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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第二章

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43.返してもらうわ!

 レナさんの力で拘束されたラバエル。

 彼は不敵に笑い、お兄さんの肉体を捨てた。

 あっさりと捨てられた肉体が力をなくしてへたり込む。


「最初に言っただろう? ここは肉体が長居して良い世界じゃない」

「それがお前の……本当の姿か」


 死霊使いラバエル。

 その魂こそが本体であり、この世界における真の姿は、青白い大鎌を持ち宙に浮かぶ。

 まるで、童話に出てくる恐ろしい死神のような姿をしている。

 

 レナさんは抜け殻になったお兄さんの身体を見ている。

 肉体は臨世に長居できない。

 その言葉通りなのか、ラバエルが抜けた後で、お兄さんの肉体は薄まっていく。


「お兄ちゃん」

「レナさん、今は」

「……わかってるわ」


 ごめんね?

 ちゃんと弔ってあげられなくて。

 

 レナさんは小さな声で呟き、俺と一緒にラバエルに視線を向ける。


「あなたは私が倒すわ」

「残念ながら不可能だよ。俺の可愛い妹」

「ふざけないで。あなたはお兄ちゃんじゃないわ!」


 レナさんが大声で叫ぶ。

 と同時に地面が盛り上がり、巨大なゴーレムを生成。

 俺とレナさんはゴーレムの肩に乗る。


「随分大きくなったね」

「まだふざける気かしら? とことん癇に障る男ね」


 ゴーレムが拳を振るう。

 大地を砕く強力な一撃を、ラバエルの身体が突き抜ける。


「不可能だと言っただろう? 俺の身体は魂そのもの。魂は魂でしか攻撃できない。君たちに勝ち目――最初からない!」


 ラバエルが大鎌を振るう。

 ゴーレムの腕から胴体にかけて真っ二つに切り裂き、俺とレナさんが落ちる。


「くっ」

「っ、まだよ」


 レナさんは崩れたゴーレムの形を変える。

 ユーレアスさんが見せた龍と同じ形状にして、ラバエルに巻き付く。


「無駄だというのに健気だな」


 それすら通じず砕かれてしまう。


「俺ばかりに気をとられていていいのかな?」


 周りには操られた魂たちがいる。

 着地した俺たちを、魂の群れが一斉に襲う。


「『散れ!』」


 言霊の行使によって魂たちを散らす。

 これで何度目になるか自分でも数えられない。

 レナさんを守っている間に、何度も使った言葉だ。

 それほど強い言葉ではなかったが、相手にする数が多すぎた。


「ごほっ……」

「エイト!」


 血を吐き膝をついた俺にレナさんが駆け寄る。

 強い言霊は大量の魔力を消費するだけでなく、喉への負担も大きい。

 魔力より先に喉が限界を迎えそうだ。


「まだ、大丈夫です」

「あまり無茶しないでくれよ。その身体は後で俺が使うんだから」

「させないわよ」

「その通り!」


 今の声は――


「エイト君は渡さない!」

「アレクシア!」


 ようやく来てくれたのか。


「遅くなってすまない」

「フレミア! エイトの手当て頼んだぜ」

「任せてください」


 ユーレアスさんたちも一緒にいる。

 フレミアさんが俺の所に降り立ち、俺の治療を始める。


「無茶をしましたね」

「すみません。ありがとうございます」

「エイト君をよくも! お前はボクが斬る!」


 そうだ。

 一つ、可能性が残されていた。

 アレクシアの持つ聖剣エクセリオンなら、ラバエルにも通じるのではないか。

 期待を込めて彼女の有志を見つめる。


「なるほど、それが聖剣か」

「嘘っ!?」

「すり抜けやがったのか?」


 聖剣で斬っても、ラバエルの身体は瞬時に元通りになる。

 驚愕するアレクシアとアスランさん。

 続けてアスランが魔槍で貫くが、手応えなくすり抜ける。


「何ども言わせないでくれ。魂を傷つけられるのは魂だけなんだよ」


 聖剣でも駄目なのか。

 くそっ、何かないのか他に。

 このままじゃ倒せない。

 ラバエルのように魂を操る力でもあれば……いや、待てよ?

 

「そうか。その手があったか」


 言霊使いのスキル。

 その力は、言葉で他人の動きすら制御できる。

 だったら――


「『魂たち――俺に従え』」

「何だ?」


 ラバエルが操っていた魂たちが一斉に動きを止める。


「『お前たちの敵はラバエルだ』」

「お前まさか!」

「『魂たちよ! 剣となって悪を貫け!』」


 周囲に集まっていた無数の魂。

 言霊の力で一時的に制御を奪い、無数の剣に形を変えラバエルに襲い掛かる。


「っ、魂の支配権を奪ったのか」

「そうだ。はぁ……あれ何って言ってたかな? 魂は裏切らない……」

「お前……」

「どうやら裏切られたらしいぞ?」

「そうか、そうかそうか! 予定変更だ、お前の肉体なんていらない。魂ごと消してやろう!」


 ラバエルの標的が俺に向く。

 振り下ろされる大鎌を、アレクシアとアスランさんが受けとめる。


「ユーレアス!」

「お任せあれ」


 ユーレアスさんが魔法で突風を放つ。


「ちっ!」

「ボクたちでエイト君を守ろう!」


 三人が頷く。

 現状、魂そのものであるラバエルに対抗できるのは、俺が操っている魂たちだけだ。

 必然的にラバエルは俺を狙い、みんなは俺を守ろうとする。


「忌々しい力だ! どっちが盗人かわからないなぁ!」

「あなたと一緒にしないで」


 レナさんも大地の壁を作ってラバエルの攻撃を受け止める。

 みんなが必死に守ってくれる。

 フレミアさんが回復してくれているお陰で、身体の傷は完治した。

 が、それ以上の負担が喉へかかる。

 魂を言霊で支配する。

 想像以上の魔力消費と負担。

 次第に言霊の力が弱まり、魂の一部が俺の支配から外れる。 


「くそっ……」

 

 もう声が……魔力も。


「どうやら限界のようだな」

「まだだ!」


 まだ魔力は残っている。

 喉が潰れても、声を振り絞れ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

「エイト……」


 情けない。

 エイトにばかり頼り切って。

 私にも何か出来ることはないの?


 レナ――


「その声――お兄ちゃん?」


 レナの後ろに一つの魂が近寄る。

 魂はレナに語りかける。

 それを聞いたレナは頷き答える。


「わかったわ」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 臨世で肉体が維持できる時間には限りがある。

 すでに俺たちは一時間半、臨世に留まっていた。

 身体の一部が透け始めていることが、限界が近いことの証明。

 身体が鉛のように重くなる。


「さぁ終わりだ。まとめて刈り取ってやろう!」


 ラバエルが大鎌を振りかぶる。

 その背後に――レナさんが魂の剣を構える。


「その剣はっ!」

「返してもらうわ」


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