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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三章

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85.答えを出すのは戦いの後で

 エイトの自室にて帰りを待つ二人。


「エイト君遅いな~」

「仕事の話をしているんでしょ。長くなるわよきっと」

「えぇ~ すぐ戻るって言ってたのにぃ~」


 バタンとベッドに倒れ込むアレクシアと、ベッドの端に座るレナ。

 二人ともエイトの帰りを待ちながら暇を持て余していた。


「いつ戻ってくるのかな~」

「さぁね。一時間くらい先かも」

「そんなに? じゃーちょっと休憩しようかな~」

「良いんじゃないかしら? 私も少し疲れたし、戻ってくるまで」


 レナが大きな欠伸をした。

 時計の針は午後八時。

 まだまだ夜は始まったばかりで、普段なら眠くならないだろう。

 今は目の前にベッドがあって、敵に襲われる危険も限りなくゼロに近い。

 そんな状況に置かれれば、勇者や精霊使いと言えど、睡魔には勝てないわけで……


「ちょっとだけ寝ましょうか」

「そうだね」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ただいま~」


 シーン。

 返事はなかった。


「あれ?」


 姿がなくて一瞬焦ったが、ベッドのほうから寝息が聞こえてホッとする。

 二人とも仲良く俺のベッドで眠っていた。

 早く戻ると言って随分待たせてしまったから、待ちくたびれたのだろう。

 そうでなくとも日頃から神経をすり減らし、戦いの疲労も溜まっていたはずだ。

 目の前にフカフカのベッドがあれば、その誘惑には誰も抗えない。

 俺も普段通りなら、迷わず飛び込んでいたと思うけど……


「さすがに気が引けるな」


 女の子二人が寝ているベッドに、後から入る後ろめたさを感じる。

 二人なら喜んでくれそうだけど、姫様から告白された今は、特に悪いことをしている気がしてならない。

 俺はとりあえず、ベッドの横に腰を下ろした。

 スゥースゥーと気持ちよさそうに寝息を立てている。


「疲れていたんだな。二人とも」


 連戦が続いていたし当たり前だ。

 幹部との戦いは特に、肉体的にも精神的にもダメージを受ける。

 彼女たちでなければとっくに音を上げているだろう。

 そしてこの先は、もっと過酷になる。

 幹部の残り一人、魔王の側近と、彼らを束ねる魔王リブラルカ。

 先代を殺した悪魔……俺自身にとっても因縁の相手だ。


「悩んでる場合じゃないんだよなぁ……」


 わかっていても、彼女たちを見ていたら考えてしまう。

 好きだと言ってくれたことを。

 身体を重ねて、確かめ合った記憶も新しい。

 そしてもう一人、思いを伝えてくれた人の優しい笑顔も脳裏に浮かぶ。


 みんなの気持ちに応えたい。

 誰を選ぶことが正解なんだろう。

 選んだとして、全員が幸せになれるのかな?

 もしかしたら、誰も選ばないという選択のほうが……


「あー駄目だ駄目だ! 今考えたってわかるわけない!」


 心に糸が絡まって解けなくなっている感じがする。

 ふと、姫様の言葉を思い出す。

 

 魔王を倒した後ならば、選択肢も広がるかもしれません。


 未だにどういう意味かわからない。

 ただ、魔王を倒して、人々に平和をもたらした後。

 背負った使命から解放された時なら、グルグルに絡まった心の糸を解く時間もあるだろう。


「そうだな。まずは魔王を倒してからだ。その後でちゃんと考えよう」


 まるで魔王を倒すことが前座のような考え方だ。

 でも、もしかすると俺にとっては、魔王よりも手ごわい相手かもしれないから。


「ぅう~ エイト君~」

「アレクシア? 起こしちゃっ――ちょっ!」


 彼女に手を引っ張られて、そのままベッドに寝転がる。

 アレクシアは俺の右手に絡まっている。


「えへへ~ ぎゅぅー」

「アレクシア?」


 寝ぼけているのか。

 幸せそうな顔をして寝息をかきだす。

 今度は左腕にレナが抱き着いてきて……


「逃がさない……わ」


 彼女も眠ったまま、俺のことを離さない。

 二人に抱き着かれたまま、俺は動けなくなってしまった。


「はぁ……やれやれ」


 結局こうなるのかと、呆れてしまった。

 二人とも気持ちよさそうに寝ているし、起こすのは可哀想だ。

 俺も疲れているし、このまま眠ろう。


 目を瞑って眠りに落ちる。

 その直前に、一つだけハッキリとわかったことがある。


 俺はやっぱり、二人のことが大切で、大好きなんだと。

 一緒にいられて幸せだと感じる。

 こんな日が、ずっと続いてくれれば良いのに。


 そう、心から思った。


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