表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/107

82.懐かしく感じる

 転移の水晶。

 同じ水晶同士をつなぐ魔道具。

 魔力を込めることで発動し、有効範囲内にいる者を対となる水晶へ転移させる。


「じゃあ行ってきます」

「うん。何かあったら連絡しに行くから、いつでも戻れる準備はしておいてね」

「はい」


 転移発動。

 光に包まれて視界が真っ白になり、次に見えた景色は王城の一室だった。


「研究室?」

「ここ俺の部屋だ」

「エイトの?」

「本当だ! 前に来たことあるから知ってるよ!」


 王都を出てからそんなに長い時間は経っていない。

 冒険者として過ごした期間のほうが圧倒的に長いし、この部屋で過ごしたのも一月前後だ。

 それなのに凄く懐かしく感じてしまうのは、これまでの旅が劇的だったことと、この場所の居心地が良かったからだろう。


「ここで寝泊まりしていたの?」

「ううん。ここは仕事部屋だからね。寝室は別であるんだよ」

「へぇ~ 良待遇ね」

「一応これでも宮廷付きだからね」


 最初の頃は自分でも信じられなかったけど。

 

「そう。なら今夜は私もエイトの部屋で寝るわ」

「あーずるいよレナ! ボクもエイトと一緒のベッドが良い!」

「え、あ、いや確かに大きいベッドだけど、さすがに三人も一緒だと狭いよ?」

「大丈夫!」

「くっつけば問題ないわ」

「そうそう! 問題ないよ!」


 いや……問題はあるだろう。

 ここが王城だってことを忘れてないか?


 トントントン――


 不意に扉をノックする音が響く。

 俺たちは扉へ視線を向ける。


「誰かいるのですか?」


 この声は……


 ガチャリと扉が開く。


「ここはエイトの作業部屋です。許可なく立ち入っては――エイト?」

「はい。ただいま戻りました、姫様」

「エイト!」


 パァと姫様の表情が明るくなる。

 勢いよく俺の近くまで駆け寄ってきて、両手を握る。


「お帰りなさい! いつ戻ってきていたのですか?」

「ついさっきです。余裕が出来たので、旅の報告もかねて一度戻ることなって」

「そうだったのですね。元気そうで良かった」

「姫様も」


 姫様の声を聞いていると安心する。

 それに元気そうでホッとした。


「あの~」

「私たちもいること忘れてるわよね?」

「え、あ、アレクシアにレナさんも」

「今気づいたの!?」

「そうみたいね。というよりいつまで手を繋いでいるのかしら?」


 レナに言われて気付き、姫様が慌てて手を離す。

 恥ずかしそうに頬を赤らめていた。

 そんな表情をされると、俺も恥ずかしくなってしまう。


「ねぇレナ……」

「言わなくても大丈夫よ。同じこと考えているから」


 ギロっと二人が俺を睨んできた。

 何で睨まれているんだろう?


「え、えっと報告をしてもいいですか?」

「あーでしたらロランド騎士団長も交えて」

「そうですね」


 一先ず場所を移すことになった。

 道中、二人に両脇をつねられてわかった。

 我ながら気付くのが遅い。

 二人とも嫉妬していたのだろう。


 廊下を歩き、別の部屋に入る。

 部屋にはすでにロランド騎士団長が待機していた。

 俺たちが顔を出すと、彼は驚いたように目を丸くして立ち上がる。


「勇者アレクシアにレナ殿、それにエイト殿も!」

「お久しぶりです。ロランド騎士団長」

「ああ。しかしなぜここに?」

「彼らは旅の報告に来て下さったのです。経緯は今からお話していただきます」


 姫様が俺に視線を送る。

 お願いしますという合図だ。

 俺は旅の経過と、これからの決戦についてを説明した。

 説明を終えると、騎士団長は噛みしめるように言う。


「な、なるほど……色々と驚かされたが、遂に魔王を倒すときが来たのだな」

「はい。あと一歩です」

「そうか。ようやく平和が……」


 騎士団長は嬉しそうに笑顔を見せる。

 でもすぐに真剣な表情に戻って、自分の報告を始めた。


 どうやら俺たちが旅を続けている間に、他国との間で小競り合いがあったらしい。

 元々友好的ではない国同士。

 魔王討伐に戦力を削いでいる今がチャンスと考えて、戦争をしかけてくる気配があったそうだ。

 今は友好国と協力して、戦争を未然に防ぐ努力を続けている。


「しかし時間の問題だ。準備が完全に整えばあちらは攻めてくる」

「呆れる話ね。人類の危機だっていうのに」

「本当だよ。なんで協力できないのかな~」


 俺もそう思うけど、悪魔同士で争っているのと同じように、人間でも分かり合えない相手はいる。

 目先の利益しか見えていない者と、先の未来を見据えている者では、どうしたってかみ合わないだろう。


「魔王討伐が近いことは我々にとっては朗報だ。魔王を倒せるほどの者たちがいる。そう認識すれば、さしもの彼らも引き下がるだろう」

「ボクたちが勝てば戦争を未然に防げる?」

「ああ」


 戦う理由がまた増えたな。


「報告は以上ですが、皆さんはこの後どうされるのですか?」

「一晩はこっちで過ごす予定です。出発までに二日かかるので」

「そうですか。でしたらエイトは自室がありますし、二人の部屋を用意しますね」


 姫様がそう言った後、俺は嫌な予感がした。


「その必要ないわ」

「ボクたちはエイト君の部屋で一緒に寝るから!」

「……え?」


 嫌な予感は早々に的中した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! URLをクリックすると見られます!

『残虐非道な女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女の呪いで少女にされて姉に国を乗っ取られた惨めな私、復讐とか面倒なのでこれを機会にセカンドライフを謳歌する~』

https://ncode.syosetu.com/n2188iz/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻1/10発売!!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

【㊗】大物YouTuber二名とコラボした新作ラブコメ12/1発売!

詳細は画像をクリック!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
― 新着の感想 ―
[良い点] 姫激怒のターンですかね [気になる点] 今更だけど自分の趣味的にはハーレム展開はやめて欲しかったな これで更に姫まで増えるのだろうか 王が許さないと思うけど
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ