【アスタルの顛末】女の恨みは恐ろしい
悪魔は死ぬと、必ず地獄に落ちる。
地獄とは悪しき魂が還る場所であり、新たに誕生する生地でもあった。
つまり悪魔の魂は地獄で生まれ、現実世界に肉体を得る。
そして、他者を騙し、欺き、悲しませた罪深き魂もまた、地獄行きと決まっていた。
例え操られていようとも、一時の気の迷いであっても、罪を犯せば行先は決まる。
「はぁ~ まさか本当に負けるとは……」
今日も一人、地獄へ落ちてきた魂がある。
魔王軍幹部の一人にして、女性を手玉に取る最低のインキュバス。
これまで数々の女性を操り、好き放題してきた女たらし。
その最後は、女と侮った勇者の一撃によって、真っ二つに斬られたわけだが……
「だがまぁ、女に斬られて終わるのも悪くはないな」
あまり懲りていない様子。
「アスタル様ー!」
「ん? 君たちは……」
アスタルの近くには、可愛らしい女性たちが集まっていた。
見覚えはある気がするけど、たくさんいた中の一人なんて思い出せない。
それでもおそらく、自分が魅了した誰かなのだろうと察した。
魅了した女たちには、数々の非道なことをさせたり、したりした。
地獄行きになった者も多くいるだろうと。
「どうしたんだい? 君もしかして、俺が恋しくて待っていたのかな?」
「もちろんですよ!」
「私たち一度もアスタル様のことを忘れたことなんてありません!」
「ずっと会いたかったです」
「そうかそうか。可愛い子たちだね」
まったく罪な男だと、自分で思うアスタル。
地獄地に落ちてもモテモテで、困り果ててしまいそうだと。
「本当に会いたかったです」
「ようやく落ちて来てくれましたね……この地獄に」
「へ?」
アスタルの大事な物が、もぎ取られた音がした。
「ぎ、ぎやああああああああああああああああああああああ」
「これは必要ありませんものね?」
ぐしゃりと潰すところをアスタルは見てしまう。
ニヤリと笑う女性と、その周りの女性たちもニヤニヤ笑っていることに気付く。
「き、君たち……」
「ええ、待っていましたよこの時を。あなたに復讐できるチャンスを」
「ふ、復讐だって?」
「そうです」
「私たちはずっとここで待っていました。誰かがあなたを倒してくれるこの瞬間をね?」
いつの間にか女性陣の手には、ナイフが握られていた。
「ま、待ってくれ!」
「もう十分に待ちましたよ。ここにいる私たちは皆、あなたに魅了されていたんです。でも覚えてないですよね? さっきも誰だろうって顔してましたし」
「駄目な人ね。私たちはひと時も忘れなかったわ」
「お陰でいま、とっても嬉しいです」
「ぅ、うぅ……うあああああああああああああああああああああああああ」
地獄に響き渡る断末魔。
グサリグサリと突き刺さるナイフの音。
文字通り魂にしみる痛みを、彼は永遠に受け続ける。
もっと良く知るべきだった。
女の恨みというものは、死して尚、膨れ上がる。
軽々しく騙し、使い捨てた男の末路は、悲劇的と決まっているのだ。
こういう奴は地獄でえらい目にあってくれるとスッキリしますよね。
おまけみたいな回ですが、気に入ってもらえたら嬉しいです。
次回いよいよ第二章!
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