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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第二章

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42.死霊使いラバエル

 ラバエルがパチンと指を鳴らす。

 おびただしい数の魂が集まり、姿を変えて俺たちを取り囲む。


「開門」


 対して俺は魔道具から剣を取り出す。

 攻撃のためにでもあるが、さきにレナさんを守るための壁がいる。

 無数の剣をレナさんの周囲に突き刺し、剣同士を重ねて覆い隠す。

 少し強引な乱暴な方法で申し訳ない。


「そう身構えなくても良いよ。先に君から殺してあげる。大事な妹は、その後で」

「お前の妹じゃないだろ」

「そうだな。しかしそんなに怒ることかな? 少なくとも君にとっては関係のないことだろう」

「関係ならあるさ。俺はレナさんの仲間だからな」

「仲間ね~ そんな曖昧な関係に意味なんてないと思うけどなぁ~ 俺は自分に味方する魂以外は信じられないね」


 ラバエルはやれやれと身振りで見せる。

 彼の言葉を聞いた俺は、小さく笑って言い返す。


「自分に味方する? 無理やり従わせているの間違いだろ?」

「はっ! そうだな。だから俺は自分だけを信じている。自分の力だけを信頼している。俺の力で従わせた魂たちは、決して俺を裏切らない」


 ラバエルは得意げに語り、俺を見ながらニヤリと笑う。

 右手をあげ、魂たちに命令する。


「やれ」


 四方から襲い掛かってくる魂の群れ。

 俺は大きく息を吸い、言霊に乗せて言い放つ。


「『散れ』!」


 さっきよりも数が多い分、強くハッキリ口にする。

 言霊の効果で押し寄せた魂たちは吹き飛ばされた。


「一歩たりとも近寄れると思うな」

「やるね。言葉による強制……魔王様と同じ力だ」

「一緒にするな」

「ああ一緒じゃないさ。魔王様の言葉はもっと重くしびれるんだ!」


 吹き飛んだ魂が鳥に姿を変えて舞い戻る。

 さらに新しい魂を呼び出し、人型に変化して再び取り囲まれる。


「魂の形は自在に変えられるんだよ。こんな風にモンスターにもなれる」

「っ、元は人の魂なんだろ」

「ああ。どうしようが俺の勝手さ」


 酷いな。

 死んだ後まで弄んで……


「『散れ』」

「また同じ手か? 芸がないな」

「『動くな』」


 ラバエルの動きを止める。

 魂たちを散らして、防御するものをなくし、そこへ剣の雨を降らせる。


「甘いね」


 散った魂が矢の形に変化し戻ってくる。

 魂の矢に阻まれ、剣は届く前に弾かれてしまった。


「今ので俺を倒せるはずないだろ? というより、そろそろ気付いているんじゃないかな?」

「……何のことだ?」

「その顔は気づいているな。ここへ来た時点で、俺は倒せないということを」

「……」


 薄々感づいてはいたが、やはりそうなのか?

 この臨世は魂の通り道で、聖属性による浄化も魂には効かない。

 そして効かないのは浄化だけじゃない。


「もう理解したか? いくら頑張って耐えた所で時間の無駄なんだよ」

「無駄じゃないさ。俺が耐えていれば、レナさんが邪魔されることなく記憶を見られる」

「それに何の意味がある? 真実を知ることで、隠された力が目覚めるわけでもない。ただ知って、終わるだけだ」

「ふっ、そうだな。お前にはわからないだろうな。仲間の意味すら理解できないお前には、絶対にわからない」


 過去と向き合うことの大切さ。

 レナさんにとってのお兄さんとの思い出が、どれだけ深く必要なものか。

 肉体を乗っ取り、記憶を知っているだけのラバエルにはわからない。


「嘗めた口を」


 ラバエルは不機嫌そうに眉をひそめる。

 魂たちに俺を殺せと命じる。

 俺の攻撃は魂を傷つけられない。

 それでも攻撃は当たるから、弾いたり防御することは出来る。

 時間を稼げ、耐えろ。 

 レナさんが真実を知るための時間を。

 そして――


「はぁ……っ……」

「頑張ったけど限界だな」


 傷だらけのまま膝をつく。

 呼吸も荒く、身体から力が抜ける。


「肉体の制限時間も近い。そろそろ終わらせよう」

「くっ……」

「お前の力は中々使えそうだ。この身体も飽きたし、今度はお前の身体を使わせてもらうと――」

「させると思う?」

「何っ!?」


 ラバエルの足元がぼこッと盛り上がり、大地の柱が突きあがる。


「ちっ、時間をかけすぎたか」

「レナさん!」

「おまたせ、エイト」


 後ろを見て剣の囲いを確認すると、いつの間にか破壊して出てきたようだ。

 レナさんは俺を見つめて言う。


「ボロボロね」

「このくらい平気ですよ。それよりわかりましたか? あいつが盗人だってこと」

「ええ、お陰様で。ありがとう」


 レナさんの表情見て、俺は安心した。

 迷いや後悔が消えたかは別として、戦う理由は出来たらしい。

 レナさんがラバエルを睨む。


「その身体はお兄ちゃんのものよ。返してもらうわ」

「今さら返すと思うか?」

「思わないから、力づくで取り返すわよ。ごめんねお兄ちゃん、少し痛いかもしれないけど我慢してね」


 レナさんが小さな声で呟き、地面を蹴る。

 周囲の地形が一斉に動き出し、大きく伸びた大地の柱は弧を描き、ラバエルへ襲い掛かる。


「ごはっ!」


 四方の柱に押し潰れそうになるラバエル。

 痛みに苦しむ表情を見せる。


「苦しいでしょ? 嫌なら早く出て行きなさい」

「ぐっ……そうだな。頃合いだ」


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