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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三章

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76.勇者vs勇者の遺物

「勇者、勇者、勇者あああああああああああああああ」

「そうだよ! ボクは勇者だ!」


 聖剣と聖剣だったもの。

 二つの強大な力がぶつかり合い、周囲が無秩序に揺れる。

 モードレスが持つ聖剣は、すでに淀み歪んでしまっている。

 聖なる力は宿っていない。

 輝かしい光は影となり、聖なる力は反転して、邪悪な負の力に変わっている。


「憎い! 裏切る! 裏切るぞおおおおおおおおおおおおおおお」

「っ、重い」


 モードレスの剣を受け止めるアレクシア。

 その一撃は思わず口に出してしまうほど重く、彼女の足元が衝撃でひび割れている。


「アレクシアが押されているね」

「当然だ。あれは元聖剣で、過去の勇者たちの力が蓄積されていると言っただろう? いわば何人もの勇者を相手にしているようなものだ。単騎で勝てる見込みのほうが薄いだろう」

「解説どうもありがとう。ところで――」


 インディクスはその場を立ち去ろうとしていた。

 ユーレアスさんがそれに気づき彼に指摘する。


「どうして逃げようとしているのかな?」

「奴の狙いは私だろう? だが今、奴は眼前に現れた勇者に夢中だ。逃げるなら今しかないと思うが?」

「そうかそうか。でも駄目だよ? 君もここに残るんだ」

「なぜだ? あれが相手では、私はさして戦力にもなるまい」

「まだ城の修繕が終わっていないじゃないか。それが終わるまでは残ってもらう。エリザ、彼が逃げ出さないように見張っていてくれるかい?」

「了解しました」

「……やれやれ」


 インディクスはため息を漏らし足を止める。

 ユーレアスさんが戦っている二人に視線を戻す。


「さて、僕らも援護に加わるよ。倒すことは出来なくとも、動きを止めることは出来るはずだ」

「おう!」


 アスランさんが槍を構え、戦っている二人の間に入る。

 アレクシアが一旦下がりモードレスと交戦を開始するアスランさん。

 彼の槍はあらゆる防御を貫通する。


「チッ、やっぱ貫けないか」


 ただし、力の密度で勝る相手には通じない。

 彼の槍はモードレスの鎧に弾かれてしまった。

 モードレスが剣を上段に構える。


「させないわよ」


 レナがモードレスの足元を揺らし、地面を突き上げる。

 体勢を崩したが、一瞬で立て直して突きあがった地面から跳び避ける。


「立て直しも速いわね」

「いいや十分さ!」


 ユーレアスさんの魔法陣がモードレスの頭上に展開される。

 

「ダウンバースト」


 地形すら抉る下降気流がモードレスを圧し潰す。

 見た目ほどのダメージはないが、一時的に動きを封じた。


「アレクシア! 今だよ!」

「うん!」


 その隙を突いてアレクシアが聖剣を振り上げる。

 モードレスはうつ伏せになって地面に倒れている状態だ。

 体勢も悪く、回避は出来ない。


 だが、反撃が来る。


「なっ、くっ!」

「アレクシア!」

「だい……丈夫!」


 反撃を受け流したアレクシアは空中で一回転して着地した。

 左腕から血が流れている。

 フレミアさんの治療を受けながら、立ち上がったモードレスを見る。


「あれは……黒い茨?」


 モードレスの身体から、漆黒の茨がウネウネと伸びている。

 動けなかった彼は、黒い茨を放つことでアレクシアに反撃、負傷させた。

 黒い茨を纏った漆黒の鎧騎士。

 手にした剣は黒く歪んで、力にも輝きはない。

 その見た目は騎士から遠のき、魔物に近づいているようにさえ思える。

 きっと、誰もが思うだろう。

 

 あれが……


「本当に勇者だったの?」


 口に出したのはアレクシアだけだった。

 だけど俺も、心の中に同じことを呟いていた。

 見れば見るほどに信じられなくなる。

 目の前に現代の勇者がいるから余計わからなくなってしまう。

 一番わからなくなっているのは、勇者であるアレクシア自身だと思う。

 そんな彼女にユーレアスさんが言う。


「アレクシア。悩むのは後にしなさい。目の前にいるのは、僕たちの敵だよ」

「……うん」


 冷たい言葉ではある。

 それでも俺は、ユーレアスさんの言葉が正しいと思った。

 アレクシアが何を考え、何を迷っているのかは何となくわかる。

 彼女は純粋で優しいから、考えすぎるほど剣が振るえなくなってしまう。


 モードレスが動き出す。

 さっきまでより速い。

 一瞬でアレクシアの前に迫る。


「【動くな】」


 振りかぶった腕がビクッと震えて止まる。

 止められたのはわずか一瞬だけ。

 アレクシアはその一瞬で後退して聖剣を構えなおす。


「ありがとう! エイト君」

「ああ」


 言霊は通用する……けど、一瞬だけだ。

 その一瞬を止めただけで、喉に痛みが走った。

 つまり、それだけ格上。


「アレクシア。ユーレアスさんの言う通りだ。今は悩んでいる場合じゃない」

「エイト君」

「もうわかってるはずだ。あの騎士は、他事を考えながら戦えるような相手じゃない」

「……うん」


 全力を出さなければ勝てない相手だ。

 それも一人じゃ足りない。

 全員で連携して、どうにかアレクシアの聖剣を届かせる。

 隙がない相手に隙を作るんだ。


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