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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第二章

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39.また一緒に暮らせるよ?

「っ……何だここ!?」


 気が付くと俺の目の前には、灰色の空と白い大地があった。

 見たことのない光景。

 明らかにさっきまでいた場所とは異なる。

 そして――


「レナさん!」


 近くにはレナさんもいる。

 俺と同様に落下しているが、彼女はピクリとも動かない。


 意識を失っているのか?


 彼女の力であれば、落下の衝撃も和らげられるだろう。

 ただ、意識を失っているのなら話は別だ。

 このまま地面に衝突すれば、いくら彼女でも潰れてしまう。

 俺は自分のブーツに意識を向ける。


 よし、付与は効いてるみたいだ。


 それを確認して、俺は空中を蹴りレナさんに近づく。

 彼女の手を引っ張り、抱きかかえて『飛翔』を発動。

 落下の速度を緩やかに。

 安定を保ったまま着地する。


「ふぅ……レナさん? 大丈夫ですか?」

「……」


 返事はないが意識はある。

 放心状態とでもいうべきなのだろうか。

 無理もない。

 慕っていた人が魔王軍の幹部だった。

 もし自分の身に同じことが起こったなら、今のレナさんと同じく、何もする気がうせてしまいそうだ。


「立てますか?」

「……ええ」


 俺は彼女をゆっくりとおろす。

 レナさんはちょこんと立ち、下を向いた。

 俺は辺りを見渡す。


「どこだここ……」


 初めて見る景色だ。

 それに何だか気分が悪い。

 熱いわけでも、寒いわけでもないが、身体が少し重く感じる。

 

「他のみんなは?」

「彼らには別の場所へ落ちてもらったよ」


 ラバエルの声に振り向く。


「ラバエル……」

「やぁレナ」


 レナさんが泣きそうな顔でラバエルと目を合わせる。

 そんなレナさんにラバエルが言う。


「本当に君と二人で話したかったんだけどな。そっちの彼が一緒に落ちてくるなんて予想外だったよ。ひょっとして君が報告にあった付与術師かな?」


 アスタルと違って、彼は連絡を受けているようだ。


「だとしたら?」

「中々手強いらしいね? まぁもっとも、この場所に来た時点で君たちは終わりだが」


 ラバエルがニヤリと笑う。

 両腕を広げ、大げさに続ける。


「ここがどこか教えてあげようか? 死者の魂の通り道、臨世という場所だ」

「臨世?」

「ピンときてなさそうだね? じゃあとっておきの……いや、君たちにとっては絶望の事実を教えよう。この臨世では魂以外の滞在は許可されていないのさ。長く居座れば、強制的に肉体を奪われ魂だけになる。要するに、時間が過ぎれば勝手に死ぬのさ」

「なっ……」


 冗談だろ? 

 いるだけで死ぬのか?

 なら早く速く脱出しないと。


「脱出しないと、とでも考えている顔だね? だがここが臨世だと知らなかった時点で、脱出の方法なんてわからないだろ? 先に教えてあげるけど、仮に俺を倒したところで解決にはならないよ」

「……」

「どうだ? もう君たちは詰んでいるんだ」


 ラバエルがパチンと指を鳴らす。

 青白い光の玉が無数に現れ、俺たちの周囲を取り囲む。

 光の玉は形を変え、手足をもつ人間の形となる。


「これは俺が使役している魂たちだよ。ここは現世のように肉体を用意しなくて良いから楽だね」


 数はざっと百近くいる。

 完全に囲まれてしまったことを確認してから、俺は魔道具を取り出す。


「開門」


 箱を開き、無数の剣を操る。

 操られた魂たちには悪いけど、このままやられるわけにはいかない。

 俺は心の中でごめんとつぶやき、剣に聖属性を付与。

 周囲の魂たちを突き刺す。


「……何で?」


 浄化できない?


「当たり前じゃないか。彼らはただの魂だよ? 魂に善も悪もない、そもそも現世に縛っているわけじゃないんだ。言っただろう? ここは臨世、魂の通り道だ」


 魂は正しい流れの中にある。

 浄化の力は魂そのものには効果を発揮しない。

 そのことを初めて知り、突破口を一つ失った。


「もう大人しくしていろ。俺はレナに話があるんだ」


 レナさんがピクリと反応する。

 良くない話をするに決まっている。

 そう思った俺はレナさんに言う。


「聞いちゃダメですよ」

「ねぇレナ、魔王軍に入らないか?」


 やはり良くない話だったな。

 ラバエルは続ける。


「俺に協力してほしいんだ。そうすれば、君が俺を見殺しにしたことは水に流してあげよう。また一緒に暮らせるよ?」

「……」


 レナさんの心が揺さぶられている。

 表情を見れば明白だ。

 

「さぁこっちにおいで」

「お兄ちゃん……私は……」

「どうした? 来ないのかい? 俺が許してあげると言っているんだぞ」

「レナさん!」


 ああ、駄目だ。

 レナさんの迷いを感じる。

 俺の声が届いていない。

 この場を離れなくては――


「『散れ』」

「何っ?」


 スキル言霊使い。

 自身の発した言葉に強制力を与える。

 覚えたてならぬ気づきたてのスキルだが使い方はハッキリしている。

 付与するときの感覚で命令すれば良い。

 

 散れの一言で取り囲んでいた魂たちが散り散りに吹き飛ばされる。

 その隙を突いてレナさんを抱きかかえ、飛翔でその場を去る。


「今のは魔王様と同じ?」

「あーもう。毎回逃げてばっかりだな」


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