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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第二章

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45.契約は半分だけ

 冥界へ下る魂たちを見送る。

 光は上に昇っていくのに、下るという言い方もおかしい気がするけど。


「さぁ、余韻に浸るのも良いけど、そろそろ僕らも脱出しないとマズいよ? 手足が透け始めてるしね」


 ユーレアスさんに気づかされ、全員が各々の手足を見る。

 反対側が薄く見える程度には、肉体が透明になっていた。

 それを見て驚くアレクシア。


「ほ、ホントだ!」

「肉体の限界時間ってやつか。おいユーレアス、出口はどっちなんだ?」

「この先だよ。坂道をずっと進んでいけば鳥居があるんだ。黒い鳥居が現世へ続く唯一の道だよ」

「ユーレアスさん、帰り道がわかるんですか?」

 

 俺が尋ねると、ユーレアスさんは頷き答える。


「おうとも。臨世に来るのはこれが初めてじゃないんだ」

「え、そうなんですか?」

「ああ。前に一度来たことがあってね? その時はギリギリだったよ~ 偶然出口の鳥居を見つけたからよかったものの。もし見つけられてなかったら死んでいたね、うん」


 あっさり怖いことを言う。


「なんで臨世に? ここってそんな簡単に来られる場所なんですか?」

「いや~ ちょっと魔法の実験に失敗してね? 死にかけた時に迷い込んだんだ」

「えっ……」


 それってつまり、臨死体験じゃないのか?

 またさらっと怖いことを当たり前みたいに口にした。

 とは言え、お陰で出口がわかるのなら良いことだ。


「立てるかい?」

「何とか」

「肩貸すぜ」

「ありがとうございます、アスランさん」


 俺はフラフラな身体を起こし、アスランさんに掴まって一緒に走った。

 肉体が消えかかっている分、みんな普段より身体が重く感じているに違いない。

 見た目以上にボロボロで、ギリギリな状態。


「もうすぐだ」


 一刻も早く現世へ戻りたい。

 その一心で駆け抜けた。


「見えたよ! あそこに飛び込むんだ!」


 ユーレアスさんの掛け声と同時に鳥居へ入る。

 ラバエルに引きずり込まれた時と同じ感覚が襲い、一瞬の浮遊感の直後、俺たちは全員――


「戻って……きたんだな」

「うん!」


 滅びた王都の街中にいた。

 ラバエルと対峙した地点に戻ってきたようだ。

 ホッとした途端、力が抜ける。


「エイト君!」

「ごめんアレクシア……ちょっと限界かも」

「フレミアさん!」

「傷の治療は終わっています。気力体力の回復は、身体を休めるしかありませんね」

「すみません、心配かけて」


 疲れているのは俺だけではなかった。

 他の皆も疲労している。

 一時的とはいえ臨世に滞在したのだ。

 身体への負担は見た目以上に大きかった。

 それから俺たちは、回復するまで廃都に留まることになった。

 適当に状態の良い家を見つけて、少しの間だけ借りる。


 俺はというと、横になった途端に眠ってしまったらしい。

 あまり前後のことは覚えていない。

 次に目が覚めたらベッドの上だった。


「スゥー」


 寝息の主はアレクシアだ。

 ベッドの横にしゃがみ込んで、ベッドの上で腕を組んで眠っている。

 俺が寝ている間、隣で見守ってくれていたのだろうか。

 俺は彼女の頭を撫でる。

 するとそこへ――


「起きたのね」

「レナさん」


 部屋に入ってきたレナさんは、ベッドの横に腰掛ける。


「少しは休めたかしら?」

「ええ、お陰様で身体が楽になってきました。傷はフレミアさんが治療してくれていたし、魔力も半分くらいまでは回復してます」

「そう」

「レナさんは?」

「私はそこまで疲れてなかったもの」

「そんなことないでしょ」

「……そうね。身体は軽かったけど、心は重かったわ。でも今は平気よ。お兄ちゃんにも会えたし、ちゃんと気持ちも聞けたから」


 そう言っているレナさんだけど、目の下が赤くなっている。

 きっとたくさん涙を流したんだ。

 あの後も、俺の知らない所で泣いていたのだと思う。


「ありがとうエイト、今回のことは全部あなたのお陰ね」

「そんなことないですよ。最後決めたのはレナさんとお兄さんだし、みんなが間に合わなければ今ごろ……」

「だけどあなたが守ってくれなかったら、私はここにいないわ。あなたは命の恩人で、お兄ちゃんとも逢わせてくれた……感謝してもしたりない。だからお礼をさせて?」

「お礼、ですか」

「エイト、あなたに私をあげるわ」

「……へ?」


 何を言っているのかわからなかった。

 だから俺は、そのまま聞き返す。


「ど、どういう意味ですか?」

「そのままの意味よ」

「い、いやいや、意味がわからないですって」

「鈍い男ね。これから私のことを、エイトの好きにして良いと言っているのよ」


 レナさんは自分の胸に手を当てながらそう答えた。

 さすがに意味はわかったけど、わかったからこそ慌てる。


「だ、駄目ですよそんなの女の子が言っちゃ!」

「そう? 案外自然なことよ?」

「ど、どこがですか」

「話したでしょ? 私は半分精霊なの。精霊は依代を必要とする。自然……もしくは契約者を。私は精霊としてエイトに契約するわ。でもそれは半分よ」


 レナさんが立ちあがり、俺のベッドに這い上がってくる。

 足元から顔の近くへ。

 互いの呼吸音が聞こえるくらいまで寄ってきて、俺は恥ずかしさで後ろに下がろうとする。

 ベッドの頭側は壁だ。

 下がれなくなって、レナさんに迫られる。


「レ、レナさん?」

「私の半分は精霊、もう半分は人間よ。半分であなたと契約する。もう半分で――あなたを想うわ」


 唇が重なる。

 不意に、でも避けようもなく。


「ぅ……エイト君……エイト君!?」

「そういうわけだから、これからはライバルね? アレクシア」

「ど、どど、どういうこと!?」


 アレクシアが叫ぶ。

 同じことを俺も叫びたい気分だった。

 レナさんは唇に指をあて、色っぽく微笑む。

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