表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/107

2.新天地を探します

 パーティーを追い出された俺はひとしきり落ち込んで、一週間が過ぎた。

 その間、特に何をするわけでもなく、ただダラダラと一日を過ごしていた。

 このままではいけない。

 俺は荷物をまとめてから宿屋を出た。

 向かったのは雑貨屋だ。


 色々と考えた結果、俺はここ王都を出ることにした。

 行先は特に決まっていないけど、とにかく王都を離れたかった。

 理由は簡単だ。

 王都は俺を追い出したパーティー【ルミナスエイジ】の活動拠点だから、ここにいれば嫌でも彼らと顔を合わせることになる。

 きっと惨めな思いをするだろう。

 だから、どこへでも良いから旅立つことにした。


「いらっしゃい! 何をお探しですか?」

「大きめの布ってありますか? このくらいの」


 店に入った俺は、店員にわかりやすくジェスチャーで伝えた。

 俺がほしいのは、大人が寝そべっても余裕が出るくらい大きな布だ。


絨毯(じゅうたん)でも良ければありますよ」

「それでお願いします」


 説明を理解してくれた店員が、店の奥から絨毯を持ってきてくれた。

 クルクルにまかれた絨毯を置いて、店員は俺に尋ねる。


「あなた冒険者ですよね? 絨毯なんて何に使うんです?」

「馬車は高いですからね」

「馬車?」


 キョトンとした表情を見せる店員。

 俺は彼に、見ていればわかりますよと言い、店の外へ出た。


「『飛翔』、『思念駆動』」


 俺は巻いてある絨毯に二つの効果を付与した。

 一つは空を飛ぶための『飛翔』、そしてもう一つの『思念駆動』は、念じるだけで物を動かしたりできる。

 二つを合わせれば――


「よいしょっと」


 こうして絨毯に乗ったまま、空を自由に飛び回れる。

 

「なっ……ぬ、布が浮いてる?」

「これで移動が楽になりました。ありがとうございます」

「い、いやいや! あんた何者なんだ?」

「ただの冒険者ですよ。それじゃ」


 俺はお辞儀をして、彼の元から飛び立つ。

 空飛ぶ絨毯に乗って、俺は王都の街並みを見下ろす。

 田舎の村から冒険者を目指して王都へやってきのが二年前。


「二年も経ってたのか……」


 お世話になった街だ。

 出来ればこんな形で去りたくはなかったけど、二度と戻ってくることもないだろう。

 少なくとも彼らがいるうちは、戻りたくても気が引ける。


「さようなら」


 俺は一言だけ口にして、王都を出発した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「さて、どこへ行こうかな」


 空飛ぶ絨毯の上、俺は世界地図を広げる。

 王都を出発して一時間弱。

 俺は今、王都の南方にある広大な森の上を飛んでいる。


 ほとんど勢いで飛び出したからな。

 行先もまだ決まっていない。

 どこか行きたい場所があるのかと問われれば……


「特にないんだよな」


 行く当てもない。

 生まれ育った小さな村に帰っても、今さら俺の居場所なんてないだろうし、そもそも冒険者の依頼すらこない。

 今後も冒険者を続けるなら、王都と同じくらい大きな街を拠点にすべきだろう。

 ならばいっそ、このクラレス王国を出て、別の国に行くというのも悪くない。


「このまま南へ進むか」


 一先ず進路だけ決め、ひたすら南へ向かうことに。

 そして三時間後。

 すっかり日も暮れ、月明かりが綺麗な夜になった。


「ぅ……さすがに夜は寒いな」


 空の旅を堪能していた俺だったけど、夜になると一気に気温が下がる。

 特に上空は地上よりも寒い。

 身体を震わせながら、降りられる地点を探そうと下を覗き込んだ。

 そこで――


 チカッ、ドカーン!


 一瞬の光の後に爆発音が聞こえた。


「今のは魔法か?」


 自然現象ではなさそうだ。

 高度を下げて目を凝らすと、誰かが戦っているのが見える。


 あれは……王国の騎士?

 街道に馬車が一台停まっている。

 暗くてハッキリとは見えないけど、装飾もされていて相当豪華な馬車だ。

 きっと位の高い貴族が乗っているに違いない。


「襲われてるのか? 相手は……アンデッド?」


 さらに高度を下げ、今度はハッキリと見えた。

 大量のゾンビが馬車を取り囲んでいる。

 騎士たちが奮闘しているが、ゾンビに斬撃は通じない。

 どうやら魔法使いも不在で、炎で焼き払うことも出来ないようだ。

 ジリジリと間合いを詰められている。


「このままじゃ……」


 俺は咄嗟にカバンの中身を漁る。

 支援に役立つからと携帯していた変形弓と矢。

 弓には『連射』と『射程距離増加』が付与されている。


「『不死殺し』、『自動追尾』」


 矢のほうには対アンデッド用の付与を施した。

 この矢を連射で降らせれば、ゾンビの群れを一掃できる。


「間に合ってくれ」


 俺は空飛ぶ絨毯から、弓を構える。


「我々が盾になる! 姫様だけでも逃がすんだ!」

「いけません皆さん! 命を捨てるようなことは――」

「いくぞ!」


 騎士たちが意を決して突破を試みる。

 そこへ降り注ぐ無数の矢。


「な、何だ?」

「空から?」


 誰もが夜空を見上げる。

 星空の中に一人の影を見つけて、全員が唖然とする。


「大丈夫ですか?」

「い、今のは……」


 俺が空から降り立つと、馬車から水色髪をした綺麗な女性が降りてきた。

 慌てた様子で俺の元に駆け寄り、質問をしてくる。


「今のは一体なんですか? どうやってアンデッドを倒したのですか?」

「え?」


 突然のことに困惑して、すぐには答えられなかった。

 ただ、彼女の瞳から切羽詰まる思いを感じ取り、俺は答える。


「えっと、俺は付与術師なんです。『不死殺し』を付与した矢を使ったので、アンデッドも倒せます」

「付与術師……そ、その力があればリッチーも浄化できますか?」

「リッチー? ええ、出来ますけど」

「……」


 俺がそう答えると、彼女は考え込むように口を閉ざす。

 しばらく沈黙が続いた。


「あの……お名前を教えて頂けませんか?」

「エイトです」

「エイト様、助けて頂き感謝いたします。私はクラレス王国第一王女、フェリア・クラインベルトと申します」

「だ、第一王女?」


 お姫様だったのか。

 

「エイト様、助けられた身でありながら無礼を承知でお願いがございます」

「え、お、お願いですか?」

「はい。どうか……そのお力を、お貸し頂けないでしょうか?」

ブクマ、評価はモチベーション維持につながります。

【面白い】、【続きが読みたい】という方は、ぜひぜひ評価☆☆☆☆☆⇒★★★★★をしてくれると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作投稿しました! URLをクリックすると見られます!

『残虐非道な女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女の呪いで少女にされて姉に国を乗っ取られた惨めな私、復讐とか面倒なのでこれを機会にセカンドライフを謳歌する~』

https://ncode.syosetu.com/n2188iz/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻1/10発売!!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

【㊗】大物YouTuber二名とコラボした新作ラブコメ12/1発売!

詳細は画像をクリック!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
― 新着の感想 ―
[一言] 1週間も落ち込むってことは、演技じゃなくて、 本当に追放されたパーティに残りたいと思ってたんだな 自分の能力の高さを理解してるのに、 他の、もっとまともな冒険者に自分を売り込まないのは不自然…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ