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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第一章

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8.宮廷付与術師になりました

「ただいま戻りました。姫様」

「エイト! 皆さんも……よくご無事で」


 リッチーとの戦いを終え、俺たちは王城へ帰還した。

 そんな俺たちを最初に出迎えてくれたのは、なんと姫様だった。


「皆さんが戻られたということは、リッチーを討伐できたのですね?」

「はい、何とか」

「そうですか。良かったです。これでもう、犠牲者が増えることはないのですね」

「ええ。アンデッドの群れも退治しましたので」


 姫様は心の底から安堵している。

 そうだとハッキリ伝わるくらい、安心しきった笑顔を見せていた。


 場所を移し、城内の一室に入る。

 部屋の中には俺と姫様、それにロランド騎士団長もいる。

 リッチー戦の詳しい報告を、団長から姫様に伝えてもらった。


「では、こちら側の死傷者はいないのですね?」

「はい。軽症の者が数名いるだけです。すでに白魔導士が治癒を施していますので、何の問題もないかと」

「そうですか。素晴らしい戦果ですね。リッチーとアンデッドの群れを相手に、たったこれだけの被害で済むなんて」

「ええ。私も信じられないくらいです。これも全て、エイト殿のご助力があってこそだと思います。彼こそ百年、いえ千年に一人の逸材でしょう」


 騎士団長は大げさに、声量を上げて俺を褒めてくれた。

 嬉しいけど、さすがに褒め過ぎじゃないかな。


「買い被りですよ。俺はそんな大したことしてませんし」

「何を言うか。リッチーを倒したのは君だ」

「それはそうですけど、皆さんがアンデッドの群れを引き付けてくれていたお陰で、リッチーに隙が生まれたんです。もし純粋な魔法の撃ち合いとかになっていたら、さすがに厳しかった」

「仮にそうなっていたとしても、エイト殿なら何とかしていただろう。リッチーを倒した手際を遠目に見ていたが、あそこまで的確な動きが出来る者もそうはいない」


 そうなのかな?

 あんまり自覚はないけど、もし騎士団長の言う通りなら、たぶん冒険者を続けてきた二年の経験があるからだろう。

 曲がりなりにも俺は、最前線で戦うSランクパーティーの一員だったんだ。

 モンスターの動きとか習性はもちろん知っているし、色々な場面にも遭遇してきた。

 ずっと見て学んできたことが、こうして実際に戦ってみて発揮されたのだとしたら、それは少し嬉しく思う。

 彼らと過ごした二年間も、決して無駄ではなかったんだな。


 そう思うと自然に、表情が綻んでいた。


「姫様! エイト殿の宮廷付きの件、私からも強く推薦します! エイト殿の助力があれば心強い」

「ありがとう。騎士団長もそう言っていることですし、私から推薦する必要もないかもしれませんね。お父様には手紙で連絡しておきます」

「では?」

「はい。今、この場をもって、あなたを宮廷付与術師に任命します」

「あ、ありがとうございます!」


 嬉しさのあまり、俺は勢いよく頭を下げお礼の言葉を口にしていた。

 宮廷付与術師になれる。

 これで俺も、城で働くことが出来るんだ。

 そして何より、認めてもらえたことが嬉しくて、心が震える。


「正式な決定は、お父様からの返事が来てからになりますが、間違いなく受理されるでしょう。私と騎士団長の推薦に、リッチー討伐の功績もありますから」

「返事が来るまでの間は、騎士団の隊舎を自由に使ってもらって構わない」

「良いんですか?」

「ああ。エイト殿なら大歓迎だ。皆もそういうはずだろう」

「ありがとうございます」


 ちょうど宿屋も引き払って、住む場所を探そうと思っていた。

 住まわせてくれるなら有難い。

 宿を探す手間が省けたぞ。


「ありがとうございます」



 それから三日間、俺はお城で過ごした。

 騎士団隊舎は想像以上に広くて快適だったよ。

 騎士の皆も優しくて気前が良いし、話して楽しかった。

 ただ、体験として訓練にも混ぜてもらったけど、あれはきついな。

 一日でも十分すぎるくらいに疲れたよ。

 よくあんなに厳しい訓練を、毎日続けられるなと感心した。


 そして――


「お父様からお返事が届きました。これで正式に、宮廷付与術師として認められましたね」

「ありがとうございます」


 姫様から制服も支給された。

 宮廷付きであることの証明に、胸の部分には王国の紋章をモチーフにした刺繍が施されている。

 全体的に白くて派手なデザインだ。

 

「よく似あっていますよ」

「そ、そうですか?」


 冒険者の服装は、基本的に地味で目立たないものが多い。

 それとは正反対な服装に、少し戸惑っていた。


「この服を着ていれば、誰も一目で、エイトが宮廷付きであることがわかります」

「宮廷付き……何だか夢みたいだな」


 少し前までは、パーティーを追い出されて途方に暮れていた。

 それが今や、お城に仕える身とは……人生、何が起こるかわからないな。


「あの、姫様」

「はい?」

「実は俺……姫様と会う前に、パーティーを追い出されたんです」

「そうだったのですか?」


 なぜ急に話そうと思ったのか。

 自分でも不思議だったけど、すぐにわかった。

 姫様には、他人の命を心から尊ぶ優しさがある。

 そして俺の成果を、ちゃんと認めてくれた。

 彼女になら話しても大丈夫だと、むしろ隠さず話すべきだと思ったんだ。


「姫様、俺を雇ってくれて……本当にありがとうございます」

「頭を上げてください」


 姫様は優しく、ニコリと微笑む。


「やはり私は、幸運に恵まれていたのですね」

「え?」

「エイトにとっては不幸続きだったと思います。それでも私は、そのお陰でエイトに出会えました。騎士団の皆さんも、きっと同じ気持ちでしょう。これはそう、幸福の恩返しです」

「姫様……」


 出会えたことが幸福だと。

 そんな風に言ってくれたのは、姫様だけだった。

 俺はこの時、一生この人の笑顔を守っていきたいと、心からそう思ったんだ。

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