表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/107

38.臨世

「そんな……お兄ちゃんが……魔王軍?」

「ああ。これが証拠だ」


 両手をパンと併せる。

 彼の足元に魔法陣が展開され、地面を覆うほど拡大する。


「さぁおいで、俺の可愛い従僕たち」

「こ、これは――アンデッド?」

「まさかこの街の人たちを!」

「ご明察! しかし迂闊だね? のこのこと俺が滅ぼした街に足を踏み入れるなんてさ」


 地面を抉り、アンデッド化した人たちが出現する。

 気付けば俺たちはアンデッドの群れに囲まれてしまっていた。

 アンデッドの群れを見て驚くフレミアさん。


「どうして? 気配はありませんでしたよ?」

「甘いね白魔術師。俺を誰だと思っているんだ? 魂と肉体は別々でストックしているんだ。こうして合わせるまでは何でもない。埋まっていたのはただの死体だ」


 得意げに語るラバエルに、フレミアさんが怖い顔を見せる。


「ですが所詮アンデッドでしょう。私たちの前に出た時点で、浄化される未来しか待っていませんよ」

「そうだね。仮にも君たちは勇者パーティーだ。勇者の持つ聖剣に、白魔導士の浄化魔法もあれば、アンデッドの大群なんて敵じゃない。そんなことわかっている。そう、わかっているさ。君たちもわかっているはずだろう? なのにどうして、これがただの時間稼ぎだと気付けなかったのかな?」


 ラバエルがニヤリと笑みを見せる。

 その笑顔に寒気を感じた。

 ように思えたが、感覚的な意味ではなく、実際に寒気を感じた。

 周囲の気温が一気に下がり、冷気が足元を覆う。


「さぁさぁ勇者御一行! 君たちを生と死の狭間の世界へ招待しよう!」


 黒い沼が地面を覆う。

 漂っていたのは冷気ではなく、おびただしい数の魂だった。

 ラバエルが操る魂たち形を変え、青白い手となって俺たちの身体を掴む。


「なっ、くそっ……」

「は、離して!」

「アレクシア!」

「あぁーこれはまずいね」

「くそっ、何だよこれ斬れねぇぞ。フレミア!」

「駄目ですもう……間に合わない」


 みんなが黒い沼に引きずり込まれていく。

 俺の身体もズリズリと沈んでいき、抵抗しても勢いは止まらない。

 他のみんなも同様に、身体をバタつかせたり、魔法を発動しようとするが、間に合わなかった。

 そしてレナさんだけは、抵抗することもなく、ラバエルのほうを見つめていた。


「レナさん!」

「私は……」


 手を伸ばしても届かない。

 そうして俺たちは、黒い沼の中に引きずり込まれてしまった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 沼に引きずり込まれた面々は、真っ暗な視界が急にひらけて驚く。

 と同時に、自分たちの身体が落下していることに気付いた。


「う、うわっ!」

「大丈夫だよ! みんな僕に手を伸ばして」


 同じく落下するユーレアスに、三人が手を伸ばす。


「風よ舞え」


 ユーレアスが魔法を発動。

 周囲を風で包み込み、ふわりと落下の速度を殺す。

 そのままゆっくりと着地して、全員が安堵のため息をこぼす。


「助かったぜユーレアス」

「いやいや、まだ助かってないよ」

「ここはどこでしょう?」


 辺りを見渡すと、そこは見知らぬ土地だった。

 白い地面に、空は灰色。

 枯れた木々がぽつりぽつりと立っているくらいで、他は何もない。

 風も吹いていないし、太陽の光もないけどなぜか明るい。

 とにかく不思議な世界だと感じた。


「何だよここ?」

「驚いたなぁ……本当に連れて来られるとは」

「ユーレアスさんはご存じなのですか?」

「うん。ここは――」

「待って! エイト君とレナがいないよ!」


 ユーレアスの言葉を遮るように、アレクシアが声をあげた。

 三人とも気付かなかったが、二人の姿がない。

 周囲をぐるっと見渡したが、どこにも見当たらない。

 ユーレアスが言う。


「引きずりこまれた時に若干距離があったからかな? おそらく別の場所に落とされたんだろう」

「どうしよう……早く探しに行かないと!」

「落ち着けアレクシア。あの二人なら簡単にやられたりしない」


 アスランがそう言い、フレミアが頷く。

 しかしユーレアスは否定する。


「いや、早く探したほうが良いね。そしてすぐ脱出しないとまずい」

「どういう意味だよ。ユーレアス」

「さっき言いかけた続きだよ。ここがどこなのか。彼が言っていた通りなんだ」

「は?」

「生と死の境にある狭間の世界。この世でも、あの世でもない場所……名前は臨世(リンセ)という」


 三人ともピンと来ていない表情を見せる。

 ユーレアスは続けて言う。


「ここは本来、死した魂の通り道なんだ。もし肉体を持ったままここ留まれば、僕らは肉体を失い、あの世へ送られる」

「なっ……冗談だろ?」

「し、死んじゃうってこと?」

「そうだよ。だから急いだほうがいい。間に合わなくなる前に」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! URLをクリックすると見られます!

『残虐非道な女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女の呪いで少女にされて姉に国を乗っ取られた惨めな私、復讐とか面倒なのでこれを機会にセカンドライフを謳歌する~』

https://ncode.syosetu.com/n2188iz/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻1/10発売!!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

【㊗】大物YouTuber二名とコラボした新作ラブコメ12/1発売!

詳細は画像をクリック!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ