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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第四章

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92.最後の壁

 目の前に宿敵の城。

 あと少しでたどり着く。

 気の緩みはなく、万全の準備で臨んだ。

 それでも……


「あと一歩足りなかったようだな」

「終わったみたいに言わないでくれるかな? っ痛た……みんな無事かい?」


 ユーレアスさんの声に四方から反応する。


「大丈夫ー」

「お尻をうったわ」

「くらくらするのじゃ~」


 アレクシア、レナ、ルリアナが順に答えた。

 他のみんなも衝撃で倒れはしたが、大きな外傷はなさそうだ。

 制御室そのものも壊れてはいないらしい。

 外の映像は変わらず見えている。


「お、落ちたんだよね?」

「ああ、墜落した」

「何でこの部屋はビクともしてないんだ?」


 俺が尋ねると、インディクスは呆れたように鼻で笑う。


「ふっ、馬鹿か? ここは制御室だぞ? 核の次に重要な場所なのだから、頑丈に作ってある」

「ああ、そういう……」


 お陰で助かった。

 映像に映し出された外の建物は、さっきの衝撃で倒壊している。

 これだけの質量が落ちたのだ。

 衝撃でこの部屋以外バラバラになってもおかしくなかったけど……どうやらそれは免れたらしい。

 ホッと胸をなでおろす。


「安心している場合か? よく見ろ」

「え?」


 インディクスの視線の先。

 映し出された映像の端に、蠢く影が見える。

 徐々に近づくそれは、一つや二つではない。


「あれは……魔王軍配下の悪魔たちか」

「魔物も一緒にいるよ!」

「みたいだね。やれやれだ」


 彼らはまっすぐこの城へ向かってきている。

 何が目的なのかは考えるまでもない。

 

「あれを突破しないと魔王城へはたどり着けない。僕らが相手するしかなさそうだね」

「んじゃ行くか」


 アスランさんは拳と拳を叩き合わせる。

 気合は十分、覚悟も出来ているという表情で、俺たちにも問いかける。


「もちろん! そのために来たんだから! ね? エイト君」

「ああ」


 ここにいる誰一人、覚悟の決まってない者はいない。

 俺たちは戦うために来たんだ。

 全員が立ち上がり、迫る敵の大群を見る。


「私はここに残る。城の回復を優先するが構わないな?」

「もちろん。じゃあエリザも残って、彼を手伝ってくれるかな?」

「了解しました」

「余計な気遣いは不要だよ」

「気遣いじゃない。必要だから言っているんだ」


 そう言って、ユーレアスさんは杖で地面をたたく。

 コンという音を合図に、インディクスとエリザ以外が消える。


「ふっ、まぁいい。早々に終わらせるぞ」

「了解しました。元マスター」

「その呼び方は止めてくれ」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ユーレアスさんの魔法で俺たちは転移した。

 場所は城の外周。

 すでに眼前には、おびただしい数の魔物と悪魔たちが構えていた。

 それを見てアレクシアが呟く。


「すごい数だね」

「つっても所詮は有象無象だ。数いりゃいーってわけじゃねぇーよ」

「いいえ、アスラン殿。雑兵ばかりではありませんよ」


 そう言ってセルスさんは一点を睨む。

 険しい表情で見つめる先に、アスランさんや俺たちも視線を合わせる。

 大群たちの中心に、一人の悪魔が立っていた。

 腰に剣を携え、二本の角を有し、黄金の瞳でこちらを見据える。

 彼は微笑み、口を開く。


「お久しぶりですね、先生」

「ええ、久しいですね……ベルゼド」

「え、知り合いなのか」

「ベルゼドは爺の弟子じゃよ」


 ルリアナの一言で、俺の疑問は早々に解消される。

 さっきからセルスさんの顔が異様に怖い。

 その意味は、相手が自分の弟子で、敵として立っているからに他ならない。


「勇者とそのお仲間の方々ですね? 初めましての方も多いようなので、ここで挨拶をしておきましょう」


 彼は優雅に礼儀正しく振舞う。

 さながら人間の貴族のように。


「私は魔王様の側近、ベルゼドと申します。魔王様の命により、皆さまのお相手をさせていただきます」

「はっ! 悪魔とは思えない振る舞いだな」

「アスランも見習ったら?」

「そ、そういうこと言うなよフレミア……んで、どうする? 馬鹿正直に相手するか?」


 ベルゼドと大群を無視して、後ろの魔王城に乗り込むのも手だと、アスランさんは言いたいのだろう。

 実際、魔王戦を控えている今、なるべく体力は温存しておきたい。

 するとセルスさんが言う。


「ルリアナ様、ここは私にお任せいただけますか?」

「爺」

「貴女のお力は、リブラルカとの戦いに必要です。ですので」

「そういうわけだから、アレクシアとエイト君も行って良いよ」


 そう言ったのはユーレアスさんだった。

 彼と共にアスランさん、フレミアさんも前に出る。

 そしてもう一人。


「行きなさい」

「レナ」

「本当は私も一緒に行きたいけど、ここは私の力が必要みたいだから」

「……そうだね」


 大群が相手だ。

 レナの強大な力は、こういう場でこそ発揮される。


「魔王は任せたわよ。それと、必ず帰ってきて」

「ああ」

「……じゃあ予約ね」

「え?」


 不意に頬を挟まれて、気づけば唇が重なっていた。

 唇が離れて、アレクシアの羨ましそうな顔が目に入る。


「帰って来なかったら思いっきり叩くわよ」

「死んだら叩けないけど?」

「その時は臨世まで行ってひっぱたくわ」

「はははっ、それは困る。じゃ……意地でも戻るよ。三人で」

「ええ、待ってるわ」

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