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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三章

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70.感謝しかありません

「君の名前を教えてもらえるかな?」

「エイトです」

「エイト、どうか娘に力を貸してほしい。共に戦い、リブラルカを止めてくれ。そして娘を救ってくれないだろうか?」


 先代魔王は俺に懇願する。

 人間である俺に、頭を下げようとしていた。

 それをルリアナが止めるように言う。


「父上! こいつは人間じゃ! 人間の力なんて必要ない!」

「いいや、彼の力がなければお前は負ける。私の見た未来を変えるためには、彼の力が必要なんだ」

「で、でも……」


 ルリアナは納得できないだろう。

 俺に父親の力が宿っているとしても、いきなりそんな話をされて、じゃあ仲良くしようなんて出来ない。

 俺は人間で、彼女は悪魔。

 俺は勇者パーティの一員で、彼女は魔王の娘。

 本来、こうして話をしていることが不自然なのだから。


「ルリアナ、お前の母さんはね? 人間なんだよ」

「……え」

「ずっと黙っていてすまないね。これを知られると、お前を危険に晒すとわかっていた。アリシアにも、言わなくて良いとお願いされていたんだ」


 アリシアというのは彼女の母親の名前だった。

 彼女の母親は、彼女が物心つく前に亡くなっている。

 ルリアナも朧げにしか、母親のことを覚えていなかった。


「つまり彼女は、人間と悪魔の混血?」

「そうだよ」

「母上が……人間? で、でも父上は魔王城に人間は入れちゃダメだって!」

「ああ、それも自分で破っていたんだよ。アリシアが人間だと知っているのは、私とごく一部の者だけだ。セルスもその一人だよ」

「爺が?」

「そうだ。元々彼が、森の中で怪我をしていたアリシアを見つけてくれたんだよ」


 出会いは偶然だった。

 未来視など使っていない。

 ただの偶然で、二人は出会い、恋に落ちた。

 悪魔の中には人間を見下している者も少なくない。

 アリシアは正体を偽り、魔王城で暮らしていた。

 決して楽な毎日ではなく、危険と隣り合わせだった。

 それでも楽しかったと、最後にいつも笑顔で話していた。


「そうしてお前が生まれたんだ。お前は小さかったから、あまり覚えていないかもしれないけど、泣いているお前を彼女が抱くと、すぐに泣き止んで嬉しそうにしていたね」

「……それくらい覚えてるのじゃ」

「本当かい?」


 ルリアナが小さく頷く。


「顔は……わからないけど、温かくて気持ち良かったのじゃ」

「そうか」


 サタグレアは嬉しそうにほほ笑む。


「アリシアはよく言っていた。いつか、人間と悪魔が一緒に暮らしても良い世界になってほしいと。自分たちのように、幸せになれる未来が来ることを願っていた。私も同じ気持ちだったよ。種族の違いが何だ。そんなもの……愛し合ってはいけない理由にはならない。だが、人間と悪魔は敵同士……それが世界の常識になっている。だから変えたいと本気で思ったのは、ちょうどお前が生まれた時だ」

「妾が?」

「そうだよ。生まれてくるお前が、何より幸せになってほしかった。人間だろうと、悪魔だろうと関係ない世界なら、堂々と生きられる。隠すことも、偽ることも必要ない。そのためにはまず、悪魔たちの認識を改める必要があった。結局それも失敗してしまったが……」


 サタグレアは悲しそうな顔を見せた後、決意したように俺を見る。


「エイト、もう一度改めてお願いする。リブラルカを止めてくれ。彼を止めなければ、取り返しのつかない所まで行ってしまう。どちらかが滅びるまで戦い続けてしまう」


 サタグレアは頭を下げて言う。

 ルリアナも止めない。

 悔しそうな表情は変わらないようだけど。


「君にとっては、勝手に選ばれてしまっただけだ。私の問題に巻き込んでしまって申し訳ないとも思う。私のことは恨んでくれても構わない。だが、どうか……」


 必死に頭を下げてお願いする姿。

 以前にも、似たようなことがあったな。

 今度は先代魔王、悪魔たちの王様だぞ。


「そんな風に言わないでください」


 巻き込んでしまったなんて、言わないでほしい。

 申し訳ないと思わないでほしい。


「俺は……今日までいろんな人に感謝してもらえました。誰かを助けたり、一緒に戦えているのは、この力があったからです。もしも選ばれていなければ、俺はみんなと出会うこともなかったでしょう。今の俺があるのは、貴方が選んでくれたからだと思います」


 今まで何度も、この力に助けられてきた。

 力に頼らなければ切り抜けらない場面もあったし、助けられない命もあっただろう。

 

「だから、恩返しをさせてください。俺を支えてくれた力が、貴方がくれたものだというのなら、今までの分を、貴方に返したい。俺のほうからもお願いします。俺に――貴方の夢を、手伝わせてください」


 そうして俺も頭を下げた。

 今の俺は、感謝しかしていない。


「ありがとう」


 頭を上げると、彼はホッと胸をなでおろして言う。


「君に力が届いてくれたことを……心から嬉しく思うよ」


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