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【WEB版】この宮廷付与術師、規格外につき〜人類唯一のスキル「言霊使い」で、俺は世界に命令する〜【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第一章

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26.お姉ちゃんも一緒に

 村の人たちが集まり、楽しくワイワイ飲み明かす。

 悪魔領はもう目の前だ。


「こんなのんびり良いのかな」


 そう思ってしまうのが本音で、口からぽつりと漏れていた。


「良いんじゃないの?」

「レナさん」


 聞こえていたのか、近くに座っていたレナさんがそう言った。


「どうせ嫌でも辛い旅になるわ。こういう時くらい、素直に休んでおきなさい」

「……ですかね」

「ええ。まぁ能天気すぎるのもどうかと思うし、私も同じこと思うけど。そこはアレクシアを見習うべきかしら」


「お姉ちゃんこれ見て!」

「何々? わぁー綺麗だね!」


 アレクシアは小さな子供たちと遊んであげている。

 子供はお酒も飲まないし、大人たちと宴会に混ざるより、遊ぶ方が楽しいだろう。

 一緒になって遊んでいるアレクシアも何だか楽しそうだ。


 平和だ、とても。

 危険に近い場所で、こうも平和なものなのかと疑問には感じる。

 だけど、目の前にいる子供たちや、宴会で楽しそうにお酒を飲む大人たち。

 彼らから怪しい雰囲気は感じないし、敵意や悪意も感じない。

 ただただ普通に、楽しく過ごしているだけ。

 そう見えても不安は消えなかった。

 まだ慣れていないからなのだと、自分では思うようにしている。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 アレクシアは女の子たちと遊んでいる。

 小さい子は五歳くらいで、一番大きい子は十二歳くらいだろうか。


「ねぇお姉ちゃん」

「ん? どうしたの?」


 そのうちの一人。

 一番お姉さんだと思われる女の子が、アレクシアの裾を引っ張っていた。


「あのね? お姉ちゃんに見せたいものがあるの」

「見せたいもの?」

「うん! みんなにも内緒なの。とーっても素敵なものだから、お姉ちゃんに教えてあげる」

「本当? 嬉しいなぁ」


 女の子は無邪気に笑い、アレクシアと手をつなぐ。

 こっちだよと案内されて、遊んでいた場所から去っていく二人。

 向かった先は森の中だった。

 

「森の中にあるの?」

「うん! もう少し行くとね? 大きな木が一本だけ生えてるの! そこに()()んだ」


 いるという表現の違和感に、アレクシアは気づかない。

 無邪気に手を引く女の子からは、自分を喜ばせようという暖かな気持ちが感じ取れた。

 それに彼女は勇者だ。

 この世で最も強い人間の女の子。

 だから、多少の疑問は感じても、何かがあったとしても、何とかなると考えていた。


 甘さだ。


「ここだよ」

「ホントだ。大きな木だね」

「そうでしょ! でもね? 見せたいのは木じゃないんだ」


 そう言って、女の子はアレクシアの手を離し、木のほうへと駆けていく。

 木の手前で止まり、くるりと彼女のほうを向き、ニッコリと微笑む。


「あのねあのね? きっとお姉ちゃんも気に入ってくれると思うの。とーっても気持ち良いことたーくさん教えてくもらえるから」

「気持ち良いこと?」

「ね? ()()()()


 女の子が呼びかける。

 大きな木の後ろから現れる黒い人影が、女の子の隣へ立つ。


「ああ、もちろんだよ。この世の全ての女は、俺のだいじなおもちゃだからね」

「お前は……」


 彼が人ではないと理解するのに、一秒もかからなかった。

 見た目は人間に近いが、頭から角が二つ。

 背中からはコウモリに似た羽が生えている。


「初めまして、かな? 俺は魔王軍幹部の一人、アスタルだ。よろしくね」

「幹部!? なんでこんなところに!」

「おいおい、ここは俺たちの領域の傍だぜ? むしろいるほうが自然じゃないか?」

「……そいつは悪魔だよ! 危ないから離れて!」

「えぇ~ どうして? ご主人様は素敵な人だよ」


 女の子はアスタルの身体にべったり引っ付き甘えている。

 アスタルも彼女の頭を撫でていた。

 アレクシアはアスタルに問う。


「お前……その子に何をしたの?」

「変な言い方をするね。彼女は俺に全てを魅了されているだけだよ」

「ふざけたこと言わないで」

「鈍いな~ 魅了と言ったろう?」


 アスタルの瞳はピンク色に光る。

 それを見て、アレクシアは理解した。


「インキュバス?」

「そう、正解だ。俺はインキュバスだよ。女を魅了するのは俺の得意技だ」

「……まさか村の人たちも」

「ああ、女性は全員俺の虜だよ。男どもは勝手に騙されているだけなんだけどね?」

「……」


 アレクシアは悩む。

 仲間にそのことを知らせたいが、女の子をそのままにもしておけない。

 ここで戦うべきか、剣を抜くことも躊躇している。


「先に言っておくけど、助けを呼ぶことは不可能だよ? ほら、上をみてごらん? 空が桃色に見えないかい?」


 アスタルの言う通り、夜空が桃色に変化している。


「結界?」

「それも正解。これは特別製でね? 俺を倒さないと絶対に破壊できないんだ」

「……そう。だったらやることは決まったよ」


 まずは女の子を助ける。

 そこから一気に片を付けようと考えるアレクシア。


「戦う気かい? じゃあ、君は少し下がってなさい」

「はい、ご主人様」

「良い子だ。あとでご褒美をあげよう」

「やったー!」


 女の子がアスタルから離れていく。

 なぜ人質にしないのか疑問を感じるアレクシアだったが、離れてくれたなら好都合。

 躊躇していた聖剣に手をかける。


「ねぇ勇者ちゃん、なぜ人質にしないか疑問に感じなかったかい?」

「……」

「必要ないからだよ。もうとっくに決着はついているからね」


 表情と口ぶりから余裕が感じられる。

 油断している今なら、一撃で決められるかもしれない。

 彼女は思いっきり、素早く剣を抜こうと身体を動かした。

 その瞬間――


「んぅ――」


 全身にしびれるような衝撃が走った。

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