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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第二章

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55.アレクシア・レナのペア

 エイトとユーレアスが合流した頃。

 他の仲間たちもそれぞれ合流し、ペアになっていた。


「無事でよかったわ。アレクシア」

「うん! レナと合流出来てよかった! ずっと一人で心細かったよ」

「ええ。でも――」

「うん」


 二人は声を揃えて言う。


「エイト(君)が良かった」


 同じことを考え、口にした二人は顔を見合わせ笑う。

 どうせ合流するなら好きな人と。

 緊張感のなさは否めないが、二人ともそう思っていたし、互いに同じだと気づいていた。

 

「エイト君も誰かと合流出来てるかな?」

「私たちが出来たんだもの。きっとユーレアスあたりのお守りでもしてるわ」

「わぁ~ それは……大変そうだね」

「容易に想像できるわね」


 この時エイトがくしゃみをしたのは言うまでもない。

 二人ともエイトのことが心配だが、彼なら大丈夫だとも思っている。

 助けられた者として、彼の頼もしさを知っている。

 そして、同じ人を好きになった。


「まっ! でもレナと二人じゃなくて良かった」

「あら、どうして?」

「だってエイト君とレナが二人きりなったら、絶対エッチなことするもん」

「アレクシアもでしょ?」

「ボ、ボクはこんな場所でしないよ!」

「二人きり、ベッドの上なら?」

「それはもち……何言わせるのさ!」


 顔を真っ赤にして照れるアレクシアを、レナは余裕の表情でからかう。

 同じ人が好きな者同士、仲が悪くなることも多いだろう。

 この二人の場合は、元々仲が良かったことと、好きになった経緯が近いこともあって、前よりも仲が良くなったくらいだが。


「あーもう! 次に行こう次に!」

「そうね。二人なら楽に突破できそうだし、合流出来て本当に良かったわ」

「苦戦してたの?」

「ええ。だってここ地面がこれだから」

「あー、確かにそうだね」


 レナの能力は周囲の地形を操る。

 ここはインディクスが作った巨大な魔道具の中だ。

 操れる地形はない。

 故に岩や土を生成して戦わなくてはならない。

 その分の魔力消費、生成にかかる時間もあって、レナは普段以上に戦い辛いだろう。


「アレクシアのほうは大丈夫だったの? たぶんだけど、面倒な相手を仕向けて来てるでしょ?」

「うーん確かに面倒だったな~ 遠くからビュンビュン攻撃してきたり、うねうね変な触手が襲ってきたりしたよ。でも全部斬ったから!」

「……そう。相手も災難だったわね」


 相手の策や能力も、アレクシアは真っ向からねじ伏せていた。

 彼女の持つ聖剣に理屈は通じない。

 聖剣を完全に封じることは魔王ですら叶わない。

 そのことをインディクスは映像越しに再認識していた。


 だが、次の部屋で待ち構えるのは、二人にとっては天敵。

 否、天敵になり得る能力を持っている。


 次の部屋に入った二人が立ち止まる。

 そこには二体の人形が立っていた。

 人形を見たまま二人は固まる。


 鏡写しの人形魔道兵器。

 その能力は、相手の心の底にある苦手意識を具現化させること。

 もっと具体的に言えば、嫌い相手や苦手な相手の姿を、この人形は投影する。

 つまり、今の二人には――


「アスタル……」

「お、お兄ちゃん?」


 その人形は、別々の誰かに見えていた。


 アレクシアの場合。


「な、何でお前がここに!」

「さてね? 勇者ちゃんが俺のこと忘れられないからじゃないかな?」

「そ、そんなこと……」

「あるさ。現に俺はこうしてここにいる。忘れたくても忘れられないよね? あれだけの快楽を一度に味わったんだ」


 彼女にとって、アスタルという悪魔は天敵と呼べるだろう。

 生まれて初めて完全な敗北を予感し、一度は諦めかけたのだから。

 もしもエイトが助けに来なければ、あのまま良いように弄ばれていただろう。


 人形魔道兵器の効果は、姿や言動を投影するだけではない。

 その投影を見ている相手にのみ有効だが、投影した対象が持つ能力も再現できる。

 アスタルの能力は魅了と幻影を見せること。

 聖剣を持つアレクシアに魅了は通じない。

 しかし、アスタルと不意に再会してしまったことで、彼女の精神は揺れていた。


「また教えてあげるよ。その身体に快楽を」


 悪夢を強制する。

 あの時程ではないにしろ、アレクシアは悪夢を見せられる。

 敗北し、惨めに犯される悪夢を。


「残念だけど、今のボクはこれくらいじゃ揺らがないよ」

「な、何?」


 だが、彼女はもう――あの時とは違う。

 彼女は知っている。

 本物の想いも、心と身体が通じ合う喜びも。


「ボク、好きな人が出来たんだ。大好きな人が、お前のお陰だよ!」


 

 レナの場合。

 投影されたのは兄の姿だった。

 嫌いな相手、苦手な相手が投影される人形。

 彼女の場合は少し特殊で、投影された兄は、ラバエルに利用されているときの彼である。

 厳密には兄ではない。


「レナ。また会えてうれしいよ」

「……わかっているわ。これは幻影、お兄ちゃんはもういない」

「そんなことはない。レナ、君を迎えに来たんだ」


 しかし、見た目も言動も兄と同じ。

 ある意味では、レナの精神を最も揺さぶる相手ではある。

 ただし――


「俺はここにいるよ」

「……違うわ。それはエイトの言葉よ。お兄ちゃんじゃない」

「ごめんねお兄ちゃん。今の私には、お兄ちゃんと同じくらい……ううん、もっと好きな人がいるの」


 今の彼女は、優しい言葉に惑わされない。

 幻影でなければ、あるいは揺れていたかもしれない。

 いや、それでも選んだ答えは変わらなかっただろう。


「エイトじゃなくて良かったわ」


 アレクシアが聖剣で斬り裂き、レナが岩の拳を生成して叩き壊す。

 今の二人には大切な人がいる。

 一緒にいたいと心から思える人がいて、心と身体が繋がっている。

 だからもう、屈することなどありえない。

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