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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三章

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80.みんなと一緒なら

「な、何じゃあれは!」

「巨人? 魔力の塊か?」


 実態がつかめない。

 モンスターの類ではないし、悪魔とも違う気がする。

 感じる雰囲気から、近いものを探る。


「アンデッド?」

「まさか! あんなアンデッドみたことないのじゃ!」

「俺だって初めて見るよ」


 アンデッドというより、死霊というべきか。

 臨世で戦った時、一時的に魂を操った。

 その時の感覚に似ている。


「そうか……そうだったんだ」

「アレクシア?」

「何がじゃ?」

「モードレスの人格を作っていたのは、勇者だけじゃないんだ。聖剣で斬られた悪魔たちの恨みも一緒に詰まっていたんだよ。それが今……解き放たれたんだ」


 そうか。

 アレクシアの話を聞いて、モードレスの発言をいくつか思い出した。

 彼はアレクシアに対して、何度も憎いと口にした。

 冷静に考えればおかしな話だ。

 モードレスが裏切られた勇者たち、彼らの負の感情で形成されているのだとして、どうして同じ勇者である彼女に憎しみを向ける?

 あの時、アレクシアを憎いと言ったのは勇者たちじゃなくて、勇者に敗れた悪魔たちの怨霊だったんだ。


「つまりあれは、悪しき魂たちなのですね?」

「フレミアさん! 傷は大丈夫なんですか?」

「ええ」


 フレミアさんの後ろから、他のみんなも一緒に歩いてきていた。


「みんな!」

「アレクシアは頑張り過ぎなのよ」

「えへへ、ごめんねレナ」


 アレクシアは嬉しそうに笑う。

 レナの後ろには、セルスさんの姿もあった。

 ルリアナが気付いて声をかける。


「爺!」

「お見事でした。ルリアナ様」

「傷はもう良いのか?」

「はい。フレミア殿に治療して頂きましたので。あれだけの傷を一瞬で治療してしまうとは、やはり聖女ですね」

「ふふっ、ありがとうございます」


 ルリアナは安堵して、瞳から涙がこぼれそうになる。


「まだ終わっておらんのじゃな!」

「はい」


 そう言って涙を拭う。


「なぁあれ、何で襲って来ねぇんだ?」

「おそらくだけど、依代から切り離されて不完全なんじゃないかな? それとインディクスから耳より情報も持ってきたよ!」


 ユーレアスさんはそう言いながらインディクスを指さす。

 みんなの視線が彼に向き、目が合って詰まらなそうに目を逸らす。


「あれは不純物が大量に混ざっているそうだ。純粋な霊ではない。だから聖属性じゃなくても、普通に攻撃して効果があるみたいだよ」

「なるほどな。そんじゃ遠慮なく行こうか」

「さっきはボコボコにされたし、ストレス発散させてもらおうかな!」

「動機が不純ね」

「いつものことですよ」


 みんな平常運転。

 怪我は治っているようだし、やる気満々だ。


「よし。アレクシア、ルリアナも」

「うん」

「そうじゃな」


 最後の一仕上げを済ませよう!

 巨人が動き出す。

 と同時に、アスランさんが槍で足を貫き、レナがゴーレムを生成して押し倒す。

 それぞれがやりたいように戦い、巨人を削る。


 時間的には五分もかからなかっただろう。

 見上げる程大きかった巨人は、跡形もなく消滅した。


「ふぅ」

「今度こそ終わりだよ。ほら見て、鎧もなくなってる」


 アレクシアが指さした窪みには、モードレスの鎧が転がっていた。

 それが今はなくなっている。

 これはただの予想だけど、モードレスは剣に勇者たちの後悔が、鎧に聖剣で斬られた悪魔たちの怨念が宿っていたのかもしれない。


「強敵だったな」

「当たり前だよ。世界を何度も救った人たちの力なんだから」


 そう言って、アレクシアは下を向く。


「不安か?」

「……うん、少し」


 同じ勇者たちの後悔を目にして、彼女の心は揺らいでいる。

 不安にならないほうが難しい。

 魔王を倒した後の世界が、果たして本当に平和になるのか。


「もしかしたら……ボクも……」

「それはない。絶対にないぞ」

「エイト君?」

「俺が後悔なんてさせない。仮に世界中が敵になったとしても、俺はアレクシアの味方だ。ずっと」

「エイト君……」

「ちょっと、何一人で格好つけてるの?」


 トンと軽く背中を押してきたのはレナだった。

 一緒にユーレアスさんたちもいる。


「私たちを忘れるんじゃないわよ」

「そうだぜ」

「僕たちは仲間じゃないか」

「この先もずっとです」

「みんな……」


 ありきたりで、ベタな言葉ばかりだ。

 だけど、そんな言葉をハッキリと言える。

 俺も、皆も、もちろんアレクシアも。


「そうだね! みんな一緒なら大丈夫だ!」


 俺たちは勇者パーティ。

 人類の命運を背負った者たち。

 死線を潜り、助け合ってきた掛け替えのない仲間たちだ。

 

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[一言] 帝国から真魔王の登場があったりして!( ̄□ ̄;)!!
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