表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/107

9.Bランク降格間近【追放側視点】

 カイン率いるルミナスエイジ。

 Sランクパーティーに昇格し、新進気鋭のパーティーとして注目を集めていた。

 それも少し前までの話である。

 今は別の噂がきっかけで、注目を集めていた。


「おいおい、聞いたかよ? あいつらまた依頼失敗したらしいぜ」

「ルミナスエイジだろ? あんだけ猛スピードでランクも駆け上がってたのにな~」

「だな。俺も注目してたんだけど、期待外れだったな」


 冒険者ギルドの集会場。

 別名ギルド会館の酒場では、冒険者同士の情報交換や、パーティーの勧誘が行われている。

 必然的にそこでは、他のパーティーや冒険者の噂がささやかれていた。


 新進気鋭のパーティー【ルミナスエイジ】、またも依頼失敗!


 と大々的に書かれた貼り紙すらある。

 今まで目立っていた影響が、ここに来て悪い方向へ進んでいた。


「何か最初からズルしてたんじゃねーの?」

「どうだろうな。そういや、何か一人いなくなってないか?」

「あー確かに、前は五人だったよな。つまりあれか、そいつが主力だったけど抜けちまって弱くなったっていう」

「かもな。他のメンバーが弱すぎて、愛想つかしたのかもしれないぜ」


 ガハハハと笑い声をあげる男たち。

 本人がいないことを良いことに、言いたい放題言っているようだ。

 とは言え、これは仕方がないことでもある。

 冒険者をしていれば、悪い噂も良い噂も、すぐに広まってしまうことは当たり前だった。

 カインたちもそれを理解しているし、自分たちの噂が広まっていることも理解していた。


「くそ……くそがっ! 何でこうなったんだ!」

「落ち着けカイン」

「うるせぇ! あれだけ言われて落ち着いてられるかよ!」

「だったらどうするんだ? 殴りこみでも行って、違うと否定するのか? それこそ冒険者ライセンスをはく奪されるぞ」

「くっ……」


 ルミナスエイジの面々は、隠れるように宿屋の一室に集まっていた。

 依頼を失敗するたびにギルドからは注意され、周りからは白い目で見られる。

 徐々にカインの気性も荒くなり、逆に他の三人は冷静になっている。


「次で挽回するしかないよね」

「ええ。活動資金も無限ではありませんし」

「ああ、そうだな。次の依頼は失敗できない。ここは難易度を下げてでも成功する依頼を――」

「駄目だ!」


 話がまとまりかけた所で、カインが一蹴。


「簡単な依頼なんて受けてどうするんだよ。名誉を挽回するなら、最低でもAランク以上の依頼を受けるぞ」

「待てカイン! 話を聞いていたのか?」

「うるさい黙れ! お前らは悔しくないのか? あんだけ好き勝手言われて、あげく……」

「それは……」

「悔しいけどさ」

「だったら本気を見せろよ! 死ぬ気で依頼をこなして、もう一度Sランクに戻ってやる」


 カインの意思は固く、他の三人が説得しても聞く耳を持たなかった。

 周囲の評判が悪化するにつれ、彼の視野もどんどん狭くなっている。

 それを実感している三人だったが、リーダーであるカインに対して、あまり強く出られないでいた。

 単に怖いから、逆らえないというだけかもしれない。


 そうして臨んだ次なる依頼。

 Aランク難易度で、内容は貨物を積んだ馬車十台の護衛。

 危険なモンスターが多く生息するエリアを越えるため、優秀な冒険者パーティーの力が必要とのことだった。

 Aランクの中では、比較的難易度は低いとされる依頼内容。

 モンスターの接近に注意し、指定のエリアさえ抜けてしまえば良い。

 強力なモンスターを倒す必要もないので、今の彼らでも十分にこなせる依頼だった。


 だが……


「おいカイン! 持ち場を離れすぎるな!」

「そうよ! 私たちの依頼は護衛よ!」


 カインには聞こえていない。

 依頼は護衛だ。

 守ることが任務であるにも関わらず、カインはモンスターを倒すことに躍起にやっていた。

 お陰で陣形はめちゃくちゃになり、他の三人が苦悩する。


 結果、馬車二台が破損。

 二名が負傷する事態に陥った。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「非常に申し上げにくいのですが……本部から通達がありました。もし次の依頼に失敗するようであれば、ルミナスエイジはBランクへ降格となります」

「そ、そんな……」

「なお、次の依頼はこちらで決めさせていただきますので、しばらくお待ちください」

「ま、待ってください! 本当に……降格?」

「はい。本部からの正式な通達ですので」


 護衛依頼失敗の翌日。

 ルミナスエイジに、冒険者ギルドから最終勧告がなされた。

 次にギルドから提示される依頼に失敗すれば、Bランクパーティーへ降格となる。

 Sランクに上り詰めるために二年。

 それがたった数日で、Bランクまで落ちようとしている。


「う、嘘だろ……」


 その絶望は、カインの表情を見れば明らかだった。

 自業自得の果て。

 自分たちの力が誰のお陰だったのか、もはや考えるまでもないだろう。

 エイトの喪失はそのまま、ルミナスエイジの弱体化に他ならなかった。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! URLをクリックすると見られます!

『残虐非道な女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女の呪いで少女にされて姉に国を乗っ取られた惨めな私、復讐とか面倒なのでこれを機会にセカンドライフを謳歌する~』

https://ncode.syosetu.com/n2188iz/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻1/10発売!!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

【㊗】大物YouTuber二名とコラボした新作ラブコメ12/1発売!

詳細は画像をクリック!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ