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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三章

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86.親と子の形

 魔王城の機関部。

 カチャカチャと音をたてながら作業をするインディクス。

 それをじっと見守るエリザと……


「ふぁーあ……眠い」


 欠伸をするユーレアス。

 インディクスはため息を漏らし、手を止めて振り返る。


「はぁ、ならば監視など止めて休んだらどうだ?」

「それはいけないな~ 君が余計な機能を付けないか、見張っておかないとね」

「余計な機能?」

「うん。たとえば自爆機能とかね」

「ふん。確かにこの規模の建物が爆発すれば、奴らの城も破壊できるかもしれないな。良い案だぞ」

「ちょっと~ 僕の提案みたいに言わないでくれるかな~」


 インディクスは呆れたように小さく笑い飛ばし、作業を再開した。

 その後ろ姿を眺めながら、ユーレアスはエリザをチラッと見る。

 気付いたエリザが、ユーレアスに尋ねる。


「何でしょう? マスター」

「ん? いや~ 何も起こらないな~って」

「何の話ですか?」

「いやほら、インディクスは君の元マスターで生みの親でしょ? 話しておきたいこととかないかなーって思ったんだけど」

「ありません」


 エリザは即答した。


「ないな」


 インディクスも同様に答えた。


「えぇ~ 二人ともドライだな~」

「お前は何を期待していたんだ? 私がどういう思考をしているか、その一端を知っているはずだろう?」

「そうだけどさ~ 君の言うように一端しか知らないからね。もしかすると、我が子を心配する父親のように」

「ありえないな」


 またもや即答。

 完全に否定されてガッカリするユーレアス。

 エリザは表情を変えていない。


「お前に敗れた時点で、それに興味はないと言ったろう? ましてや今、それの所有者は私ではない。どうなろうと知ったことではない」

「う~ん、酷いこと言ってるよ~ エリザだって傷つくよね?」

「いえ、ワタシは特に何も。今のマスターはあなたです」

「こっちもか! まったくよく似ているよこの親子は」

「違う」

「違います」


 二人の声が重なった。

 意外そうに互いのほうへ振り向く。


「はははっ! やはり親子だよ」

「ふん」

「……」


 何とも言えない雰囲気になる。

 そこへドカーンと爆発音が響き、部屋が揺れる。


「何だか外が騒がしいな~ ちょっと見てくるから、エリザは彼を見張っていてね?」

「了解しました」

「うん。すぐ戻るよ。アスランたちはしゃぎ過ぎじゃないかな~」


 ユーレアスはやれやれと呟いて部屋を出て行く。

 二人だけになった部屋には、作業の音だけが聞こえていた。

 ユーレアスが期待するような会話はない。

 二人の関係はもう……いいや、初めから関係などなかったかのように。


 だが――


「エリザ」


 意外にも、先に話しかけたのはインディクスのほうだった。

 彼は続けて言う。


「君も彼と一緒に行かなくてよかったのか?」

「……ワタシへの命令は、あなたをここで監視することです」

「そうか。相変わらず忠実に命令を守るだけか……あの男に預けて多少は変化があると期待したが……」

「期待? ワタシに興味がないのではなかったのですか?」

「興味と期待は似て非なるものだよ。しかし……その通りではあるな」


 再び沈黙が訪れる。

 そして、次に沈黙を破ったのは――


「元マスター」


 エリザのほうだった。


「何だ?」

「ワタシは……あなたに感謝しています」


 インディクスは思わず手を止める。

 目を見開き、驚いた顔で彼女に目を向ける。


「何だと?」

「あなたがワタシに感情を与えた。そのお陰で、ワタシは自分の意思で誰かに仕え、従うことが出来ます。ただの人形ではなく、エリザという個人として」

「……お前は勘違いをしているな」

「わかっています。あなたにとってワタシの意思など」

「違う。私がどう思うかではない。根本的な所だ」


 そう言って、インディクスは徐に立ち上がる。

 改まって彼女に語る。


「私はお前に感情を与えた。だがな? あくまで私が与えたのは、感情という名の知識に過ぎない。心などという曖昧な物は、私の手に余るのだ」

「知識……ではワタシの感情は一体……」

「それはお前自身が手に入れた物だ」

「ワタシが?」

「ああ。きっかけは私の与えた知識だろう。それを元に、お前は自らの感情を手に入れた。まさに成長というやつだな。やはり生物は面白い。私の想像を超えてくる」


 インディクスは笑った。


「そうだろう? 僕もそう思うよ」

「ユーレアス」

「マスター」


 トントンと足音をたててユーレアスが戻ってきた。


「いつから聞いていた?」

「さぁね? 親子の会話は楽しめたかい?」

「何度も言わせるな。私は親などではないよ」

「そうかな? 我が子の成長を喜ぶ姿は、親にしか見えなかったけど?」

「ふん、勝手しろ」


 インディクスは作業に戻った。

 振り返る横顔は、何だか満足げに見えた。


「親子の形は一つじゃないよ。きっとこれも、そのうちの一つなんだ」

「親子の形……」


 もしかすると、エリザがインディクスを父親と呼ぶ日がくるかもしれない。

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