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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第二章

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35.廃都アルギニア

 迫りくるモンスターを危なげなく倒した勇者パーティーの面々。

 頼りがいのある仲間たちと共に、俺たちは悪魔領を進んでいく。

 戦いの跡が残る道を歩きながら、ボコボコになった地形を眺めてアレクシアが言う。


「地形めちゃくちゃになったね」

「そうだね。大丈夫なのかな?」

「元からよ。気にしてたらやっていけないわ」


 レナさんがしれっと答えた。

 ボコボコになった原因は、レナさんのゴーレムが派手に暴れたからなんだよな。

 

「レナは見かけによらず豪快だからね~」

「何? ユーレアス、あなたも潰してほしいのかしら?」

「いえ結構です」

「遠慮しなくて良いのよ? 綺麗に平らにしてあげるわ」

「本当に結構です」


 レナさん……目が本気なんだよな。

 ユーレアスさんが近寄ってきて、俺の耳元でささやく。


「君も怒らせないように注意したまえ」

「そうですね」


 主に怒らせてるのはユーレアスさんだけな気もするけど。

 そうこうしている内に、道らしい形をした通りに出る。

 俺たちではない戦闘の跡が残り、人が行き来していた形跡もあった。


「そろそろ、例の滅びた大国……アルギニアの王都に着くね」

「……」

「ん? どうかしたかい? レナ」

「何でもないわよ。行きましょう」


 何でもないと言いながら、レナさんは何か考え事をしているように見えた。

 ユーレアスさんにも違和感は感じ取れたと思うけど、聞き返すこともなくその場は流れた。

 俺も質問はしなかったけど、少しだけ……レナさんの表情が、悲しんでいるように見えたから、印象には残った。


 しばらく進むと、数軒の建物が見えてきた。

 何の建物だったのかはわからない。

 壊され、崩れてしまっていたから。

 そのさらに奥へ進むと、見えてくる。


 滅びた都が。


「ここがアルギニアの王都、だった場所だ」

「思ったより……」

「そうだね。予想していたより原型をとどめている。むしろ魔王軍に攻め入られたにしては綺麗な方だ」


 建物が形を残している。

 王都を囲っていたであろう外壁は破壊されているけど、中の街並みはボロボロというほどでもなかった。

 ユーレアスさんの言う通り、綺麗なほうなのだろう。

 それでも戦いの爪痕は残っている。

 いやむしろ、中途半端に形が残り、人が一人もいない惨状が悲しさを増している。

 色鮮やかだった風景が、白と黒の単調な色に変わってしまったような。

 命が抜け落ちてしまったようにも見える。


「廃都……か」


 この街はもう、死んでいるのだと思う。


「念のために調べておこうか」

「うん! もしかしたら、生き残った人が隠れてるかもしれないよ!」

「そうだね」


 たぶんいないと思うけど、とユーレアスさんは小さな声で呟く。

 俺もいないと思う。

 抜け殻になった街並みを見て、漠然とそう感じた。


 王都は広い。

 そこで二人一組に分かれ、廃都の中を散策することにした。

 俺はアレクシアと一緒に、レナさんとユーレアスさん、アスランさんとフレミアさんという組み合わせで。


「この辺りは商店街だったのかな?」

「だと思うよ」

「賑やかな街だったんだろうな~」

「うん」


 お店の看板だったものが転がっている。

 椅子や机も残っている物はそのままで、人は誰もいない。

 風が吹き抜ける音と、俺とアレクシアの足音だけが聞こえる。


「人……いなさそう?」

「うん」

「まぁ仕方ないさ。滅んだのが数日前、とかなら希望もあっただろうけど」

「そうですね……ってあれ? ユーレアスさん?」

「そうだよ」


 なぜか一緒についてきている。

 自然と会話に入られたから、一瞬違和感もなかった。


「なんでいるんですか? レナさんは?」

「いや~ 実は彼女急にいなくなっちゃったんだよ」

「「え!?」」


 俺とアレクシアの声が重なった。

 ユーレアスさんはヘラヘラ笑いながら言う。


「途中まで一緒だったんだけど、眼を離したらもういなかったんだよ」

「い、いなかったって……探したんですか?」

「うん。その途中で君たちを見つけたんだ。僕はあんまり人探しは向いていないんだよ。まぁ彼女なら一人でも大丈夫だと思うけどね」

「そういう問題じゃ……」


 この人は本当にマイペースというか。

 いなくなったレナさんもだけど、強い人って危機感も薄いのかな。

 

「俺が上から探してみます。二人はそのまま探索を続けてください」

「了解した!」

「エイト君気を付けてね」

「ああ」


 ブーツに付与した空中歩法を発動させ、空気を蹴り飛び上がる。


「おぉ~ 付与って便利だね~ 僕も今度何か付与してもらおうかな?」

「それならボクが先だよ!」

「むむ! 先に言ったのは僕だからね?」


 ギリギリ聞こえてきたが、何を言い合ってるんだが……

 さて、どこにいるかな?


「『視力強化』」


 文字通り目を凝らして探してみる。

 視力強化は遠くまで見えて便利だけど、あとで目が痛くなるんだよね。


「う~ん……いない。あ、いた!」


 運よくすぐに見つけられた。

 レナさんは二階部分が倒壊した一軒の家の前に立っている。


「レナさん!」

「ん? あらエイト、どうしたの?」

「どうしたのじゃないですよ。何で勝手にいなくったんですか?」


 俺は彼女の隣に降り立ち尋ねた。

 すると彼女は徐に、壊れた家を見つめる。


「あの、もしかしてレナさん、この街に住んでたとか?」

「よくわかったわね」


 やっぱりそうなのか。


「この家に住んでた?」

「そうよ。お兄ちゃんと二人で……」


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