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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三章

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63.魔王城を守る老魔

 もう一人の……否、先代魔王の存在が浮かび上がる。

 それが今、目の前にいるかもしれない。

 急激に緊張感が高まり、自然と喉が渇いてくる。

 しばらく無言のまま時間が過ぎ、アスランさんが全員に対して言う。


「どうする?」


 こういう場合の判断は、いつもユーレアスさんに任せる。


「そうだね。もう少し様子を見ようか? さっきの揺れがあの城から発生しているのなら、どういう理由なのかわかると楽だ。せめて攻撃なのか、それ以外なのかの判断はしたいね」

「了解だ。見た感じ正面じゃなさそうだし、反対に周ってみるか?」

「ああ。罠があるかもしれないし、警戒は怠らないように。それとアレクシアは、魔王が出てきても突っ込まないでね?」

「そ、そんなことしないよ! 子供みたいに言わないでほしいな」

「そうだったね~ エイト君のお陰で、アレクシアも大人になったものだ」

「うぅ……」


 この状況でからかう余裕があるのか。

 一番警戒していないのはユーレアスさんなのでは?

 と思いながら外周を歩く。

 くぼみが出来ている周りは建物らしいものもなく、生物の気配もない。

 これだけ広い森なら、動物の一匹や二匹いてもおかしくなさそうだが……


「さっきの揺れが頻回に起こっているなら、動物たちも怖くて逃げ出すだろうね」


 と、ユーレアスさんは話していた。

 そして半周した所で、魔王城の正面が見える場所に到着する。


「誰もいない?」

「この距離だと魔力も感じられないね。やっぱり近づくしかないかな」

「危険だが……まぁそうだな。全員武器は構えておけよ」


 突入する流れ。

 レナがちょっと待ってと手をあげる。


「魔王がいるかもしれないのよね? だったらもうここから潰しちゃえばよくないかしら?」

「それはお勧めできないな~ 全然無関係な悪魔がいたらどうする?」

「こんな場所にいないでしょ」

「もしもだよ、もしも。僕たちは壊すこと目的じゃないんだから」

「そうね。失言だったわ」


 レナが反省して謝る。

 その様子を見ながら、ユーレアスさんが意味深に笑う。


「何よ?」

「レナも丸くなったね。以前の君なら、了承なんてとらずにボカンだっただろう? エイト君のお陰かな」

「さぁ? そうかもしれないわね」

「はっはは、素直になったな~ さてさて、では少し早い魔王城攻略を始めようか」


 ユーレアスさんの口調からは緊張感がまるで感じられない。

 それに慣れてきたことを再確認して、俺は小さく笑う。

 

 抉られた地面を下り、魔王城の正面へ。

 アレクシアとアスランさんを先頭に、俺とレナが後方に構え、ユーレアスさんとフレミアさんを挟む陣形で進む。

 エリザはユーレアスさんにピタリとくっつき、彼を守ろうとしているようだ。

 アレクシアが城を見上げて言う。


「近くで見ると大きいね~」

「ああ。それに思った以上に古いというか、ボロボロだな」


 アスランさんの言ったように、目の前にある魔王城は壁の一部が剥がれ、天井も抜けている。

 誰も住んでいそうにない廃城、というのが素直な印象だった。

 ただ――


「強い魔力を感じるよ。誰かがいるのか、何かがあるのか」


 ユーレアスさんがそう言って、全員が警戒を強める。

 慎重に、罠がないか確認しながら、門らしき跡をくぐる。


「お待ちなさい」

 

 中へ足を踏み入れた瞬間、上からの声が響く。

 全員の視線が一斉に上へ向く。

 尖がり帽子のような屋根のてっぺんに、年老いた悪魔の男性が立っていた。

 人間に近い見た目でしわだらけの肌と白い髪。

 執事のような服を着た彼が、俺たちを鋭い視線で見下ろす。


「ここは我が主の城。無断で立ち入ることは許しません」

「これは失礼した! こんな場所に城があるなんて思わなかったのでね? 興味本位で近寄ってしまったんだ」


 ユーレアスさんが流暢に返す。

 老人の悪魔を見て、アレクシアとアスランさんが小声で話す。


「あの悪魔が魔王じゃないんだね」

「みたいだな。我が主っていうくらいだし、別にいるのか。だが……」

「うん。かなりの実力者だね」


 前衛の二人が老魔から発せられる圧を感じ取る。

 ただ者ではないことは、俺にもわかった。

 隙がない。


「左様ですか。ならば立ち去ることを……あなた方は悪魔ではありませんね? もしや勇者一行ではありませんか?」

「その通りです」

「ボクが勇者だよ!」

「……なるほど。そういうことであれば、このまま帰すわけにはいきませんね」


 老魔の雰囲気が変わる。

 先ほどまでより鋭く、怖い視線を俺たちに向ける。


「我が主に害なす者であるなら、ここで排除させていただきます」


 老魔が俺たちの前に降り立つ。

 いつのまにか細い剣を手にしている。

 すでに臨戦態勢。

 話をする雰囲気ではなくなったと悟り、俺たちも武器を構える。


「ユーレアスさん」

「ああ、仕方ないね。戦うしかなさそうだ」


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