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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三章

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66.ルリアナとセルス

新作もよろしく!

 魔王城内部に入る。

 いや、厳密には旧魔王城と呼ぶべきだろう。

 エリザが話してくれた情報通りなら、ここは先代魔王の城だ。

 そして今、俺たちの前に座っている二人が、その先代と関係のある悪魔たちだと思う。


 赤黒い髪と赤い瞳の十歳ぐらいの少女。

 隣に立つ白髪に執事のような服を着た老魔が、頭を下げて言う。


「まず感謝を。先ほどは魔王様を救って頂きありがとうございます」

「い、いえ元はと言えば俺の所為ではあるので」


 俺が言霊で動きを止めなければ、彼女も落下することはなかったのだろう。


「受け止めてくださったことは事実です。不甲斐ないことに私は間に合わなかった。それどころか、聖女殿に治療して頂かなければ、あの場で命を落としていたでしょう」


 老魔がフレミアさんに視線を向け、深々と頭を下げる。


「感謝いたします」

「お気になさらないでください。それに私は、聖女と呼ばれるほど偉くはありませんよ」

「いいえ、貴方の力は聖女と呼ぶにふさわしい。あれだけの傷を一瞬で癒すなど、かつての魔王様に匹敵する」


 かつての魔王、という言葉が引っかかる。

 話の途中ではあったけど、俺は老魔に尋ねる。


「かつての魔王というのは、先代という意味ですか?」

「はい」

「ではこの城も?」

「はい。先代の魔王様……サタグレア様の城です。そしてこの方こそ、先代魔王様のご息女ルリアナ様です」

「先代魔王の子供?」


 ルリアナと目が合う。

 睨んでいるわけでもなく、恐れている様子もない。

 ただ俺のことをじっと、観察しているように見えた。


「申し遅れました。私はセルスと申します」

「ボクはアレクシアだよ!」

「レナよ」

「アスランだ」

「フレミアです」

「僕はユーレアス。隣にいる彼女は」

「エリザです」

「俺はエイトです。セルスさんは、先代をご存じなんですね?」


 自己紹介の終点で、俺は疑問に思っていることを尋ねた。

 セルスさんは頷き答える。


「私は先代より魔王様の側近の任についています。現在はルリアナ様の……魔王様の側近です」

「なるほど」

「違うのじゃ」


 ルリアナが何かを否定した。

 そのまま続ける。


「妾は魔王ではないのじゃ。まだ……父上にはなっていない。じゃから爺も妾を魔王と呼ぶな! いつも言っておるじゃろう」

「しかしあなたは先代のご息女、次代の魔王となるお方だ」

「じゃが魔王は別におるじゃろ! あの裏切者を倒すまで、妾は魔王を名乗らん」

「……」


 二人の話がつまり、深刻そうな表情を見せるセルスさん。

 蚊帳の外の俺たちだったが、ユーレアスさんが二人の間に飛び込む。


「その辺りが疑問だったのですよ。この地に先代魔王がいたとして、今まで我々はそれを知らなかった。いや、我々の領土に侵攻を開始したのは、現魔王の体制になってからなのでしょう。現魔王誕生の経緯を、もしよろしければ教えて頂けませんか?」

「……ルリアナ様」

「良い。爺の好きにせよ」

「はい。では私からお話いたします」


 セルスさんは一呼吸おいて、改まって話し出す。 

 ルリアナは不機嫌そうだが、俺たちは構わず耳を傾ける。


「現在魔王を名乗っているリブラルカは、先代魔王様の配下……私と同じ側近でした」

「なんと」


 ユーレアスさんが驚く。

 セルスさんが話を続ける。


「私と同じく魔王様に忠誠を誓い、魔王様のために命を使い果たす。魔王様の強さ、偉大さに惹かれて、この方に全てを捧げようと……同じ志を持っていました。ですが……奴は魔王様の考えにはあまり賛同してなかった」


 先代魔王サタグレア。

 セルスさん曰く、悪魔とは思えない程優しい方だったという。

 悪魔たちの繁栄を何より願い、強大な力を有して尚、戦いを好まない性格だった。

 無益な争いなど起こしてはならない。

 人間とも共存の道を考えるほど。

 しかし、その考え方に否定的な者たちがいた。

 その筆頭が当時の側近リブラルカ。

 魔王の力に憧れながら、甘い考え方だけは理解できなかった。

 人間の領地を侵略し、自分たちの領土にしようと考えて、何度も上申しては断られていた。


「リブラルカに賛同する者も多くいました。次第に魔王様を否定する勢いが膨れ上がり、大波となって押し寄せ……反逆という形で」


 リブラルカが賛同する者たちを統率し謀反を起こした。

 配下の半数が敵に回り、血みどろの戦いが繰り広げられ、最終的にはリブラルカが勝利を納めた。


「私とルリアナ様が生きているのは、魔王様が逃がしてくださったからです。こんな戦いに意味はない。私が何とかするまで待っていてくれと……」


 だが、リブラルカに敗れ、先代は殺されてしまった。

 先代を倒したリブラルカが新たな魔王となり、人間界への侵攻を開始する。

 それが魔王の始まりだと、俺たちは思っていた。


「だから裏切り者と」

「はい。私たちの目的は、リブラルカを打倒し、悪魔領の支配権を取り戻すことです。そのためには力が足りない……勇者殿」

「は、はい!」

「どうか我々に力を貸していただけないでしょうか? 我々の目的と、あなた方の目的は一致しているはずです。そして我々は人間との争いを望んでいません」

「え、えっと……」


 突然お願いされて、アレクシアは戸惑っていた。

 キョロキョロ俺たちに視線を送って、助けを求めている。

 やれやれと身振りを見せ、ユーレアスさんが代わりに言う。


「僕らとしても、それは悪くない提案ですね」

「駄目じゃ」

「おや?」

「ルリアナ様?」

「やっぱり駄目じゃ! 勇者などと手を組むなどありえん! 魔王になる者が、人間の手を借りるなどあってはならんのじゃ!」

「ですがルリアナ様、我々だけでは」

「うるさい! 父上なら一人でも戦えたのじゃ! なら妾がもっと強くなればよい!」


 そう言ってルリアナは立ち上がり、部屋を出て行こうとする。


「ルリアナ様!」

「話は終わりじゃ」


 バタンと扉を閉め、ルリアナは俺たちの前からいなくなった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 「はい。先代の魔王様……サタグレア様の城です。そしてこの方こそ、先代魔王様のご子息ルリアナ様です」 一人称から少女だと思っていました。
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