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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三章

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90.不逞領域突入

書籍化します!

 不逞領域は、悪魔領でもっとも危険とされるエリア。

 地上は汚染され、空は荒れている。

 過酷な環境で生まれた生物は、必然的に強靭な肉体と、餓えを恐れる本能を持っている。

 飛びいる無知な生き物ほど、餓えたモンスターにとっては格好の餌だ。


「じき不逞領域に入ります。皆さま、十分に警戒してください」


 俺たちは空飛ぶ魔王城の制御室に集まっていた。

 インディクスに飛行性能を強化され、城を護る結界も強くなっていると聞く。


「案外簡単に突破できるかもね」

「油断しないでください。マスター」

「え? まだ何もしてないのに怒られた」


 相変わらず緊張感に欠ける様子のユーレアスさんに、アスランさんはやれやれと呆れている。

 すると、城を操縦するインディクスが全員に言う。


「まもなく不逞領域に入る。揺れるぞ」

「揺れ?」


 言った途端に部屋が大きく揺れた。

 斜めに傾いたと表現するべきか。

 すぐに戻ったけど、数秒だけグワンと大きく揺れが起こった。


「あー危なかったな」

「だから忠告しただろう?」

「遅いよ。もっと早く教えてほしかったな」


 ユーレアスさんがインディクスに文句をブツブツ言う。

 その通りだけど、気を抜いていた彼も悪い。

 現に揺れで転んだのはユーレアスさんだけだった。


「ちなみに今の揺れは何?」

「外を見ればわかる」

 

 制御室には、外の映像を映し出す特殊な魔道具がある。

 いくつも画面が並んでいて、侵入者を監視する役割もあった。

 全員の視線が、そのうちの一つに集まる。


「ああ、なるほどね」

「すっごい嵐!」


 アレクシアが興奮気味に叫んだように、外は荒々しく吹き荒れる雨風に晒されていた。

 雷雲に突入したことで、ゴロゴロと雷の音が響く。


「聞いていた通りの空だね」

「まだだぞ」

「問題はこの先です」


 インディクスとセルスさんが言った意味を、雷雲を抜けて理解する。

 雷雲は消え、雨風だけが残った空。

 そこに飛び交う翼をもつ黒い影が、星のように散らばっていた。

 アレクシアが驚き、指をさしながら確認する。


「あ、あれ全部ドラゴン!?」

「そうだ」


 インディクスが即答した。

 空の覇者。

 モンスターの生態系で頂点に位置する怪物が、群れを成して飛ぶ鳥のようにうじゃうじゃいる。


「おそらく濃い魔力を感知して待ち伏せていたのだろう」

「そのようですね。インディクス、確認しますが、あれに突撃して結界はもちますか?」

「残念ながら厳しいだろうな。半壊を覚悟すれば突破できなくはない」

「他に案は?」

「無論ある」


 淡々と話を進めるインディクスとセルスさん。

 俺たちは若干の置いてきぼりをくらいながら、インディクスが言う案に期待する。


「砲門――展開」


 ゴゴゴゴゴ――

 城全体が細かく揺れる。


「な、何じゃ!?」


 外を映し出す魔道具に、答えは映っていた。

 建物が移動し、変化して、巨大な大筒が飛び出す。

 前後、上下左右を無数の砲門が狙う。


「魔力供給完了。自動迎撃を開始する」


 砲門から放たれる魔力エネルギーの砲撃が、ドラゴンの群れに直撃する。

 予想以上の光景に全員が驚く中、ルリアナがインディクスに怒鳴る。


「お、おい! 何じゃあれは!」

「迎撃装置だ」

「そうじゃなくて! あんなもの妾の城にはなかったじゃろ!」

「ああ。私が取り付けたからな」

「い、いつの間に……妾の城じゃぞ」

「何か問題があるか? 必要な物だろう?」

「むぅ……」

 

 現に役立っているから反論できなくて、ルリアナはむくれていた。

 それにしても驚いた。

 飛行機能を強化するだけなく、新しい迎撃装置まで取り付けていたなんて。

 しかも予定よりも速い時間で。


「凄すぎて逆にちょっと引くわね」

「レナ正直に言いすぎ」

「ふっ、好きに思え。私は何も――ん?」

「インディクス?」

「……正面を見ろ。どうやら、少々厄介な相手が紛れ込んでいるようだ」


 飛び交うドラゴンよりも一回り大きい。

 逆に強靭さは感じない。

 むしろ、朽ち果てた後の姿で飛んでいる。


 アスランさんがモンスターの名前を口にする。


「スカルドラゴン」

「確かにやっかいだね。あれは魔法が効きにくい」

「あれは結界を抜けてくるぞ」


 スカルドラゴンの周囲には、魔法を反射する結界が覆っている。

 城の砲撃も、結界に阻まれ届いていない。

 結界同士がぶつかり合うと、どちらも消滅してしまう。

 接近され、結界が破られたらどうなるか。


「その前に落とすしかない。エイト、君の出番だよ」

「え? 俺?」

「そうだ。あれの結界は、目に見える大きな魔力の流れをせき止め反射するものだ。君の言霊なら通る」

「えーっと、理屈はよくわからないけど、つまり効くんだな?」

「ああ」

「了解。じゃあちょっと行ってくる」


 外は依然荒れ模様。

 結界も雨風は防いでいないから、外に出た途端ずぶぬれになった。


「雨も止ませられたら良かったんだけどなぁ」


 何となく出来そうな気もするけど、間違いなく喉が潰れて魔力も尽きそうだ。

 それよりも今は目の前の敵を――


「【落ちろ】」


 大きく息を吸って飛ばした言霊に、スカルドラゴンが落下していく。

 こんな所で空模様なんて気にしている暇はない。

 

「青空を見るのは、魔王を倒した後にしよう」 

これにて第三章完結です!

続く第四章で、本編は完結となる予定です。

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[良い点] 書籍化おめでとう御座います!
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