表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/107

49.悪魔の暮らす街

 廃都での戦いを終えた勇者パーティは、魔王が居を構えるという最西端を目指し旅を続けていた。

 その情報は当然、魔王本人にも伝えられている。


「魔王様、ラバエルからの連絡が途絶えました」

「――そうか。これで幹部も残り三人」

「申し訳ありません」

「良い。責めているわけではないのだ。我も勇者どもの力を侮っていた。認識を変える必要がありそうだな」

「そのことなのですが、一つ気になる情報が」

「何だ?」

「一人増えているようなのです。勇者の仲間が」

「ほう」

 

 魔王は玉座に座りながら、側近の悪魔から報告を聞く。

 ラバエルが最後に残した記録には、エイトに関する記述があった。


「付与術師か」

「はい。それも言語による強制を使えるとか」

「ほう」

「これが事実なら、魔王様と同じ……勇者以上にやっかいな相手になるかもしれません」

「なるほど。進路は?」

「まっすぐここへ向かっている途中でしょう。おそらく今頃、ゲーデに入っていると思われます」

「ゲーデか。あそこはインディクスがいたな。奴にもこの情報を回せ。全力で迎え撃てと」

「はっ!」


 側近の悪魔が部屋を出て行く。

 魔王は小さく息をはき、目を瞑る。


「我と同じ力を持つ人間……か。種は芽吹いているということか」


 魔王は不敵に笑う。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 石レンガ造りの建物が並ぶ。

 曇天で日の光が届かない日ですら、街灯の光で眩しいくらいに明るい。

 行きかう人々……ではなく、悪魔たち。


「ここが……悪魔の街?」

「ゲーデという名前らしいね」

「……」

「意外かい?」

「ええ、まぁ」


 ユーレアスさんの質問に答えた後、俺はもう一度周りを見渡す。

 街の造りから暮らしまで、俺が想像していたものとは全然違った。

 もっと殺伐としていて、怖い場所だと考えていた。

 悪魔の街なんて言われたら、誰だってそういう想像するものじゃないだろうか。

 それがどうだ?

 実際に来てみれば、俺たちの街と何ら変わらない。


「平和……みたいですね」

「みたいじゃなくて平和なんだよ。ここは悪魔たちが暮らしている普通の街だからね」


 普通ってどういう意味だっただろう。

 そんなことを考えながら街の中を歩いていく。

 悪魔たちの容姿も様々だ。

 一目で悪魔だとわかる人ではない姿の悪魔もいれば、人間とそん色ない見た目の悪魔もいる。

 

「角と尻尾がなかったら、人間と見分けがつかないな」

「あーそれはね? 人間の血が混ざっているからだよ」


 隣を歩くユーレアスさんが教えてくれた。

 俺は目を丸くして聞き返す。


「え? 人間の血?」

「そう。信じられないかもしれないけど、今からずっと昔には人間と悪魔が共存していたんだ」


 信じられないという気持ちが顔に出る。

 ユーレアスさんは続ける。


「悪魔だけじゃない。他にもたくさんの種族が、共に助け合って生きていた……という記録が残されているんだ。それがいつの間にか、長い時間の中で食い違って、互いを滅ぼし合うに至った。そして現在だ」

「……人間が大陸の大半を支配している」

「そう。僕ら人間にとって悪魔たちは侵略者だけど、彼らにとっては人間は略奪者なんだ」

「それは言われると……何だか俺たちが悪者みたいですね」


 特に目の前で、平和に暮らす悪魔たちを見ながらは……


「正義か悪か、そんなことはどっちでも良いと思うよ。ただ僕らが考えるべきは、悪魔だから倒すべき、ではないということさ。少なくとも、こうして穏やかに暮らしている悪魔もいる。それを知っているのと知らないのでは、全然違うよ」

「……なるほど」

「まぁだからといって、普通に歩いていたら敵と見なされるだろうけどね?」


 俺たちは堂々と街の中を歩いている。

 ただし、認識を誤魔化す特殊な魔道具のローブを着て。

 人間だと思いながら凝視でもされない限り、周りの人にも俺たちは悪魔に見えている。

 人間が平然と歩いていれば、さすがに怪しまれる。

 俺たちは勇者パーティで、向こうからすれば侵略者なのだから。

 それにこの街には、魔王軍の幹部がいるという情報もある。


「出来れば街中での接敵は避けたいですね」

「ああ。そのためにもまずは情報収集。その前に宿だけは探しておこう」


 街を歩きながら宿を探す。

 ふと、アレクシアと目が合った。


「アレクシアは知ってたの?」

「ん? 何が?」

「悪魔が全部悪いわけじゃないってこと」

「うん! 旅の途中で良い悪魔さんにも会ったことあるからね!」

「そうだったのか」


 知らないのは俺だけか。

 いや、たぶんこの旅に関わらなかったら、一生知らないままだっただろうな。

 王都で暮らす人たちも、きっと知らないことだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! URLをクリックすると見られます!

『残虐非道な女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女の呪いで少女にされて姉に国を乗っ取られた惨めな私、復讐とか面倒なのでこれを機会にセカンドライフを謳歌する~』

https://ncode.syosetu.com/n2188iz/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻1/10発売!!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

【㊗】大物YouTuber二名とコラボした新作ラブコメ12/1発売!

詳細は画像をクリック!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
― 新着の感想 ―
[一言] 魔王「息子よ……!」 なんていう◯ターウォーズ的な展開が!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ