の沈黙を挟む。

 

「……わかった。じゃあ任せるからな」

「ありがとうございます」

「よし、オレたちは周りの魔物どもを蹴散らすぞ」

「「「了解」」」


 合図はなく、全員の呼吸が揃ったタイミングでユーレアスが魔法を展開する。


「いくよ」


 ユーレアスの足元に展開された巨大な魔法陣は、彼の頭上に無数の火球を生成。

 流星のように火球は魔物たちへ降り注ぐ。

 続けてレナが地面を割り、魔物たちを分断。

 アスランは右を、レナは左を相手取る。

 フレミアはユーレアスより一歩下がり、三人の支援に専念する。


 そして――


「待たせましたね、ベルゼド」

「はい、先生」


 燃え上がり揺れる戦場で、師弟が向かい合う。


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