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5.ルミナスエイジの苦悩【追放側視点】

 ルミナスエイジのメンバーは四人。

 リーダーであり剣士のカイン。

 槍使いのシーク。

 赤魔導士のリサ。

 白魔導士のライラ。

 そこに付与術師であるエイトが加わっていたのは、つい数分前までの話だった。


「ようやくお荷物がいなくなったな」

「ああ」

「長かったよね~」

「まったくです」


 四人ともエイトがいなくなったことを嬉しく思っている。

 悲しんでいる者など一人もいない。

 二年間も一緒に戦ってきた仲間に対して、これはあまりに冷たい態度だろう。

 彼の付与に助けられた場面は確かにあったはずだ。

 それでも今は、全てが自分たちの力だと思い込んでいる。

 成長し、強くなったと自負している。


「あいつの所為で一人分の報酬が減ってるって思うとさ~ やっぱりね~」

「リサ、もういないんだからハッキリ言えよ」

「そうですよ。みんな同じ気持ちです」

「ああ。本当ならもっと早い段階で追い出しても良かっただろう。在籍させてやったのは、カインの優しさだったな」

「そうだぜ~ オレは優しい男だからな」


 そんなことを言いながら高笑いする。

 下品な笑い声が酒場にひとしきり響いて、カインが改めてメンバーに伝える。


「さてと、邪魔者もいなくなったし、リッチー狩りに行くか」

「そうだな。今回は何せ王国からの依頼だ。報酬も高額の一千八百万ルナ……いいや、三千万ルナだったな」

「エイトには嘘の金額を教えてたんだっけ~ それもカインの優しさ~?」

「まさか。単に教えたくなかっただけだ。そもそも追い出すと決めた切っ掛けがこれだからな」


 彼らはエイトに、リッチー討伐の依頼主が王国であることを伝えていない。

 加えて報酬も低めに伝えていた。

 実はこの依頼が来た時点で、彼らはエイトを追い出す話をしていたのだ。

 Sランクパーティーになり、王国からも指名されるほどの実力を手に入れたのだと、彼らは自信をつけていた。

 奇しくもその自信がきっかけとなり、エイトはパーティーを追放された。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 リッチーが確認されたのは、王都の南にある森の奥。

 渓谷を挟んださらに先に、腐食の森と呼ばれるエリアがある。

 そこは空気が淀んでいて、草木はもちろん、地面までもが腐っているエリアだった。

 

「臭いわね……」

「何だか気分も悪くなってきたぁ」


 本来であれば、状態異常の耐性をあげてから訪れるべきエリアである。

 エイトが残っていれば、防具に『嗅覚鈍化』、『状態異常耐性』を付与していただろう。

 奇跡的に前回の依頼が、毒の沼地にいるポイズンスネーク討伐だったこともあり、『状態異常耐性』だけは付与され残っていた。

 お陰で状態異常にはかからず助かっていることも、彼らは気づいていない。

 もっとも、臭いまでは防げていないが……


「おい気を抜くなよ。そろそろアンデッドが来るぞ」

「噂をすれば」


 前方からゾンビの群れがやってくる。

 報告によれば、近隣の村々が襲われ、村人がゾンビ化しているそうだ。

 アンデッドの恐ろしいところは、殺した生物を同じようにアンデッド化してしまえることでもある。

 放置すればするほど、彼らは勢力を増し続けるのだ。


「私に任せてください」

 

 白魔術師が浄化魔法を唱える。


「ターンアンデッド」


 聖なる光に照らされ、ゾンビの群れが悲鳴をあげ消えていく。

 浄化されたアンデッドは、肉体ごと消滅する。


「私がいれば、この程度のアンデッドなんて怖くありません」

「さすがライラだ」

「あったしもゾンビなら燃やせるし、ライラはリッチー戦まで体力温存しておいてよ」

「ええ」


 どう?

 これが私の浄化魔法の力よ。


 と心の中で言うライラ。

 口には出さないが、エイトに言われたことを気にしていた。


 そして彼らは順調に進んでいく。

 現れるゾンビやアンデッド化したモンスターを一掃し、堂々と正面から突き進む。

 一体、また一体と倒すにつれ、自信はさらに膨れ上がる。

 

「愚かなる者よ――」

「ついにでたな」


 腐食の森の開けた場所に陣取る男。

 朽ちた肉体は未だ死せず、老いることもなく、生きることもない。

 アンデッドの王にして、知性を持つ魔法使いの怪物。


「あれがリッチーね」

「邪悪なオーラを感じます」

「周りにはアンデッドの大群か。これは中々……」

「いいえ、私に任せてください」


 ライラが前に出る。

 自信たっぷりの彼女は、今まで通りに魔法を唱える。


「まとめて消えなさい――ターンアンデッド!」


 聖なる光が森に広がる。

 最大の威力、範囲で放たれた浄化魔法によって、アンデッドの群れは――


「そ、そんな……」

「リッチーには効いてないぞ」

「それどころか……い、一体も浄化できてないじゃない!」

「どういうことだライラ!」


 叫ぶように問いただすカイン。

 ライラは信じられずに固まっていた。


「あ、ありえません。私の浄化魔法が……」

「フ、フフ、フハハハハハハハハハハハハハ! 愚か、実に愚か!」


 リッチーは笑う。


「その程度の浄化魔法で我を倒せるはずもなし! 先刻の白魔導士同様、我が従僕に加えてやろう」

「く、来るぞ!」


 ライラの浄化魔法は、リッチーだけでなく、周囲にいたアンデッドモンスターにも通じなかった。

 その理由を彼らが知ることはない。

 リッチーには、自分の周辺一帯にいるアンデッドの不死性を底上げするスキルが備わっていた。


「に、逃げるぞ!」


 そんなことを考える余裕もなく、彼らは無様に逃げるしかない。

 エイトが言った通り、彼らだけでリッチーを倒すことは不可能だった。

 この失敗を切っ掛けに、彼らの評判は落ちていく。

 どんどん、確実に落ちていく。

 彼が抜けた穴がどれほど大きかったか、痛感するのも時間の問題だった。

 

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